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ほのかなるもの ゆめはうつつにあらざりき、うつつはゆめよりなほいとし、まぼろしよりも甲斐なきはなし。 幽かなるこそすべなけれ、美しきものみなもろし、尊きものはさらにも云はず。 ひとのいのちはいとせめて、日の光こそすべなけれ、麗かなるこそなほ果敢な。星、月、そよかぜ、うす雲のゆくにまかする空なれども。 ふりそそぐものみなあはれなり、雨、雪、霰、雹に霙、それさへたちまち消え失せぬ。 土に置く霜、露のたま、靄、霧、霞、宵の稲づま、ほのかなれども水陽炎のそれさへ頼むに足るものなし。 煙こそあはれなれども、捉へられねばよしもなし。山家にゆけど、野にゆけども、水のながれを堰くすべもなや。 ちちろと歎く蓑虫も、蛍の尻もみな幽けし。な...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋全集 第三巻 詩集第三」アルス    1930(昭和5)年7月19日 初出:「ARS 1巻2号」    1915(大正4)年5月1日 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2016年12月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055747", "作品名": "第二真珠抄", "作品名読み": "だいにしんじゅしょう", "ソート用読み": "たいにしんしゆしよう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「ARS\u30001巻2号」1915(大正4)年5月1日", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-01-25T00:00:00", "最終更新日": "2016-12-09T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/00010...
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序  我が長歌の総てを収めて、此の『篁』を成す。主として小田原の山荘にありて、竹林の日夕を楽しみ、移りゆく季節の風と光とに思を寄せたる、そのをりをりの古体を蒐めたり。  かの山荘はまことに篁の中にありて、その蕭々の音は、常に颯々たる松籟に唱和し、簡朴にしてそぞろに幽致にも満ちたりしかど、震災後、大破して繕ふに由なく、ただ辛うじて住むを得たりき。  我が長歌も亦かくのごとし。長歌とは言へども、あながち万葉の古体にもあらず、貧しき詩魂は時に新様の我趣を求めて、自ら姿容を破る。もとより流通するところの所縁ただに和歌の一体に繋ることをのみ幸とすべきか。また言ふところ無し。 昭和四年 暮春 白秋 竹と我 序歌 眺めても眺めあきずよ ...
底本:「白秋全集 8」岩波書店    1985(昭和60)年7月5日発行 底本の親本:「長歌集 篁」梓書房    1929(昭和4)年5月20日 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※「水仙と菊」(「浅春」を除く)、「水郷冬景」、「函嶺の冬」、「孟宗と月」(「孟宗と月」の「反歌」を除く)、「秋山の歌」(「水之尾の秋」を除く)、「岡の鉾杉」(「榧と栗」の「反歌」を除く)、「米の白玉」(「米の白玉」の「反歌」を除く)、「童と母」(「麻布山」の「反歌」及び「童と母」の「反歌」を除く)は底本では「観相の秋」との重複のため省略されています。 ※大見出し「水仙と菊」「孟宗と月」「秋山の...
{"作品ID": "053482", "作品名": "篁", "作品名読み": "たかむら", "ソート用読み": "たかむら", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2018-01-25T00:00:00", "最終更新日": "2017-12-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card53482.html", "人物ID": "000106", "姓": "北原...
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          *  あの第一回の烈震以来、その後千数百回の余震に、人人はどれだけ脅かされたか。  その初め、未だ曾て識らぬ稀有の地震に私たちは為すところをさへ知らなかつた。つくづくと思ふことは一大事処に際する、かねての精神の鍛練如何といふことである。  静観と沈勇、かうした心状に於て私たちは初めてまことの詩の道に立つことが出来るのである。  ああ、私の庭のあかい葉鶏頭は葉鶏頭としての営みを、その裂けた土の上にも忘れては居らない。崩れた山の畑にも胡麻は胡麻としての智慧を完全にめぐらしてゐる。  千載一遇のこの尊い体験を私たちは心から感謝してよい。凡ては鮮やかに生れて来る。           *  よく観、よく察して来る日...
底本:「白秋全集 18」岩波書店    1985(昭和60)年12月5日 底本の親本:「『白秋全集』第一三巻」アルス    1930(昭和5)年6月20日初版発行 入力:岡村和彦 校正:川山隆 2011年12月4日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "054253", "作品名": "竹林生活", "作品名読み": "ちくりんせいかつ", "ソート用読み": "ちくりんせいかつ", "副題": "――震災手記断片――", "副題読み": "しんさいしゅきだんぺん", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 916", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2012-01-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card54253.h...
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微風ハ純金ノ足ノウラヨリ コソバユクモ笑フカナ。 微風ハキタル、足ノ指ノ ソノ間ヲ洩レテ君ガ眠リニ。
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋全集 第三巻」アルス    1930(昭和5)年7月19日 ※本編は底本の親本の「白金ノ独楽」の「白金礼讃」の章に入っているものです。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年6月25日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055768", "作品名": "疲レ", "作品名読み": "つかレ", "ソート用読み": "つかれ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-08-26T00:00:00", "最終更新日": "2017-07-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card55768.html", "人物ID": "000106", "姓": "北原"...
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 萩原君。  何と云つても私は君を愛する。さうして室生君を。それは何と云つても素直な優しい愛だ。いつまでもそれは永続するもので、いつでも同じ温かさを保つてゆかれる愛だ。此の三人の生命を通じ、縦しそこにそれぞれ天稟の相違はあつても、何と云つてもおのづからひとつ流の交感がある。私は君達を思ふ時、いつでも同じ泉の底から更に新らしく湧き出してくる水の清しさを感ずる。限りなき親しさと驚きの眼を以て私は君達のよろこびとかなしみとを理会する。さうして以心伝心に同じ哀憐の情が三人の上に益々深められてゆくのを感ずる。それは互の胸の奥底に直接に互の手を触れ得るたつた一つの尊いものである。  私は君をよく知つてゐる。さうして室生君を。さうして君達の詩と...
底本:「現代詩文庫 1009 萩原朔太郎」思潮社    1975(昭和50)年10月10日発行 初出:「讀賣新聞」    1917(大正6)年1月14日号 ※初出時の表題は「詩集『月に吠える』――その作者萩原朔太郎君におくる」です。 入力:きりんの手紙 校正:岡村和彦 2019年4月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "059473", "作品名": "月に吠える", "作品名読み": "つきにほえる", "ソート用読み": "つきにほえる", "副題": "01 序", "副題読み": "01 じょ", "原題": "", "初出": "「讀賣新聞」1917(大正6)年1月14日", "分類番号": "NDC 911 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-05-11T00:00:00", "最終更新日": "2019-04-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/c...
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松の葉の青きに しとしとと雨はふる。 凄まじき暴風雨の後に 針のごと雨はふる。 色黄なる毛虫は 土に沁みつき、 月見草は 萎れて白し。 桐、樅、無花果、 人工の盆栽の梅、 犯されし小娘か、みな、 泣き伏して声もなし。 しとしとと雨はふる。 浜の砂庭に吹き散り、 陸橋の下には 傷つきし犬瞳を凝らす。 あまりにも静かなり、ただ、 腹切りし苦しさに 肩衣をはねのけし瀬尾、 その青き松の震慄。 かくて、わが終日、 針のごと雨はふる。 海見ゆる涼台の破風に 光り、かつ、をぐらく。 雨はふる、しとしとと、 雨はやむ、またしばし、 夕されば血の如き虹 遂にまた海と空とに。
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋全集 第二巻 詩集第二」アルス    1929(昭和4)年12月10日 ※本作品は底本の親本の「雪と花火」の「青い髯」に収められています。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2016年9月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055757", "作品名": "庭園の雨", "作品名読み": "ていえんのあめ", "ソート用読み": "ていえんのあめ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2016-11-13T00:00:00", "最終更新日": "2016-09-09T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card55757.html", "人物ID": "000106",...
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わかき日の饗宴を忍びてこの怪しき紺と青との 詩集を“PAN”とわが「屋上庭園」の友にささぐ 東京夜曲   公園の薄暮 ほの青き銀色の空気に、 そことなく噴水の水はしたたり、 薄明ややしばしさまかえぬほど、 ふくらなる羽毛頸巻のいろなやましく女ゆきかふ。 つつましき枯草の湿るにほひよ…… 円形に、あるは楕円に、 劃られし園の配置の黄にほめき、靄に三つ四つ 色淡き紫の弧燈したしげに光うるほふ。 春はなほ見えねども、園のこころに いと甘き沈丁の苦き莟の 刺すがごと沁みきたり、瓦斯の薄黄は 身を投げし霊のゆめのごと水のほとりに。 暮れかぬる電車のきしり…… 凋れたる調和にぞ修道女の一人消えさり、 裁判はてし控訴院に留守...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 ※底本では一行が長くて二行にわたっているところは、二行目以降が1字下げになっています。 入力:飛鷹美緒 校正:小林繁雄 2009年4月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049617", "作品名": "東京景物詩及其他", "作品名読み": "とうきょうけいぶつしそのた", "ソート用読み": "とうきようけいふつしそのた", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-05-17T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card49617.html", "...
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はしがき 山火事焼けるな、ホウホケキヨ、 可愛いい小鹿が焼け死ぬぞ。  これは春の暮、夏のはじめの頃に、夕方かけて、赤い山火事の火の燃える箱根あたりの山を眺めて、この小田原の町の子供たちが昔歌つた童謡の一つだと申します。  昔の子供たちはかういふ風におのづと自然そのものから教はつて、うれしいにつけ悲しいにつけ、いかにも子供は子供らしく手拍子をたたいて歌つたものでした。  それが、この頃の子供たちになると、小さい時から、あまりに教訓的な、そして不自然極る大人の心で咏まれた学校唱歌や、郷土的のにほひの薄い西洋風の飜訳歌調やに圧えつけられて、本然の日本の子供としての自分たちの謡を自分たちの心からあどけなく歌ひあげるといふ事がいよい...
底本:「白秋全集 25」岩波書店    1987(昭和62)年1月8日発行 底本の親本:「とんぼの眼玉」アルス    1919(大正8)年10月15日 初出:蜻蛉の眼玉「赤い鳥 3巻3号」    1919(大正8)年9月1日    夕焼とんぼ「赤い鳥 1巻5号」    1918(大正7)年11月1日    八百屋さん「赤い鳥 3巻3号」    1919(大正8)年9月1日    お祭「赤い鳥 1巻4号」    1918(大正7)年10月1日    のろまのお医者「赤い鳥 3巻2号」    1919(大正8)年8月1日    ほうほう蛍「赤い鳥 2巻6号」    1919(大正8)年6月1日    鳰の浮巣「赤い鳥 2巻6号」    ...
{"作品ID": "055787", "作品名": "とんぼの眼玉", "作品名読み": "とんぼのめだま", "ソート用読み": "とんほのめたま", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "蜻蛉の眼玉「赤い鳥\u30003巻3号」1919(大正8)年9月1日<br>夕焼とんぼ「赤い鳥\u30001巻5号」1918(大正7)年11月1日<br>八百屋さん「赤い鳥\u30003巻3号」1919(大正8)年9月1日<br>お祭「赤い鳥\u30001巻4号」1918(大正7)年10月1日<br>のろまのお医者「赤い鳥\u30003巻2号」1919(大正8)年8月1日<br>ほうほう蛍「赤い鳥\u30...
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     1 幽かに香ひはのぼる。蕾のさきが尖つてゐるのは内からのぼる香ひをその頂点でくひとめてゐるのだ。花がひらいた時は香ひもひらいてしまふ。残りの香のみの花を人は観てゐる。      2 開いた朝顔が萎へると蕾のやうになる。それもちぢれて蕾の巻いた尖りは喪はれ、香ひのみか色までが揉みくちやだ。その上に落ち散つた象を紙巻煙草の吸殻のやうだといへば乾く。火鉢の灰の中に散らばる紙巻煙草の吸殻を朝顔の散り花のやうだといへば香ひがつく。ものは言ひやう、喩は感じ方なのだ。      3 風が香ひをつたへるのでない。香ひが風をすずろかせるのだ。      4 風上に置けぬ臭ひなら、風下にも置いてよい筈はない。風はともあれ、臭ひは...
底本:「日本の名随筆48 香」作品社    1986(昭和61)年10月25日第1刷発行    1991(平成3)年9月1日第9刷発行 底本の親本:「香ひの狩猟者」河出書房    1942(昭和17)年9月 入力:渡邉 つよし 校正:門田 裕志 2001年10月9日公開 2005年6月27日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "003620", "作品名": "香ひの狩猟者", "作品名読み": "においのしゅりょうしゃ", "ソート用読み": "においのしゆりようしや", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-10-09T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card3620.html", "人物ID": ...
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    1  舟は遡る。この高瀬舟の船尾には赤の枠に黒で彩雲閣と奔放に染め出したフラフが翻つてゐる。前に棹さすのが一人、後に櫓を榜ぐのが一人、客は私と案内役の名鉄のM君である。私は今日初めて明るい紫紺に金釦の上衣を引つかけてみた。藍鼠の大柄のスボンの、このゴルフの服は些か華美過ぎて市中は歩かれなかつた。だが、この鮮麗な大河の風色と熾烈な日光の中では決して不調和ではない。私は南国の大きい水禽のやうに碧流を遡るのだ。  爽快である。それに泡だつコップのビール、枝豆の緑、はためく白いテントの反射光だ。  五日の午後一時、昨日すさまじい濁流はいくらか青みを冴え立たして来たが、一旦激増した水量はなかなかひきさうに見えない。だが、裸の子供が飛...
底本:「現代日本紀行文学全集 中部日本編」ほるぷ出版    1976(昭和51)年8月1日初版発行 初出:「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」    1927(昭和2)年7月 ※初出紙に「木曽川」と題して連載したものの一部である旨が、底本の巻末に記載されている。 ※底本の「馬+央」(九箇所)は、「駛」に置き換えました。 ※疑問箇所の確認にあたっては、「白秋全集 22」岩波書店、1986(昭和61)年7月7日発行を参照しました。 入力:林 幸雄 校正:浅原庸子 2004年5月11日作成 2007年9月6日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作ら...
{"作品ID": "004639", "作品名": "日本ライン", "作品名読み": "にほんライン", "ソート用読み": "にほんらいん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914 915", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-05-23T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card4639.html", "人物ID": "000106...
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 詩は芸術の精華である。この詩の道を行ふ外に、私は生れて何一つ与へられてゐなかつた。これが為めに、私はただ一すぢに詩に仕へて来た。詩に生き、詩に痩せ、詩に苦しみ通して来た。人間としてのかうがうしい歓びも、人間の果知れぬ寂しさも、私はたゞ詩に依つてのみ現す事が、ただ私の取るべき道であつた。  私は歌つた。歌はねばならなくなつて、私はただ歌つた。かうして私の詩が流れ出して来た。こんこんとして大地の底から湧き上り溢れ出づるものの如く、これらは皆私の心肉から真実に溢れて言葉となつたものであつた。とりもなほさず私のものであつた。  私は何も彼も貧しい。忝いこの大自然界の荘厳相の微塵でもこの凡下の私が知り得よう筈もなかつた。今にしても何一つ私の...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋詩集 第一巻」アルス    1920(大正9)年9月3日刊行 初出:「白秋詩集 第一巻」アルス    1920(大正9)年9月3日刊行 ※底本における表題「序」に、底本の親本名を補い、作品名を「「白秋詩集」序」としました。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年3月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055610", "作品名": "「白秋詩集」序", "作品名読み": "はくしゅうししゅうじょ", "ソート用読み": "はくしゆうししゆうしょ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「白秋詩集\u3000第一巻」アルス、1920(大正9)年9月3日", "分類番号": "NDC 911 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-04-17T00:00:00", "最終更新日": "2017-03-11T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp...
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一、本巻には東京景物詩「雪と花火」以後の所作を輯める事にした。而して新らしい作から前に組むだ。既に公刊した集はなるべく原形の儘にした。なほ多少削除した分もある。 一、「青燈集」の諸作は主として大正五年より八年に至る、葛飾、動阪、小田原時代のものである。尤も「童と母」「麻布山」の二篇はその以前の作である。此集は可なり詩風の違つたものが混淆してゐる。が、作品が少いので一括して仮りにここに収めた。 一、童謡集の「赤い鳥小鳥」は大正六年より八年に至る、主として雑誌「赤い鳥」の発刊を機縁として作り初めた童謡の第一期の収穫で、これらは曾て公刊した「とんぼの眼玉」にその後の新作を附け加へて、その順序を一層整理したものである。 一、「大悲集」は大正...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋詩集 第一巻」アルス    1920(大正9)年9月3日刊行 初出:「白秋詩集 第一巻」アルス    1920(大正9)年9月3日刊行 ※底本における表題「第一巻解題」に、底本の親本名を補い、作品名を「「白秋詩集」第一巻解題」としました。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年3月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055611", "作品名": "「白秋詩集」第一巻解題", "作品名読み": "はくしゅうししゅうだいいっかんかいだい", "ソート用読み": "はくしゆうししゆうたいいつかんかいたい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「白秋詩集\u3000第一巻」アルス、1920(大正9)年9月3日", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-05-21T00:00:00", "最終更新日": "2017-03-11T00:00:00", "図書カードURL": "https://...
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一、本巻には処女詩集「邪宗門」、抒情小曲集「思ひ出」、及び少年期の長篇数種を収めた「朱泥の馬」、それに補遺の数篇とを輯める事にした。本巻に於ても亦公刊した集はなるべく原形の儘にした。 一、「邪宗門」は明治四十二年三月の初版である。同三十九年の四月から四十一年の臘月に至る約三年間の所作を収めたもので、私の初期の象徴詩その他を代表した集であつた。本集は危うく絶版の悲運に際会しようとしたが四十四年の十一月に書肆を換えて再版し、なほ大正五年の六月に更に増補訂正して三版した、その後引続いて版を重ねてゐる。この中、ことに初版「邪宗門」はその装幀に於て当時の贅を尽してゐた。何処を探してももう滅多に無い。 一、「思ひ出」は明治の四十四年六月に初版を...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋詩集 第二巻」アルス    1921(大正10)年1月1日刊行 初出:「白秋詩集 第二巻」アルス    1921(大正10)年1月1日刊行 ※底本における表題「第二巻解題」に、底本の親本名を補い、作品名を「「白秋詩集」第二巻解題」としました。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年3月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055620", "作品名": "「白秋詩集」第二巻解題", "作品名読み": "はくしゅうししゅう\u3000だいにかんかいだい", "ソート用読み": "はくしゆうししゆうたいにかんかいたい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「白秋詩集\u3000第二巻」アルス、1921(大正10)年1月1日", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-05-21T00:00:00", "最終更新日": "2017-03-11T00:00:00", "図書カードURL": "htt...
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「ほら、あれがお城だよ。」  私は振り返つた。私の後ろからは円い麦稈帽に金と黒とのリボンをひらひらさして、白茶の背広は濃い花色のネクタイを結んだ、やつと五歳と四ヶ月の幼年紳士がとても潔よく口をへの字に引き緊めて、しかもゆたりゆたりと歩いてゐた。地蔵眉の眼が大きく、汗がぢりぢりとその両の頬に輝いてゐる。  名鉄の電車を乗り捨てて、差しかかつた白い白い大鉄橋――犬山橋――の鮮かな近代風景の裡のことである。  暑い暑い。パナマ帽に黒の上衣は脱いで、擁へて、ワイシャツの、片手には鶏の首のついたマホガニーの農民美術のステッキをついてゆく、その子の父の私であつた。 「うん、さうか。」  父と子とはその鉄橋の中ほどで立ち停まると、下手向きの白い欄...
底本:「現代日本紀行文学全集 中部日本編」ほるぷ出版    1976(昭和51)年8月1日初版発行 初出:「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」    1927(昭和2)年7月 ※初出紙に「木曽川」と題して連載したものの一部である旨が、底本の巻末に記載されている。 ※疑問箇所の確認にあたっては、「白秋全集 22」岩波書店、1986(昭和61)年7月7日発行を参照しました。 入力:林 幸雄 校正:浅原庸子 ファイル作成: 2004年5月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです...
{"作品ID": "004631", "作品名": "白帝城", "作品名読み": "はくていじょう", "ソート用読み": "はくていしよう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」1927(昭和2)年7月(「木曽川」と題して連載されたものの一部。)", "分類番号": "NDC 914 915", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-05-23T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora....
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山景 崖の上の麦畠 真赤なお天道さんが上らつしやる。やつこらさと 鍬を下ろすと、ケンケンケンケン…… 鶺鴒めが鳴きくさる、 崖の上の麦畠、 天気は快し、草つ原に露がいつぱいだで、 そこいら中ギラギラしてたまんねえ。 九右衛門さん、麦は上作だんべえ、 蚕豆もはぢきれさうだ。 ええら、いい凪だな、沖ぢやまだ眠つてゐるだが、 俺ちの崖の下は真蒼だ、 ――そうれ、また、さらさら、ざぶん、ざぶん、んん…… 尖んがり岩に波がぶつかる、 怖かねえほど静かぢやねえかよ、 まるで、はあ、鮑の殻見たいにチラチラするだね。 南風が吹きあげる。 やれ、やれ、今日も朝つぱらからむんむんするだぞ。 何でも構うこたねえ、 胸をづんと張りきつてな、...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:飛鷹美緒 校正:岡村和彦 2012年11月24日作成 2014年4月18日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049618", "作品名": "畑の祭", "作品名読み": "はたけのまつり", "ソート用読み": "はたけのまつり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2012-12-23T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card49618.html", "人物ID": "000106", ...
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25. Ⅲ. 10. 午後三時過ぎ、  薄黄水仙の浅葱の新芽枯れたる芝生のなかに仕切られたる円形或は長方形の花壇のなかに二寸ばかり萌えいづ。その幾何学的なる配列のつつましさよ、風微かにかよふ。  水噴かぬ錆びたる噴水の露盤より静かに滴る水滴。  温室前の厚葉シユロランの高きそよぎ。キミガヨランの長きしだり葉に日は光り、南洋土人の頭飾の如くにうち動ぐ。  植物園事務室より出で来りし、若き紳士の紺の背広に赤皮の靴のやはらかなる、薄黄水仙のほとりをぞゆく。  異国の人来る。男は萌黄のソフトをかぶり、女は褪紅の外套を着け、その後より鮮紅の帽かむりし二人の男女の小児爽やかに走りゆく。転づるは French か、角ぐみそめし桜の二列の並木の間の...
底本:「花の名随筆3 三月の花」作品社    1999(平成11)年2月10日初版第1刷発行 底本の親本:「白秋全集 15」岩波書店    1985(昭和60)年2月 初出:「創作 一巻三号」    1910(明治43)年5月 ※初出時の表題は「春のSUGGESTION(植物園スケツチの一)」です。 入力:岡村和彦 校正:noriko saito 2011年1月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "052347", "作品名": "春の暗示", "作品名読み": "はるのあんじ", "ソート用読み": "はるのあんし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「創作\u3000一巻三号」1910(明治43)年5月", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2011-02-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card52347...
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日ハ光レリ、鏡ノ中ニ、 光ノミ照リカガヤケリ、 ソハアマリニ眩シ。 日ハ光レリ、鏡ノ中ニ、 冷ヤカニ照リカガヤケリ。 ソハアマリニ遠シ。 遠シ、遠シ、遠シ、遠シ……
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋全集 第三巻」アルス    1930(昭和5)年7月19日 ※本編は底本の親本の「白金ノ独楽」の「白金小景」の章に入っているものです。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年6月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055770", "作品名": "光ノミ", "作品名読み": "ひかりノミ", "ソート用読み": "ひかりのみ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-07-06T00:00:00", "最終更新日": "2017-06-25T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card55770.html", "人物ID": "000106", "姓":...
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夏の昼間の ひきがへる、 そなたは、なんで さびしいぞ。 白い女の 指さきで、 刺され、突かれて うれしいか。 夏の昼間の ひきがへる、 海鼠色した ひきがへる。 金の指輪に、 肢が切れて、 血でも出したら 何とする。 夏の昼間の ひきがへる、 海鼠色した ひきがへる。
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「白秋全集 第二巻 詩集第二」アルス    1929(昭和4)年12月10日 ※本作品は底本の親本の「雪と花火」の「槍持」に収められています。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2016年9月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055758", "作品名": "蟇", "作品名読み": "ひきがえる", "ソート用読み": "ひきかえる", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2016-11-13T00:00:00", "最終更新日": "2016-09-09T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card55758.html", "人物ID": "000106", "姓": "...
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震前震後 薄日の崖 白菊 目にたちて黄なる蕋までいくつ明る白菊の乱れ今朝まだ冷たき 黄の蕋のいとど目にたつ白菊は花みな小さし咲き乱れつつ さえざえと今朝咲き盛る白菊の葉かげの土は紫に見ゆ 独遊ぶ今朝のこころのつくづくと目を留めてゐる白菊の花に 菊の香よ故しわかねどうらうらに咲きの盛りは我を泣かしむ 咲くほどは垣内の小菊影さして日のあたり弱きしづもりにあり 独居はなにかくつろぐ午たけて酒こほしかもこの菊盛り この垣内見つつ狭けど白菊のにほふおもてのかぎりなく澄む 籬の菊 鎌倉小町園にて 日あたりの籬の白菊小町菊盛り過ぎつつなほししづけさ 白菊や香には匂へどうつつなしよにしづかなる日ざしあたれり 菊の影いく...
底本:「白秋全集 9」岩波書店    1986(昭和61)年2月5日発行 底本の親本:「風隠集」墨水書房    1944(昭和19)年3月20日 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※小見出しよりもさらに下位の見出しには、注記しませんでした。 ※「蕋」と「蕊」、「竝」と「並」、「※[#「窗/心」、第3水準1-89-54]」と「窓」、「蕚」と「萼」の混在は、底本通りです。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年12月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、...
{"作品ID": "053049", "作品名": "風隠集", "作品名読み": "ふういんしゅう", "ソート用読み": "ふういんしゆう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2018-01-25T00:00:00", "最終更新日": "2017-12-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card53049.html", "人物ID": "000106", ...
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フレップの実は赤く、トリップの実は黒い。いずれも樺太のツンドラ地帯に生ずる小灌木の名である。採りて酒を製する。所謂樺太葡萄酒である。 揺れ揺れ帆綱よ 心は安く、気はかろし、 揺れ揺れ、帆綱よ、空高く……  おそらく心からの微笑が私の満面を揺り耀かしていたことと思う。私は私の背後に太いロップや金具の緩く緩くきしめく音を絶えず感じながら、その船首に近い右舷の欄干にゆったりと両の腕をもたせかけている。  見ろ、組み合せた二つのスリッパまでが踊っている。金文字入りの黒い革緒のスリッパが。 心は安く、気はかろし、 揺れ揺れ、帆綱よ、空高く……  私の今度の航海は必ずしも物の哀れの歌枕でも世の寂栞を追い求むる風狂子の...
底本:「フレップ・トリップ」岩波文庫、岩波書店    2007(平成19)年11月16日初版第1刷発行 底本の親本:「白秋全集 19」岩波書店    1985(昭和60)年6月5日初版発行 初出:「女性」プラトン社    1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号 ※「蹂躙」と「蹂躪」の混在は、底本通りです。 入力:kompass 校正:岡村和彦 2012年10月21日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053493", "作品名": "フレップ・トリップ", "作品名読み": "フレップ・トリップ", "ソート用読み": "ふれつふとりつふ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号", "分類番号": "NDC 915", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2012-12-23T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/...
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Ⅰ 初版本について  初版『雀の卵』は大正十年八月にアルスより刊行された。四六版アンカト、五二五頁、部厚で重く、兎も角尨然たる大冊となつた。恩地孝四郎氏の装幀で、鼠色の薬嚢絨布で、表紙は無地、背の上部に白の鞁を当て、之に金文字を捺しただけであつた。大扉と小扉は同じく同氏の手に成るカツトで飾つた。挿画はわたくし自身で葛飾時代から描きためて置いた十七葉を以てした。  此の『雀の卵』の装幀には二種ある。再版後の分は、表は同じ鼠の無地であるが、背の鞁の金文字は自身のものに換へ大扉と小扉も同じく之に準つた。  いづれも内容は同じであるが、ただ一首後のに訂正されてゐる。これは「雀の卵」の中「山家抄」の二、三首目の歌 雪空に澄みつつ白き山ふたつ...
底本:「白秋全集 7」岩波書店    1985(昭和60)年3月5日発行 底本の親本:「雀の卵」白秋文庫、アルス    1937(昭和12)年8月18日刊行 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年6月25日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "052393", "作品名": "文庫版『雀の卵』覚書", "作品名読み": "ぶんこばん『すずめのたまご』おぼえがき", "ソート用読み": "ふんこはん『すすめのたまこ』おほえかき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-08-26T00:00:00", "最終更新日": "2017-07-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card...
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 蜜柑山でも見に行かうかと、日向ぼつこから私が立つと、夕暮君も、それはよからうと続いて立ち上つた。竹林の昼餐をやつと済ますと、私たちは裏の別荘の丘に席を移して、山と海との大観をそれまでほしいままに楽しんでゐたのである。いい冬晴の午後三時過ぎ、空には微塵の雲も無かつた。日は双子の山の上に、ちやうど「日光」の表紙画のやうに、十方に放射光を輝かしてゐた。 「では、後からお銭と籠を婢やに持たしてあげますから、そろそろのぼつていらつしやい。」と、妻が病後の子供をかかへあげた。  私たち二人はテニスコートを抜け、丘の青木の間を鉄条網の壊れを探して、その上の桑畑へ出た。桑畑の畝には蚕豆の列がもう子供の手に鳴らせるほどの葉の厚みに大きく伸びそろつて...
底本:「花の名随筆11 十一月の花」作品社    1999(平成11)年10月10日初版第1刷発行 底本の親本:「白秋全集 17」岩波書店    1985(昭和60)年9月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:岡村和彦 校正:noriko saito 2011年1月9日作成 2012年8月30日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "052296", "作品名": "蜜柑山散策", "作品名読み": "みかんやまさんさく", "ソート用読み": "みかんやまさんさく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2011-02-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card52296.html", "人物ID": "000...
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緑の種子 種子はこれ感覚の粋、 緑は金の陰影にして、幽かに泣くはわが心。 種子を哀しめ、よきひとよ、 冷たく、小さき芥子のたね、その一粒に心せよ、 歔欷けかし、日の光。 種子はこれ霊魂の粋、 生ける宝石、「時」の秒、金と緑の夜の秘密、 淫慾の芽の潜伏所、 阿片の精。 種子を哀しめ、よきひとよ、 緑は色の粋にして、 智慧と不思議と生滅の見えざる悲劇、 万華鏡。 消え去り難き幽霊の 芥子の緑に泣くごとく、 裏切したる歓会の醒めて哀しきわが心。 種子を哀しめ、よきひとよ、 歔欷けかし、日の光。 四十五年八月 棗の樹 映画の中に一本の棗の樹あり。 以太利の街なれば日の光黄色なりけり。 棗には実ありき、その実いと赤かるべき...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「雪と花火」東雲堂書店    1916(大正5)年7月1日 初出:緑の種子「朱欒 2巻9号」    1912(大正元)年9月1日    棗の樹「白樺 3巻10号」    1912(大正元)年10月1日    人食ふひと「朱欒 3巻4号」    1913(大正2)年4月1日    ペンギン「朱欒 2巻6号」    1912(明治45)年6月1日    悲みの奥「朱欒 2巻6号」    1912(明治45)年6月1日    夕とどろき「朱欒 2巻6号」    1912(明治45)年6月1日    石竹「朱欒 2巻6号」    1912(明治45)年6月...
{"作品ID": "055752", "作品名": "緑の種子", "作品名読み": "みどりのたね", "ソート用読み": "みとりのたね", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "緑の種子「朱欒\u30002巻9号」1912(大正元)年9月1日<br>棗の樹「白樺\u30003巻10号」1912(大正元)年10月1日<br>人食ふひと「朱欒\u30003巻4号」1913(大正2)年4月1日<br>ペンギン「朱欒\u30002巻6号」1912(明治45)年6月1日<br>悲みの奥「朱欒\u30002巻6号」1912(明治45)年6月1日<br>夕とどろき「朱欒\u30002巻6号」1912(...
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 閑雅な孟宗の枯れ色は私にとつて何より親しく感じられる。私は階上の書斎から硝子戸越しに朝夕その眺めを楽しんでゐる。どの窓を眺めても孟宗がしだれてゐる。寒くて風の少ない日などはその揺れる秀さきばかりがこまかな光りを反してゐる。  聖ヶ獄にも斑ら雪が残つてゐる。庭の寒枇杷も冷えきつてよい。時とすると、思ひもかけず、ちらちらと牡丹雪がふつてくる。さうしたしつとりとした曇り日もうれしい。  私の家は半潰れのままだが二階だけはどうにか住めるのである。ほとんど廃墟とも云つてよいこの家の生活も住み馴れて見るといよいよに執着が増す。やはりここに落ちついて、しづかな詩作生活に耽らう。  先達つての再度の大震では、もう潰れることと思つたし、命もないもの...
底本:「花の名随筆1 一月の花」作品社    1998(平成10)年11月30日初版第1刷発行 底本の親本:「白秋全集 第一七巻」岩波書店    1985(昭和60)年9月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:土屋隆 校正:noriko saito 2008年5月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "048196", "作品名": "孟宗と七面鳥", "作品名読み": "もうそうとしちめんちょう", "ソート用読み": "もうそうとしちめんちよう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-06-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card48196.html", "人物ID...
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 東京景物詩は大正二年七月の版である。今回その第参版を上梓するに当り、書肆の乞ふがまゝに、新に当時の詩一章十二篇を増補して、「雪と花火」と改題改幀したのである。  茲に収められた七章八十余篇の詩は、明治四十二年の二月(邪宗門出版当時)より大正二年の四月(朱欒廃刊迄)に至る、概ね四ヶ年間の制作であつて、恰度私の青春の花期に当つてゐる。その間に私は『邪宗門』『思ひ出』『桐の花』等の詩歌集を出し、また雑誌『スバル』に外部より声援し、又木下杢太郎、長田秀雄両君と都会趣味と異国情趣を基調とした雑誌『屋上庭園』を二冊発刊し、其後単独でも雑誌『朱欒』を一年有半続刊した。而して私の周囲の華やかさはまた格別であつた。石井柏亭、山本鼎、高村光太郎、木下...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「雪と花火」東雲堂書店    1916(大正5)年7月1日 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※「至」と「到」の混在は、底本通りです。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年1月12日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055753", "作品名": "雪と花火余言", "作品名読み": "ゆきとはなびよげん", "ソート用読み": "ゆきとはなひよけん", "副題": "東京景物詩改題に就て", "副題読み": "とうきょうけいぶつしかいだいについて", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-02-12T00:00:00", "最終更新日": "2017-01-12T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/...
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上巻 白良 昭和九年八月中旬、台湾巡歴の帰途、神戸に迎へたる妻子と共に紀州白良温泉に遊ぶ。滞在数日。 白良 白良の浜に遊びて 白良の ましららの浜、まことしろきかも。驚くと、我が見ると、まことしろきかも。踏みさくみ、手ぐさとり、あなあはれ、まことしろきかも。子らと来て、足投げて、膝くみて、ただにしろきかも。白良の ましららの浜、松が根も、渚べも、日おもても、ただにしろきかも。あなあはれ、目に霧りて、火気だちて、しろきかもや、しろきかもや、立ちても居ても。 おなじく ましららの白良の浜はまことしろきかも敷きなべて真砂も玉もまことしろきかも 旋頭歌一首 また ましららのまこと白...
底本:「白秋全集 10」岩波書店    1986(昭和61)年4月7日発行 底本の親本:「夢殿」八雲書林    1939(昭和14)年11月28日初版発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※小見出しよりもさらに下位の見出しには、注記しませんでした。 入力:岡村和彦 校正:光森裕樹 2014年11月14日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "052958", "作品名": "夢殿", "作品名読み": "ゆめどの", "ソート用読み": "ゆめとの", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2014-12-10T00:00:00", "最終更新日": "2014-11-14T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card52958.html", "人物ID": "000106", "姓": "北...
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 凡てが小生には復と得難い哀しい省察の時を与へて呉れました。色々と小生の近状を御配慮下さる方々に、ただ小生が健全で如何なる苦痛と羞辱とにも耐え忍び得る程、敬虔な勇気ある状態に自己の霊を温めつゝある事をお伝へしたいと思ひます。  文芸の汚辱者として高品な某文芸新聞の譏笑を受けた事に就きましては、それらの凡てが真実で無かつたにせよ、小生は今更何等の弁解も致し度く御座いません。哀れな芸術の追求者たる小生にただ軽い微笑と小さな寛恕とを彼等一団の文芸記者――詩人文士達にお送りする丈の光栄を有しさへすれば凡てが無事なやうに思はれます。  小生は何事も有の儘に申上ます。或る人――の告訴に依り、身を斬られるほど耻かしい奸通被告事件の一方の被告として...
底本:「日本の名随筆 別巻55 恋心」作品社    1995(平成7)年9月25日第1刷発行 底本の親本:「白秋全集 第三五巻」岩波書店    1987(昭和62)年11月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:浦山 敦子 校正:noriko saito 2009年5月5日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "048335", "作品名": "わが敬愛する人々に", "作品名読み": "わがけいあいするひとびとに", "ソート用読み": "わかけいあいするひとひとに", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-06-20T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card48335.html", ...
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 少年老い易し、麗人は刻を千金の春夜に惜む。われらがわかき日の小詩はまさに涙を流して歌ふべし。瑠璃いろ空のかはたれにわすれなぐさの花咲かばまた、過ぎし夜のはかなき恋も忍ぶべし。ここに選び出でたるはわが幼きより今にいたるあらゆる詩集の中より、ことに歌ひ易く調やさしき断章小曲のかずかず、すべてみな見果てぬ夢の現なかりしささやきばかり、とりあつむればあはれなることかぎりなし。かの西の国の詩人が ながれのきしのひともとは みそらのいろのみづあさぎ なみことごとくくちづけし はたことごとくわすれゆく。 と歌ひけむ。なにごともながれゆく水のながれのひとふれのみ。忘れえぬ人びとよ、われらが若さは過ぎなむとす。嘆かば嘆け。羊の皮の手ざはりに金の...
底本:「白秋全集 3」岩波書店    1985(昭和60)年5月7日発行 底本の親本:「わすれなぐさ」阿蘭陀書房    1915(大正4)年5月3日刊行 ※底本における表題「はしがき」に、底本の親本名を補い、作品名を「「わすれなぐさ」はしがき」としました。 入力:岡村和彦 校正:フクポー 2017年3月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "055612", "作品名": "「わすれなぐさ」はしがき", "作品名読み": "わすれなぐさはしがき", "ソート用読み": "わすれなくさはしかき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-04-17T00:00:00", "最終更新日": "2017-03-11T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000106/card55612.html",...
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 新秋の氣もちいゝ風が簾を透して吹く、それが呼吸氣管に吸ひ込まれて、酸素が血になり、動脈が調子よく搏つ………その氣が味はへない。  澄んだ空の月を寢ながら眺める、人いきれから逃れた郊外の樂みは、こゝに止めを刺す……それが觀られない。  空氣も流通しないほど、ピシヤリと障子を建てゝ蒸されてゐる、息がつまる。  それは猫のため、兒猫のため、五寸にたらぬ小さな猫一匹で、五尺に近い體を持てあます。苦しい。  また來た、かあゆい聲。  もう勘忍してくれ、お前のために苦しみぬいてゐる、その鳴き聲は殺人的だ。  寢轉んで讀書してゐる枕頭にお行儀よくおちんをしてゐる、叱つても逃げない、庭へつまみ出す、また這入つてくる、汚物をたれ流す、下女が怒る。 ...
底本:「戀の潜航」改善社    1926(大正15)年10月10日発行 ※国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。 ※「………」と「……」の混在は、底本通りです。 ※「小さな」に対するルビの「ちい」と「ちひ」の混在は、底本通りです。 ※「江」をくずした形の「変体仮名え」は、仮名にあらためました。 入力:かな とよみ 校正:The Creative CAT 2021年10月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作に...
{"作品ID": "060668", "作品名": "ねこ", "作品名読み": "ねこ", "ソート用読み": "ねこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2021-11-26T00:00:00", "最終更新日": "2021-10-27T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/002169/card60668.html", "人物ID": "002169", "姓": "北村", ...
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 信州の戸隠山麓なる鬼無村という僻村は、避暑地として中々佳い土地である、自分は数年前の夏のこと脚気の為め、保養がてらに、数週間、此地に逗留していた事があった。  或日の事、自分は昼飯を喫べて後、あまりの徒然に、慰み半分、今も盛りと庭に咲乱れている赤い夏菊を二三枝手折って来て、床の間の花瓶に活けてみた、やがてそれなりに自分はふらりと宿屋を出て、山の方へ散歩に行ったのである、二時間ばかりして宿屋へ帰った、直ぐ自分の部屋へ入ると私は驚いた、先刻活けたばかりの夏菊が最早萎れていたのだ、一体夏菊という花は、そう中々萎れるものでない、それが、ものの二時間も経ぬ間にかかる有様となったので、私も何だか一種いやな心持がして、その日はそれなり何処へも出...
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房    2007(平成19)年7月10日第1刷発行 底本の親本:「怪談会」柏舎書楼    1909(明治42)年発行 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年9月22日作成 2008年10月12日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049241", "作品名": "鬼無菊", "作品名読み": "きなしぎく", "ソート用読み": "きなしきく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-10-07T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001357/card49241.html", "人物ID": "001357", "姓":...
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「君、如何だ、近頃は不思議が無いか」  私の友人は、よく私にこういうて笑うが、私には如何してもそれが冗談として打消されない、矢張何か一種の神秘作用としか思われないのである、如何いうものか吉兆の方は無い――尤も私の今日までの境遇上からでもあろうが――が奇妙に凶事に関しては、事件の大小を論せず、必ず自分には前報がある、遅いのは三四日前、早いのは一年も二年も以前にちゃんと解る、如何して知れるというと、即ち自分の頭の真上で何か響があるのだ、それにまた奇妙なのは、事件が大きければ大きいほど、響も大きいといった風で、瑣細な凶事が起る時などは、丸で何か爪の先で爬く様な微かな音がする、他人がもし傍に居ればその人にも聞えるそうだ、私はこういう仕事をし...
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房    2007(平成19)年7月10日第1刷発行 底本の親本:「怪談会」柏舎書楼    1909(明治42)年発行 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年9月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049242", "作品名": "頭上の響", "作品名読み": "ずじょうのひびき", "ソート用読み": "すしようのひひき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-10-07T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001357/card49242.html", "人物ID": "001357...
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 現今私の家に居る門弟の実見談だが、所は越後国西頸城郡市振村というところ、その男がまだ十二三の頃だそうだ、自分の家の直き近所に、勘太郎という樵夫の老爺が住んでいたが、倅は漁夫で、十七ばかりになる娘との親子三人暮であった、ところがこの家というのは、世にも哀れむべき、癩病の血統なので、娘は既に年頃になっても、何処からも貰手がない、娘もそれを覚ったが、偶然、或時父兄の前に言出でて、自分は一代法華をして、諸国を経廻ろうと思うから、何卒家を出してくれと決心の色を現したので、父も兄も致方なく、これを許したから、娘は大変喜んで、早速まだうら若き身を白衣姿に変えて、納経を懐にして、或年の秋、一人ふいと己の故郷を後にして、遂に千ヶ寺詣の旅に上ったので...
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房    2007(平成19)年7月10日第1刷発行 底本の親本:「怪談会」柏舎書楼    1909(明治42)年発行 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年9月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049243", "作品名": "千ヶ寺詣", "作品名読み": "せんがじもうで", "ソート用読み": "せんかしもうて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-10-07T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001357/card49243.html", "人物ID": "001357",...
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 私が巴里に居た時、一時、リャンコルン街の五十番に家を借りていた事がある、この家屋は四階建で、私の居たのもこの四階の上であった、すると隣家に十二ばかりの女の子を上に八歳ばかりと五歳ばかりの男の子が居た。父親というのは、何の職務をしていたのか、自分は、終ぞ家人に訊ねた事もなく、如何も解らなかったが、毎日早朝から丁度巡査の様な服装をして、出て行って、夜に入って帰って来るので、自分が其処に居たのも三月ばかりの間だったが、一度も談話した事もなく、ただ一寸挨拶をするくらいに止まっていた、がその三人の子供が、如何にも可愛いので、元来が児好きの私の事だから、早速御馴染に成って、ちょいちょい遊びにやってくる、私も仕事の相間の退窟わすれに、少なからず...
底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房    2007(平成19)年7月10日第1刷発行 底本の親本:「怪談会」柏舎書楼    1909(明治42)年発行 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年9月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049244", "作品名": "闥の響", "作品名読み": "ドアのひびき", "ソート用読み": "とあのひひき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-10-07T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001357/card49244.html", "人物ID": "001357", "姓...
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 歓楽は長く留り難く、悲音は尽くる時を知らず。よろこびは春の華の如く時に順つて散れども、かなしみは永久の皷吹をなして人の胸をとゞろかす、会ふ時のよろこびは別るゝ時のかなしみを償ふべからず。はたまた会ふ時の心は別るゝ時の心の万分の一にだも長からず。生を享け、人間に出でゝ、心を労して荊棘を過る、或は故なきに敵となり、或は故なきに味方となり、恩怨両つながら暴雨の前の蛛網に似て、徒らに啻だ毛髪の細き縁を結ぶ、夕に笑ひしに因て朝に泣くの果を見つ、朝に泣きしに因つて更に又た夕に笑はんとす、斯の如きは憫れむべし、斯の如きは悲しむべし、斯の如きは厭ふべし、我れつら〳〵世相を観ずるに、誰か亦た斯の如くならざらむ。娼婦の涕は紅涙と賞へられ、狼心の偽捨は...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 十二號」女学雜誌社    1893(明治26)年9月9日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年3月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043504", "作品名": "哀詞序", "作品名読み": "あいしじょ", "ソート用読み": "あいししよ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「評論\u3000十二號」女学雜誌社、1893(明治26)年9月9日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-05-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/card4...
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 刑鞭を揮ふ獄吏として、自著自評の抗難者として、義捐小説の冷罵者として、正直正太夫の名を聞くこと久し。是等の冷罵抗難は正太夫を重からしめしや、将た軽からしめしや、そは茲に言ふ可きところならず、余は「油地獄」と題する一種奇様の小説を得たるを喜び、世評既に定まれりと告ぐる者あるにも拘らず、敢て一言を揷まんとす。 「油地獄」は「小説評註」と、「犬蓼」とを合はせ綴ぢて附録の如くす。「小説評註」は純然たる諷刺にして、当時の文豪を罵殺せんとする毒舌紙上に躍如たり。然れども其諷刺の原料として取る所の、重に文躰にありしを以て見れば、善く罵りしのみにして、未だ敵を塵滅するの力あらざりしを知るに足らむ。 「油地獄」と「犬蓼」とは結構を異にして想膸一なり...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三一五號~三一七號」女學雜誌社    1892(明治25)年4月30日、5月7日、5月14日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2008年1月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046580", "作品名": "「油地獄」を読む", "作品名読み": "「あぶらじごく」をよむ", "ソート用読み": "あふらしこくをよむ", "副題": "(〔斎藤〕緑雨著)", "副題読み": "(〔さいとう〕りょくうちょ)", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000三一五號~三一七號」女學雜誌社、1892(明治25)年4月30日、5月7日、5月14日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-02-11T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00"...
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 三千年を流るゝ長江漫※(さんずい+(くさかんむり/奔))たり、其始めは神委にして、極めて自然なる悖生にゆだねたり、仲頃、唐宋の学芸を誘引し、印度の幽玄なる哲学的宗教に化育せられたりと雖、凡ての羣流、凡ての涓※(さんずい+會)を合せて、長江は依然として長江なり。満土を肥沃し、生霊を育成し、以て今日に至らしむ、この長江、豈に維新の革命によりて埋了し去ることあらんや。  われは心酔せる欧化思想を抱けるものにあらず、我国固有の思想なる三千年来の長江は、我軽舸を載せて奔らしむるに宜しきを知るは、世に所謂国粋論者なる者に譲るところなきを信ず、然るも彼の舶載せるものと云へばいかなる者をも排斥し尽さんと計るものには、同情を呈する事能はず、況んや、...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 三號」平和社(日本平和會)    1892(明治25)年6月15日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2008年1月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046582", "作品名": "一種の攘夷思想", "作品名読み": "いっしゅのじょういしそう", "ソート用読み": "いつしゆのしよういしそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「平和\u3000三號」平和社(日本平和會)、1892(明治25)年6月15日", "分類番号": "NDC 121", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-02-13T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.g...
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     其一  ある宵われ牕にあたりて横はる。ところは海の郷、秋高く天朗らかにして、よろづの象、よろづの物、凛乎として我に迫る。恰も我が真率ならざるを笑ふに似たり。恰も我が局促たるを嘲るに似たり。恰も我が力なく能なく弁なく気なきを罵るに似たり。渠は斯の如く我に徹透す、而して我は地上の一微物、渠に悟達することの甚はだ難きは如何ぞや。  月は晩くして未だ上るに及ばず。仰いで蒼穹を観れば、無数の星宿紛糾して我が頭にあり。顧みて我が五尺を視、更に又内観して我が内なるものを察するに、彼と我との距離甚だ遠きに驚ろく。不死不朽、彼と与にあり、衰老病死、我と与にあり。鮮美透涼なる彼に対して、撓み易く折れ易き我れ如何に赧然たるべきぞ。爰に於て、我...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 十六號」女學雜誌社    1893(明治26)年11月4日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046549", "作品名": "一夕観", "作品名読み": "いっせきかん", "ソート用読み": "いつせきかん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「評論\u3000十六號」女學雜誌社、1893(明治26)年11月4日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-12-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/ca...
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 巣林子の世話戯曲十中の八九は主人公を遊廓内に取れり、其清潔なる境地より取り来りたる者は甚だ少数なる中に「お夏清十郎歌念仏」は傑作として知られたり。余は「歌念仏」を愛読するの余、其女主人公に就きて感じたるところを有の儘に筆にせんとするのみ。若し巣林子著作の細評を聴かんとする者あらば、逍遙先生又は篁村翁が許へ行かるべし、余豈巣林子を評すと言はんや。  中の巻の発端に「かゝる親には似ぬ娘、お夏は深き濡ゆゑに、菩提心と意地ばりて、嫁入も背ものび〳〵の」………と書出して、お夏に既に恋ある事を示せり、然れども背ものび〳〵といふところにて、親々の眼には極めて処女らしく見ゆる事を知らせたり。清十郎(即ちお夏の情人)が大坂より戻り来りたる事を次に出...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三二一號」女學雜誌社    1892(明治25)年6月18日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2008年1月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046581", "作品名": "「歌念仏」を読みて", "作品名読み": "「うたねんぶつ」をよみて", "ソート用読み": "うたねんふつをよみて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000三二一號」女學雜誌社、1892(明治25)年6月18日", "分類番号": "NDC 912", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-02-13T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr...
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 恋愛は人世の秘鑰なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を抽き去りたらむには人生何の色味かあらむ、然るに尤も多く人世を観じ、尤も多く人世の秘奥を究むるといふ詩人なる怪物の尤も多く恋愛に罪業を作るは、抑も如何なる理ぞ。古往今来詩家の恋愛に失する者、挙げて数ふ可からず、遂に女性をして嫁して詩家の妻となるを戒しむるに至らしめたり、詩家豈無情の動物ならむ、否、其濃情なる事、常人に幾倍する事著るし、然るに綢繆終りを全うする者尠きは何故ぞ。ギヨオテの鬼才を以て、後人をして彼の頭は黄金、彼の心は是れ鉛なりと言はしめしも、其恋愛に対する節操全からざりければなり。バイロンの嵩峻を以ても、彼の貞淑寡言の良妻をして狂人と疑はしめ、去つて以太利に飄泊するに及んで...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三〇三號、三〇五號」女學雜誌社    1892(明治25)年2月6日、20日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045237", "作品名": "厭世詩家と女性", "作品名読み": "えんせいしかとじょせい", "ソート用読み": "えんせいしかとしよせい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000三〇三號、三〇五號」女學雜誌社、1892(明治25)年2月6日、20日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-10-28T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aoz...
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 天地愛好すべき者多し、而して尤も愛好すべきは処女の純潔なるかな。もし黄金、瑠璃、真珠を尊としとせば、処女の純潔は人界に於ける黄金、瑠璃、真珠なり。もし人生を汚濁穢染の土とせば、処女の純潔は燈明の暗牢に向ふが如しと言はむ、もし世路を荊棘の埋むところとせば、処女の純潔は無害無痍にして荊中に点ずる百合花とや言はむ、われ語を極めて我が愛好するものを嘉賞せんとすれども、人間の言語恐らくは此至宝を形容し尽くすこと能はざるべし。噫人生を厭悪するも厭悪せざるも、誰か処女の純潔に遭ふて欣楽せざるものあらむ。  然れども我はわが文学の為に苦しむこと久し。悲しくも我が文学の祖先は、処女の純潔を尊とむことを知らず。徳川氏時代の戯作家は言へば更なり、古への...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三二九號」女學雜誌社    1892(明治25)年10月8日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045241", "作品名": "処女の純潔を論ず", "作品名読み": "おとめのじゅんけつをろんず", "ソート用読み": "おとめのしゆんけつをろんす", "副題": "(富山洞伏姫の一例の観察)", "副題読み": "(とやまのほらふせひめのいちれいのかんさつ)", "原題": "", "初出": "「白表女学雑誌」1892(明治25)年10月8日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-10-28T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL"...
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 各人は自ら己れの生涯を説明せんとて、行為言動を示すものなり、而して今日に至るまで真に自己を説明し得たるもの、果して幾個かある。或は自己を隠慝し、或は自己を吹聴し、又た自らを誇示するものあれば、自らを退譲するものあり、要するに真に自己の生涯を説明するものは尠なきなり。  哲学あり、科学あり、人生を研究せんと企つる事久し、客観的詩人あり、主観的詩人あり、千里の天眼鏡を懸て人生を観測すること既に久し、而して哲学を以て、科学を以て、詩人の霊眼を以て、終に説明し尽すべからざるものは夫れ人生なるかな。  厭世大詩人バイロンが「我は哲学にも科学にも奥玄なるところまで進みしが、遂に益するところあらざりし」と放言し、万古の大戯曲家シヱーキスピーアが...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 六號」平和社(日本平和會)    1892(明治25)年9月15日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045238", "作品名": "各人心宮内の秘宮", "作品名読み": "かくじんしんきゅうないのひきゅう", "ソート用読み": "かくしんしんきゆうないのひきゆう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「平和\u3000六號」平和社(日本平和會)、1892(明治25)年9月15日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-11-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www...
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     其一 旅心  暫らく都門熱閙の地を離れて、身を閑寂たる漁村に投ず。これ風流韻事の旅にあらず。自から素性を養ひて、心神の快を取らんとてなり。わが生、素と虚弱、加ふるに少歳、生を軽うして身を傷りてより、功名念絶えて唯だ好む所に従ふを事とす。不幸にして籍を文園に投じ、猜忌の境に身を揷めり。斯の如きは素願にあらず、希くは名もなく誉もなき村人の中に交りて、わが「真村」をその幽囚より救はんか。      其二 夏休  天の炎暑を司る、必らずしも人を苦しむるのみにあらず。居常唯だ書籍に埋もれ、味なき哲理に身を呑まれて、徒らに遠路に喘ぐものをして、忽焉、造化の秘蔵の巻に向ひ不可思議の妙理を豁破せしむるもの、夏の休息あればなり。学校よ...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 九號」女學雜誌社    1893(明治26)年7月29日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045379", "作品名": "客居偶録", "作品名読み": "かっきょぐうろく", "ソート用読み": "かつきよくうろく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「評論\u3000九號」女學雜誌社、1893(明治26)年7月29日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-11-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/00015...
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 まづ祝すべきは市谷の詩人が俗嘲を顧みずして、この新らしき題目を歌ひたることなり。  残花道人嘗つて桂川を渡る、期は夜なり、風は少しく雨を交ゆ、「昨日も今日も五月雨に、ふりくらしたる頃なれど」とあるを見れば梅雨の頃かとぞ思ふ。「霧たちこめし水の面に、二ツの光りてらすなり、友におくれし螢火か、はた亡き魂かあはれ〳〵」と一面惨絶の光景を画きて、先づ幽魂の迷執をうつす。それより情死の事由を列ね、更に一転してその苦痛と応報とを陳ぶ。「あやなき闇に凄然じや、閻羅と見ゆる夏木立」。之より一回転して虚実の中に出没し、視るところのものゝ心裡を写出する一節絶筆なり。 「こゝは処も桂川」、最前の起句を再用して、「造化の筆はいまもなほ、悲惨の景色うつしい...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 七號」文學界雜誌社    1893(明治26)年7月30日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046548", "作品名": "「桂川」(吊歌)を評して情死に及ぶ", "作品名読み": "「かつらがわ」(つりうた)をひょうしてじょうしにおよぶ", "ソート用読み": "かつらかわつりうたをひようしてしようしにおよふ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文學界\u3000七號」文學界雜誌社、1893(明治26)年7月30日", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-12-28T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", ...
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 宇宙を観察するの途二あり、一は宇宙を「死躰」として観るにあり、他は宇宙を「生躰」として観るにあり、人生を観察するの途二あり、一は人生を今世に限られたるものとして観るにあり、他は人生を未来に亘るものとして観るにあり。爰に於て吾人は知る、人間世に処するの途は、現在に希望を置くと、未来に希望を置くとの二岐に分るゝあるのみ。更に去つて歴史を観るに、盛衰興亡の端多く、一去一来の跡空しきも、之を要するに、歴史の中心潮は、未来の希望を現実に適用するにあるのみ。悠々たる天と、邈々たる地の間に孰れの所にか墳墓なる者あらんや、其の之あるは、人間の自から造れる者なり、国民の自から造れる者なり。印度自から其墳墓に埋もれたり、羅馬自ら其墳墓に沈みたり、彼等...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 五號」文學界雜誌社    1893(明治26)年5月31日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年3月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043484", "作品名": "頑執妄排の弊", "作品名読み": "がんしゅうもうはいのへい", "ソート用読み": "かんしゆうもうはいのへい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文學界\u3000五號」文學界雜誌社、1893(明治26)年5月31日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-05-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp...
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 悲しき事の、さても世には多きものかな、われは今読者と共に、しばらく空想と虚栄の幻影を離れて、まことにありし一悲劇を語るを聞かむ。  語るものはわがこの夏霎時の仮の宿とたのみし家の隣に住みし按摩男なり。ありし事がらは、そがまうへなる禅寺の墓地にして、頃は去歳の初秋とか言へり。  二本榎に朝夕の烟も細き一かまどあり、主人は八百屋にして、かつぎうりを以て営とす、そが妻との間に三五ばかりなる娘ひとりと、六歳になりたる小児とあり、夫は実直なる性なれば家業に懈ることなく、妻も日頃謹慎の質にして物多く言はぬほど糸針の道には心掛ありしとのうはさなり。かゝればかまどの烟細しとは言ひながら、其日其日を送るに太き息吐く程にはあらず、折には小金貸し出す勢...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三三一號」女學雜誌社    1892(明治25)年11月5日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045474", "作品名": "鬼心非鬼心", "作品名読み": "きしんひきしん", "ソート用読み": "きしんひきしん", "副題": "(実聞)", "副題読み": "(じつぶん)", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000三三一號」女學雜誌社、1892(明治25)年11月5日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-11-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.j...
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夢中の夢 嗚呼かく弱き人ごゝろ、 嗚呼かく強き戀の情、 朝靄の歌 もらすなよあだうつくしの花、 消ゆる汝共に散るものを、 うつくしとても幾日經ぬべき、 盛りと見しははやすたり 春駒    第一 門出 北風に窓閉されて朝夕の   伴となるもの書と爐火、 軒下の垂氷と共に心凍り   眺めて學ぶ雪達摩、    けふまでこそは梅櫻、    霜の惱みに默しけれ。 霜柱きのふ解けたる其儘に   朝風ぬるしけふ夜明け、 書の窓うぐひすの音に開かれて、   顏さし出せば梅の香や、    南か北か花見えず、    いづこの杜に風の宿。 耳澄まし暫く聞けば鶯の音は   「春」てふものをおとづれぬ。   × × × × × × ×...
底本:「透谷全集 第一卷」岩波書店    1950(昭和25)年7月15日第1刷発行    1970(昭和45)年6月30日第13刷発行 初出:夢中の夢「女學雜誌」    1895(明治28)年10月25日号    朝靄の歌    (1890(明治23)年9月4日作)    春駒「女學雜誌」    1895(明治28)年10月25日号    春は來ぬ    (1891(明治24)年2月15日作)    地龍子    (1891(明治24)年6月9日作)    みゝずのうた「文學界 第十八號」    1894(明治27)年6月30日    一點星「女學雜誌 第二九八號」    1892(明治25)年1月2日    孤飛蝶「女學生 夏期...
{"作品ID": "002425", "作品名": "北村透谷詩集", "作品名読み": "きたむらとうこくししゅう", "ソート用読み": "きたむらとうこくししゆう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-08-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/card2425.html", "人物ID"...
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 一は実を主とし、一は想を旨とする紅葉と露伴。一は客観的実相を尚び、一は主観的心想を重んずる当代の両名家。紅葉は「伽羅枕」を、露伴は「辻浄瑠璃」を、時を同うして作り出たり。此二書に就き世評既に定まれるにも拘らず、余は聊余が読来り読去る間に念頭に浮びし感を記する事となしぬ。  余は二作を読み了りける後、奇しくも実想相分るゝ二大家の作に同致の跡瞭然見る可き者あるを認めぬ。従来の諸作は分明に紅葉をして細微なる人情の観察者たらしめ、露伴をして逸調の奇想を吐く者たらしめたるに、不思議にも「伽羅枕」及「新葉末集」に至りて、両家の意匠の、其外部の形式の如何に拘らず、陰然相似たる所あるが如し。  紅葉の佐太夫は女性にして、露伴の道也は男性なり。然れ...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三〇八號~三〇九號」女學雜誌社    1892(明治25)年3月12日、19日 ※「場」と「塲」の混在は底本どおりです。 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2006年4月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045970", "作品名": "「伽羅枕」及び「新葉末集」", "作品名読み": "「きゃらまくら」および「しんはずえしゅう」", "ソート用読み": "きやらまくらおよひしんはすえしゆう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000三〇八號~三〇九號」女學雜誌社、1892(明治25)年3月12日、19日", "分類番号": "NDC 910", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-05-20T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カー...
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 文界の筮卜者は幾度となく劇詩熱の流行を預言せり、然るに今年までは当れるにもあらず、当らぬにもあらず、これといふ傑作も出ざれば、劇詩の流行とも言ふべき程の事もあらず。小説界には最早二三世紀とも言ふべき程の変遷あり、批評界も能く変じ能く動きたるに、劇詩のみは依然として狂言作者の手に残り、如何ともすべき様なし。  劇詩の消長は劇界の動勢と密接の関係を有する者なるが故に、彼世界の故実旧式は、自からに明治文学の革命の狂飈をも嘲笑すべき城壁となりて、容易に新生気を侵入せしめざるは当然の理なるべし。然れ共、勢の迫るところ、早晩此世界にも大恐慌の来るべきは、何人と雖も預察し得る所なり。曩には桜癡居士の文壇より入りて歌舞伎座の作者となりしが如き、近...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 十二號」文學界雜誌社    1893(明治26)年12月30日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046550", "作品名": "劇詩の前途如何", "作品名読み": "げきしのぜんといかん", "ソート用読み": "けきしのせんといかん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文學界\u3000十二號」文學界雜誌社、1893(明治26)年12月30日", "分類番号": "NDC 912", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-12-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/...
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     (1) 思想上の三勢力  一国民の心性上の活動を支配する者三あり、曰く過去の勢力、曰く創造的勢力、曰く交通の勢力。  今日の我国民が思想上に於ける地位を詳らかにせんとせば、少なくとも右の三勢力に訴へ、而して後明らかに、其関係を察せざる可からず。 「過去」は無言なれども、能く「現在」の上に号令の権を握れり。歴史は意味なきペーヂの堆積にあらず、幾百世の国民は其が上に心血を印して去れり、骨は朽つべし、肉は爛るべし、然れども人間の心血が捺印したる跡は、之を抹すべからず。秋果熟すれば即ち落つ、落つるは偶然にして偶然にあらず、春日光暖かにして、百花妍を競ふ、之も亦偶然にあらず、自然は意味なきに似て大なる意味を有せり、一国民の消長窮通...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 八號」女学雜誌社    1893(明治26)年7月15日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2004年10月31日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043440", "作品名": "国民と思想", "作品名読み": "こくみんとしそう", "ソート用読み": "こくみんとしそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 121 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-11-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/card43440.html", "人物ID": "0...
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 人生は戦争の歴史なり。刀鎗銃剣は戦争にあらず。人生即ち是れ戦争。世を殺せし者必らずしも虚栄に傲る勝利者のみにはあらじ、力ある者は力なき者を殺し、権ある者は権なき者を殺し、智ある者は智なき者を殺し、業ある者は業なき者を殺し、世は陰晴常ならず、殺戮の奇巧なるものに至つては、晴天白日の下に巨万の民を殺しつゝあるなり。銃鳴り剣閃めき、戦血地を染め、腥風草樹を槁らすの時に、戦争の現状を見る、然れども肉眼の達せざるところ、常識の及ばざるところに、閃々たる剣火は絶ゆる時なきなり。  人の性は不調子なり、人の命は不規律なり、争ふ事を好むは猿猴よりも多く、満足する事能はざるは空の鳥に学ばざる可からざるが如し、是非曲直を論ずれども、我利の為に立論する...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 二號」平和社(日本平和會)    1892(明治25)年5月18日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2008年1月25日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046583", "作品名": "最後の勝利者は誰ぞ", "作品名読み": "さいごのしょうりしゃはたぞ", "ソート用読み": "さいこのしようりしやはたそ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「平和\u3000二號」平和社(日本平和會)、1892(明治25)年5月18日", "分類番号": "NDC 190", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-02-11T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozo...
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     其一  夢見まほしやと思ふ時、あやにくに夢の無き事あり、夢なかれと思ふ時、うとましき夢のもつれ入ることあり。寤むる時、亦た斯の如し、意はざらんと思ふに意ひ、意はんと思ふに意はず。左りとて意の如くならぬをば意の如くせまじと思ふにもあらず、静に傾き尽きなんとする月を見れば、よろづ意の儘にならぬものぞなき、徐ろに咲き出らん花を待つに、よろづ心に任せぬものぞなき。如意却つて不如意。不如意却つて如意。悲しむも何かせむ。歓ぶも何かせむ。「無心」を傭ひ来つて、悲みをも、歓びをも、同じ意界に放ちやりてこそ、まことの楽は来るなれ。      其二  早暁臥床を出でゝ、心は寤寐の間に醒め、意ひは意無意の際にある時、一鳥の弄声を聴けば、忽...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三三九號」女學雜誌社    1893(明治26)年2月25日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年1月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 思想の領地は栄光ある天門より暗濛たる深谷に広がれり。羽衣を着けたる仙女も此領地の中に舞ひ、悪火を吐く毒鬼も此の裡に棲めり。思想の境地は実に天の与へたる自由意志の鬭塲なり。美は醜と闘ひ、善は悪と争ふ、或は桂冠を戴きて此の舞台より歴史の或一隅に遷り去るあり、或は傷痍を負ふて永く苦痛の声を留むるあり。甲去れば乙来り、乙去れば丙又た来る。一往一来、頻又頻を極めて、而して宇宙は悠然として更に他の新客を待てり。プレトー去つて遠し、シヱーキスピーア去つて又た還らず、ウオーヅオルス逝けり、カアライル逝けり、ボルテーア逝き、バイロン逝けり。歴史の頁数は年毎に其厚さを加ふれど、思想界の領地は聊爾も減毀せらるゝを見ず。恰も是れ渡船に乗じて往来する人の面...
底本:「現代日本文學体系6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 十三號」女學雜誌社    1893(明治26)年9月23日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 人は地に生れたるものにして、天を家とするものならず、人生は社会周辺の事実に囲まれてあるものなれば、性行を経綸すべき倫理なるもの一日も無かるべからざるなり。社会は時辰機の如し、一部分の破損は以て全躰の破損となり、遂には運行を止むるに至るべし。之を以て孰れの邦国にも孰れの社会にも必らず何等かの倫理あるなり。近頃実際的道徳の要を知りはじめたる、我日本は、此際深く自ら省みざるべからず。  然れども世間往々にして実際的道徳を誤解するものあり、唯だ其行ひにのみ重きを置きて其の心を問はざるが如き傾きあり。客観的人生にのみ心酔して主観的人生を顧みざるが如き趣きあり。イヱスの道徳は其平々坦々たるところに無量の深味あるが故に尊きなれ。彼は偽学偽弁に長...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「聖書之友雜誌 六四號」聖書之友事務所    1893(明治26)年4月15日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2004年10月31日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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     第一  かなしきものは秋なれど、また心地好きものも秋なるべし。春は俗を狂せしむるに宜れど、秋の士を高うするに如かず。花の人を酔はしむると月の人を清ましむるとは、自から味を異にするものあり。喜楽の中に人間の五情を没了するは世俗の免かるゝ能はざるところながら、われは万木凋落の期に当りて、静かに物象を察するの快なるを撰ぶなり。      第二  希望は人を欺き易きものぞ。今年の盛夏、鎌倉に遊びて居ること僅かに二日、思へらく此秋こそは爰に来りて、よろづの秋の悲しきを味ひ得んと。図らざりき身事忙促として、空しく中秋の好時節を紅塵万丈の裡に過さんとは。然れども秋は鎌倉に限るにあらず、人間到るところに詩界の秋あり。欺き易き希望を駕...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三三〇號」女學雜誌社    1892(明治25)年10月22日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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「汝ら只ヱホバをかしこみ心をつくして誠にこれにつかへよ」 (撒母耳前書第十二章二十四節)(七月分日課)  この月の日課なる馬太伝の中には神の王国に就きて重要なる教へ多くあり。主のつとめは実に栄あるものにして、之を守るものは、尤も福にして尤も恩あるものとす。主のつとめには種々の類あり、或は難く或は易し、或は己れの利益に適ひ、或は然らず、基督我等に語りて曰く、「凡て労たる者また重を負る者は我に来れ我なんぢらを息ません、我は心柔和にして謙遜者なれば我軛を負て我に学なんぢら心に平安を獲べし、蓋わが軛は易わが荷は軽ければ也」(馬太伝十一章、二十八節より三十節)。  主は爰に、難くして且つ酷き多くの他の主に就けるものを招き玉ふ。彼等は重きを負...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「聖書之友雜誌 六七號」聖書之友事務所    1893(明治26)年7月17日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 ミルトンは情熱を以て大詩人の一要素としたり。深幽と清楚とを備へたるは少なからず、然れどもまことの情熱を具有するは大詩人にあらずんば期すべからず。サタイアをもユーモアをも適宜に備ふるものは多くあれど、情熱を欠くが故に真正の詩人たらざるもの挙て数ふべからず。情熱なきサタイアリストの筆は、諷刺の半面を完備すれども、人間の実相を刻むこと難し。ボルテーアとスウ※(小書き片仮名ヰ)フトの偉大なるは、その諷刺の偉大なるに非ずして、其情熱の熾烈なるものあればなり。ユーモリストに到りては自ら其趣を異にすれども、之とても亦た隠約の間に情熱を有するにあらざれば、戯言戯語の価直を越ゆること能はざるべし。  然はあれども尤も多く情熱の必要を認むるはトラゼヂ...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 十二號」女學雜誌社    1893(明治26)年9月9日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 哲学必ずしも人生の秘奥を貫徹せず、何ぞ況んや善悪正邪の俗論をや。秘奥の潜むところ、幽邃なる道眼の観識を待ちて無言の冥契を以て、或は看破し得るところもあるべし、然れども我は信ぜず、何者と雖この「秘奥」の淵に臨みて其至奥に沈める宝珠を探り得んとは。  むかし文覚と称する一傲客、しばしが程この俗界を騒がせたり。彼は凡ての預言者的人物の如く生涯真知己を得ることなく、傲逸不遜磊落奇偉の一人物として、幾百年の後までも人に謳はれながら、一の批評家ありて其至真を看破し、思想界に紹介するものもなく今日に及びぬ。時なるかな、今年の文学界漸く森厳になりて、幾多思想上の英雄墳墓を出て中空に濶歩する好時機と共に、渠も亦た高峻なる批評家天知子の威筆に捕はれて...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三二八號」女學雜誌社    1892(明治25)年9月24日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 繊巧細弱なる文学は端なく江湖の嫌厭を招きて、異しきまでに反動の勢力を現はし来りぬ。愛山生が徳川時代の文豪の遺風を襲ひて、「史論」と名くる鉄槌を揮ふことになりたるも、其の一現象と見るべし。民友社をして愛山生を起たしめたるも、江湖をして愛山生を迎へしめたるも、この反動の勢力の欝悖したる余りなるべし。  反動は愛山生を載せて走れり。而して今や愛山生は反動を載せて走らんとす。彼は「史論」と名くる鉄槌を以て撃砕すべき目的を拡めて、頻りに純文学の領地を襲はんとす。反動をして反動の勢を縦にせしむるは余も異存なし、唯だ反動を載せて、他の反動を起さしむるまで遠く走らんとするを見る時に、反動より反動に漂ふの運命を我が文学に与ふるを悲しまざる能はず。愛...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 二號」女學雜誌社    1893(明治26)年2月28日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年1月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043455", "作品名": "人生に相渉るとは何の謂ぞ", "作品名読み": "じんせいにあいわたるとはなんのいいぞ", "ソート用読み": "しんせいにあいわたるとはなんのいいそ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文學界\u3000二號」女學雜誌社、1893(明治26)年2月28日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-03-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https:/...
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 人間の外に人間を研究すべき者なし、ライフある者の外にライフを研究すべき者なし。近頃ライフの一字、文学社会に多く用ひらるゝに至れるを見て、ひそかに之を祝せんとするの外、豈敢て此大問題を咄嗟の文章にて解釈することをせんや。然るに吾人が爰にて物好きにも少しくライフの意義に就きて言はんと欲するに至りたるは、決して偶然の事にあらざるなり。  ライフの一字に真正の解釈を加へんとせば、汎く哲学、宗教、及び諸科学に渉りて之を窮めざるべからず、何となれば、もろ〳〵の学芸は実にライフを解釈するが為に成立すと云ふとも不可なき程なればなり。然れども、吾人素より哲学者にあらず、曷んぞ斯かる面倒なる事を議論するの志あらんや。然るに近頃吾人を評難する者あり、吾...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 五號」文學界雜誌社    1893(明治26)年5月31日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年3月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043485", "作品名": "人生の意義", "作品名読み": "じんせいのいぎ", "ソート用読み": "しんせいのいき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文學界\u3000五號」文學界雜誌社、1893(明治26)年5月31日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-05-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/0001...
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 心して我文学史を読む者、必らず徳川氏文学中に粋なる者の勢力おろそかならざりしを見む。巣林子以前に多く此語を見ず、其尤も盛なるは八文字屋以後にありと云ふべし。彼の所謂洒落本こんにやく本及び草紙類の作家が惟一の理想とし、武道の士の八幡摩利支天に於けるが如く此粋様を仰ぎ尊みたるの跡、滅す可からず。  粋様の系統を討ぬれば、平安朝の風雅之れが遠祖なり。語を換へて言へば、日本固有の美術心より自然的屈曲を経て茲に至りしなり、而して其尤も近き親は、戯曲と遊廓とにてありしなり。戯曲の事は他日論ず可ければ此には擱きつ。遊廓と粋様の関係に就きては一言するも無益ならざるべし。抑も当時武門の権勢漸く内に衰へて、華美を競ひ遊惰を事とするに及びて、風教を依持...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「透谷全集」博文館    1902(明治35)年10月1日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2006年4月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045969", "作品名": "粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ", "作品名読み": "すいをろんじて「きゃらまくら」におよぶ", "ソート用読み": "すいをろんしてきやらまくらにおよふ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「透谷全集」博文館、1902(明治35)年10月1日", "分類番号": "NDC 910", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-05-20T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aoz...
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 事業を賤しむといふ事は「文学界」が受けたる攻撃の一なり。而して此攻撃たるや、恐らく余が「人生相渉論」を誤読したるより起りたる者なるべしと思へば、爰に一言するの止むべからざるを信ずるなり。  余は先づ「事業」とは如何なる者なりやを問はざるべからず。次に文学は「事業」といふ標率を以て論ずべき者なりや否やを、問はざる可からず。  余は文学といふ女神は、寧ろ老嬢として終るも、俗界の神なる「事業」に嫁することを否むべしと言ひたり。その斯く言ひたるは、「事業」を以て文学を論ずる標率とするを難じたるものにして、事業其れ自身に就きて何とも云はざりしなり。然るに横鎗の人々は己れの事業を侵されしかの如く、頻りに此事に向つて鋒先を揃へて攻戦するは豈奇怪...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 五號」文學界雜誌社    1893(明治26)年5月31日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年3月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043486", "作品名": "賤事業弁", "作品名読み": "せんじぎょうべん", "ソート用読み": "せんしきようへん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文學界\u3000五號」文學界雜誌社、1893(明治26)年5月31日", "分類番号": "NDC 910", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-05-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000...
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     兵甲と国家  兵甲を以て国威を張るは変なり。兵甲は寧ろ国家を弱め、人心を危うするに足るも、以て大に国力を養ひ、列国に覇たらしむる者にあらず。国の本真は気にあり。気若し備はらば業挙らむ。凡そ業なくして勇を談ずるは、仮勇なり。業は以て地歩を堅うし、仮勇は以て自らを危うす。      請ふ米国を視よ  米国は迺ち業の国なり。始めより肯て国際間の武威を弄せず。而して各国之を畏る。何が故に畏るゝ、曰く、国民の元気充溢し、百般の業の上に其真勇を睹ればなり。敢て兵甲を以て天下に傲らず、而も諸強国に対峙して遜色ある事なし。      彼は迫らず  蓋し彼は悠々として強弱の外に濶歩しつゝあるなり。彼は匠工なり、建設する事を心に留め...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 一號」平和社(日本平和會)    1892(明治25)年3月15日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年5月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043483", "作品名": "想断々(2)", "作品名読み": "そうだんだん(2)", "ソート用読み": "そうたんたん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「平和\u3000一號」平和社(日本平和會)、1892(明治25)年3月15日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-06-26T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards...
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     労苦界と戦争  ヱデンの園にアダム、神の禁を破りし時、ヱホバは彼に告げて言ひけるは「汝は一生の間、労苦して其食を得ん」と。蓋し労苦の世界は即ち戦争の世界なり。労苦よりして凡悩も利慾も迷盲も生ずるなれ、是等の者は即ち人生の戦争に対する肥糧なり。苟くも労苦あらん限り、戦争の精神は尽きぬなる可し。然れども、      戦争に対する偉人の理想  は、労苦を以て敢て喪敗せざるなり。高潔崇高なる詩人哲学者は悉く、戦争の邪念を悪む、而して英雄中の英雄なる基督に至りては堅く万民の相戦ふを禁じたり。凡て人を詛ふの念を誡しめ、己れを詛ふ者を愛するをもて天国の極意とせり。是れを、極めて簡にして而して極めて大なる理想と言はざらめや。人若し我...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 一號」平和社(日本平和會)    1892(明治25)年3月15日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年5月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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自序  余は遂に一詩を作り上げました。大胆にも是れを書肆の手に渡して知己及び文学に志ある江湖の諸兄に頒たんとまでは決心しましたが、実の処躊躇しました。余は実に多年斯の如き者を作らんことに心を寄せて居ました。が然し、如何にも非常の改革、至大艱難の事業なれば今日までは黙過して居たのです。  或時は翻訳して見たり、又た或時は自作して見たり、いろいろに試みますが、底事此の篇位の者です。然るに近頃文学社界に新体詩とか変体詩とかの議論が囂しく起りまして、勇気ある文学家は手に唾して此大革命をやつてのけんと奮発され数多の小詩歌が各種の紙上に出現するに至りました。是れが余を激励したのです。是れが余をして文学世界に歩み近よらしめた者です。  余は此「...
底本:「北村透谷選集」岩波文庫、岩波書店    1997(平成9)年11月16日第27刷 入力校正:浜野 智 1998年9月4日公開 2002年1月8日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "000834", "作品名": "楚囚之詩", "作品名読み": "そしゅうのし", "ソート用読み": "そしゆうのし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1998-09-04T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/card834.html", "人物ID": "000157", "姓"...
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 悲劇必らずしも悲を以て旨とせず、厭世必らずしも厭を以て趣とせず、別に一種の抜く可からざる他界に対する自然の観念の存するものあり、この観念は以て悲劇を人心の情世界に愬へしめ、厭世を高遠なる思想家に迎へしむ、人間ありてよりこの観念なきはあらず、或は遠く或は近く、大なるものあり、小なるものあり、宗教この観念の上に立ち、詩想この観念の糧に活く。  この観念は世界の普通性なり、而してこの観念あると共に離る可からざるものは、この観念に二元性ある事なり。或は善悪と云ひ、或は陰陽と言ひ、或は光暗と云ふが如き、ペルシヤのむかしに、アームズトの神、アハメルの神ありし如く、イスラエルのむかしに、ヱホバ神と悪魔とを対比せし如く、顕著なると顕著ならざると、...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「國民之友 一六九號~一七〇號」民友社    1892(明治25)年10月13日、23日 ※「シヱークスピア」と「シヱーキスピーア」の混在は底本通りです。 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045243", "作品名": "他界に対する観念", "作品名読み": "たかいにたいするかんねん", "ソート用読み": "たかいにたいするかんねん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「國民之友\u3000一六九號~一七〇號」民友社、1892(明治25)年10月13日、23日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-11-14T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www....
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 多くの仏学者中に於てルーソー、ボルテールの深刻なる思想を咀嚼し、之を我が邦人に伝へたるもの兆民居士を以て最とす。「民約篇」の飜訳は彼の手に因りて完成せられ、而して仏国の狂暴にして欝怏たる精神も亦た、彼に因りて明治の思想の巨籠中に投げられたり。彼は思想界の一漁師として漁獲多からざるにあらず、社会は彼を以て一部の思想の代表者と指目せしに、何事ぞ、北海に遊商して、遠く世外に超脱するとは。  世、兆民居士を棄てたるか、兆民居士、世を棄てたるか、抑も亦た仏国思想は遂に其の根基を我邦土の上に打建つるに及ばざるか。居士が議会を捨てたるは宜なり、居士が自由党を捨てたるも亦た宜なり、居士は政治家にあらず、居士は政党員たるべき人にあらず、然れども何が...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 十三號」女學雜誌社    1893(明治26)年9月23日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046552", "作品名": "兆民居士安くにかある", "作品名読み": "ちょうみんこじいずくにかある", "ソート用読み": "ちようみんこしいすくにかある", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「評論\u3000十三號」女學雜誌社、1893(明治26)年9月23日", "分類番号": "NDC 121", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-12-28T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozor...
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 沈痛、悲慘、幽悽なる心理的小説「罪と罰」は彼の奇怪なる一大巨人(露西亞)の暗黒なる社界の側面を暴露して餘すところなしと言ふべし。トルストイ、ツルゲネーフ等の名は吾人久しく之を聞けども、ドストイヱフスキーの名と著書に至りては吾文界に之を紹介するの功不知庵に多しと言はざる可からず。  露國は政治上に立て世界に雄視すと雖もその版圖の彊大にして軍備の充實せる丈に、民人の幸福は饒ならず、貴族と小民との間に鐵柵の設けらるゝありて、自からに平等を苦叫する平民の聲を起し、壯烈なる剛腸屡ば破天荒の暴圖を企て、シベリアの霜雪をして自然の威嚴を失はしむ。  乳を混ぜざる濃茶を喜び、水を割らざる精酒を飮み、沈鬱にして敢爲、堅く國立の宗教を持し、深く祖先の...
底本:「明治文學全集 29 北村透谷集」筑摩書房    1976(昭和51)年10月30日初版第1刷発行 初出:「女學雜誌 三三四號」女學雜誌社    1892(明治25)年12月17日 入力:石波峻一 校正:小林繁雄 2005年9月10日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045397", "作品名": "罪と罰(内田不知庵訳)", "作品名読み": "つみとばつ(うちだふちあんやく)", "ソート用読み": "つみとはつうちたふちあんやく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌」1892(明治25)年12月17日", "分類番号": "NDC 984", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-09-25T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/c...
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 不知庵主人の譯に成りし罪と罰に對する批評仲々に盛なりとは聞けるが、病氣其他の事ありて余が今日までに見たるは僅に四五種のみ、而して其中にも學海先生が國民の友に掲げられし評文は特に見目立ちて見えぬ。余は平生學海居士が儒家らしき文氣と馬琴を承けたる健筆に欽羨するものなるが、罪と罰に對する居士の評文の餘りに居士を代表する事の多きには聊か當惑するところなき能はざりし。  居士は、人命犯には必らず萬已むを得ざる原因ある事を言ひ、財主の老婆が、貪慾を憤ふるのみの一事にして忽ち殺意を生ずるは殺人犯の原因としては甚だ淺薄なりと言ひ、而して自ら辨じて言はるゝは、作者の趣意は、殺人犯を犯たる人物は、その犯後いかなる思想を抱くやらんと心を用ひて推測り精微...
底本:「明治文學全集 29 北村透谷集」筑摩書房    1976(昭和51)年10月30日初版第1刷発行 初出:「女學雜誌 三三六號」女學雜誌社    1893(明治26)年1月14日 入力:石波峻一 校正:小林繁雄 2005年9月10日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045396", "作品名": "「罪と罰」の殺人罪", "作品名読み": "「つみとばつ」のさつじんざい", "ソート用読み": "つみとはつのさつしんさい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌」1893(明治26)年1月14日", "分類番号": "NDC 984", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-09-25T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/00...
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     (第一)  焉馬、三馬、源内、一九等の著書を読む時に、われは必らず彼等の中に潜める一種の平民的虚無思想の絃に触るゝ思あり。就中一九の著書「膝栗毛」に対してしかく感ずるなり。戯文戯墨の毒弊は世俗の衆盲を顛堕せしのみかは、作者自身等をも顛堕し去んぬ。然れども其罪は之を独り作者に帰すべきにあらず。当時の時代、豈作者の筆頭を借りて、其陋醜を遺存せしものにあらずとせんや。  徳川氏の封建制度は世界に於て完全なるものゝ一と称せらる、然れども武門の栄華は平民に取りて幸福を剥脱する秋霜なり、盆水一方に高ければ、他方に低からざるを得ず、権力の積畳せし武門に自からなる腐爛生じ、而して平民社界も亦た敗壊し終れり、一方は盛栄の余に廃れ、他方は失...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三二二號~三二四號」女學雜誌社    1892(明治25)年7月2日、16日、30日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2004年10月31日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043442", "作品名": "徳川氏時代の平民的理想", "作品名読み": "とくがわしじだいのへいみんてきりそう", "ソート用読み": "とくかわししたいのへいみんてきりそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-11-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/card4...
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「聖くまことなる心、無極の意と相繋がる意、世の雑染を離れて神に達するの眼、是等の三要素を兼有する詩人文客の詞句を聴くは楽しむ可きかな。」  とは英人某がトルストイ伯を崇めたる賛辞なり。露国が思想の発達に於て欧洲諸隣国に後れたる事、既に久し。其記者が仏独の旧形を摸倣するに甘んじて、創造の偉功を顕はさゞる事も、亦た已に久しと云ふべし。然れども形勢俄かに一変し、自国の胸底より文学の新気運湧き出でゝ、今や其勢力充実して殆ど全欧を凌駕せんとするに至れり。而して斯る気運を喚起せしめたるもの種々あるべしと雖、トルストイ伯の出現こそ、露文学の為に万丈の光焔を放つものなれ。彼は露国の平民的生活を描く作家なり、彼は明らかに吾人に向つて、露国には中等民族...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 二號」平和社(日本平和會)    1892(明治25)年5月18日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2008年1月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046584", "作品名": "トルストイ伯", "作品名読み": "とるすといはく", "ソート用読み": "とるすといはく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「平和\u3000二號」平和社(日本平和會)、1892(明治25)年5月18日", "分類番号": "NDC 980", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2008-02-13T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/...
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 人間は到底枯燥したるものにあらず。宇宙は到底無味の者にあらず。一輪の花も詳に之を察すれば、万古の思あるべし。造化は常久不変なれども、之に対する人間の心は千々に異なるなり。  造化は不変なり、然れども之に対する人間の心の異なるに因つて、造化も亦た其趣を変ゆるなり。仏教的厭世詩家の観たる造化は、悉く無常的厭世的なり。基督教的楽天詩家の観たる造化は、悉く有望的楽天的なり、彼を非とし、此を是とするは余が今日の題目にあらず。夫れ斯の如く変化なき造化を、斯の如く変化ある者とするもの、果して人間の心なりとせば、吾人豈人間の心を研究することを苟且にして可ならんや。  造化は人間を支配す、然れども人間も亦た造化を支配す、人間の中に存する自由の精神は...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 五號」文學界雜誌社    1893(明治26)年5月31日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2004年10月31日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 真贄の隣に熱意なる者あり。人性の中に若し「熱意」なる原素を取去らば、詩人といふ職業は今日の栄誉を荷ふこと能はざるべし。すべての情感の底に「熱意」あり。すべての事業の底に熱意あり。凡ての愛情の底に熱意あり。若しヒユーマニチーの中に「熱意」なるもの無かりせば、恐らく人間は歴史なき他の四足動物の如くなりしなるべし。  労働と休眠は物質的人間の大法なり、然れども熱意は眠るべき時に人を醒ますなり。快楽と安逸は人間の必然の希望なり、然れども熱意は快楽と安逸とを放棄して、苦痛に進入せしむることあり。生は人の欲する所、死は人の恐るゝ所、然るに熱意は人をして生を捐て、死を甘受する事あらしむ。人間の事恒に「己」を繞りて成れり、己を去つて人間の活動なし...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 六號」女學雜誌社    1893(明治26)年6月17日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年3月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 万物自から声あり。万物自から声あれば自から又た楽調あり。蚯蚓は動物の中に於て醜にして且つ拙なるものなり。然れども夜深々窓に当りて断続の音を聆く時は、人をして造化の生物を理する妙機の驚ろくべきものあるを悟らしむ。自然は不調和の中に調和を置けり。悲哀の中に欣悦を置けり。欣悦の裡に悲哀を置けり。運命は人を脅かすなり、而して人を駆つて怯懦卑劣なる行為をなさしむるなり。情慾は人を誘ふなり、而して人を率ゐて我儘気随のものとなすなり。自然は広漠たる大海にして、人生は廷々たる浮島に似たり。風浪常時に四囲を襲ひ来りて、寧静なる事は甚だ稀なり。四節は追はずして駿馬の如くに奔馳し、草木の栄枯は輪なくして廻転する車の如し。自然は常変なり、須臾も停滞するこ...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 十四號」女學雜誌社    1893(明治26)年10月7日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 空を望んで駿駆する日陽、虚に循つて警立する候節、天地の運流、いつを以て極みとはするならん。  朝に平氏あり、夕に源氏あり、飄忽として去り、飄忽として来る、一潮山を噬んで一世紀没し、一潮退き尽きて他世紀来る、歴史の載するところ一潮毎に葉数を減じ、古苔蒸し尽して英雄の遺魂日に月に寒し。  嗟吁人生の短期なる、昨日の紅顔今日の白頭。忙々促々として眼前の事に営々たるもの、悠々綽々として千載の事を慮るもの、同じく之れ大暮の同寝。霜は香菊を厭はず、風は幽蘭を容さず。忽ち逝き忽ち消え、邈冥として踪ぬべからざるを致す。  墳墓何の権かある。宇内を睥睨し、日月を叱咜せし、古来の英雄何すれぞ墳墓の前に弱兎の如くなる。誰か不朽といふ字を字書の中に置きて...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 一號」女學雜誌社    1893(明治26)年1月31日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年5月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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     復讐  人間の心界に、頭は神にして脚は鬼なる怪物棲めり。之を名けて復讐と云ふ。渠は人間の温血を吸ひて人間の中に生活する無形動物にして、古へより渠が為に身を誤りたるもの、渠によりて志を得たるもの、渠の為に苦しみたるもの、渠の為に喜びたるもの、挙て数ふべからざるなり。  見よ、戯曲は渠を以て上乗の題目とするにあらずや、見よ、世間は渠を以て尊ふとむべきものとするにあらずや、而して復讐なるもの、そのいかなる意味の復讐に関らず、人間の心血を熱して、或は動物の如く、或は聖者の如く、人を意志の世界に覚めしむるはあやし、あやし。  復讐は快事なり。人間は到底、平穏無事なるものにあらず。罵らるれば怒り、撃たるれば憤る、而して、其の怒ること...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 一二號」平和社(日本平和會)    1893(明治26)年5月3日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2004年10月31日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 關根正直氏の手に成りたる「小説史稿」は兔に角日本文學史の第一着手なり。吾人は氏の「史稿」に於いて甚だ失望する所なきにあらず、然れども是は敢へて氏に責む可き所ならず、却て氏に許す可きは、氏が此の事業に一鞭を着け、以て吾人を勵まし、且つ吾人をして大に據る所を得せしめし事にあり。  今ま歐洲の歴史は、文學史の討究によりて局面を一變せんとす、眞正の内部、將さに從來の外部と共に照然たらんとす。文學は空漠たる想像より成れるにあらず、實は「時代」なる者の精勉して鑄作せる紀念碑なり、是れ、吾人が前に開かれたる一大卷の吾人をして讀解し、尋竅せしむる者にあらざらんや。徒らに著書の新古を鑑し、著家の系統を尋ね、其品行を説き、若くは古代の暗室に入りて其著...
底本:「透谷全集 第一卷(全三卷)」岩波書店    1950(昭和25)年7月15日第1刷発行    1956(昭和31)年2月25日第3刷発行 底本の親本:「女學雜誌 第二百十一號」女學雜誌社    1890(明治23)年5月3日発兌 初出:「女學雜誌 第二百十一號」女學雜誌社    1890(明治23)年5月3日発兌 ※初出時の署名は「透谷」です。 入力:木越治 校正:Juki 2019年4月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "058491", "作品名": "文学史の第一着は出たり", "作品名読み": "ぶんがくしのだいいっちゃくはいでたり", "ソート用読み": "ふんかくしのたいいつちやくはいてたり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000第二百十一號」女學雜誌社、1890(明治23)年5月3日", "分類番号": "NDC 910", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-05-16T00:00:00", "最終更新日": "2019-04-26T00:00:00", "図書カードURL": "http...
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 過ぬる明治二十二年の秋、少数の有志相会して平和会なる者を組織せり。爾来同志を糾合し、相共に此問題を研究し来りしが、時機稍到来し、茲に一小雑誌を刊行して我が同胞に見ゆるの栄を得たるを謝す。  平和の文字甚だ新なり、基督教以外に対しては更に斬新なり。加ふるに世の視聴を聳かすに便ならぬ道徳上の問題なり。然れども凡そ宗教の世にあらん限り、人の正心の世界を離れぬ限り、吾人は「平和」なる者の必須にして遠大なる問題なるを信ず。吾人は苟くも基督の立教の下にあつて四海皆兄弟の真理を奉じ、斯の大理を破り邦々相傷ふを以て、人類の恥辱之より甚しきはなしと信ず。吾人は言ふ、基督の立教の下にありと。然れども吾人、豈偏狭自ら甘んぜんや、凡そ道義を唱へ、正心を尊...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「平和 一號」平和社(日本平和會)    1892(明治25)年3月15日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年1月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 余が松島に入りたるは、四月十日の夜なりき。「奥の細道」に記する所を見れば松尾桃青翁が松島に入りたる、明治と元禄との差別こそあれ、同じく四月十日の午の刻近くなりしとなり。余が此の北奥の洞庭西湖に軽鞋を踏入れし時は、風すさび樹鳴り物凄き心地せられて、仲々に外面に出でゝ島の夜景を眺むべき様もなかりき。然れどもわれ既に扶桑衆美の勝地にあり。わが遊魂いかでか飄乎としてそゝり出で、以て霊境の美神と相通化せざるを得んや。  寝床われを呑み、睡眠われを無何有郷に抱き去らんとす。然れ雖われは生命ある霊景と相契和しつゝあるなり。枕頭の燈火、誰が為に広室を守るぞ。憫むべし、燈火は客を守るべき職に忠信にして、客は臥中にあれども既に無きを知らざるなり。燈火...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三一四號」女學雜誌社    1892(明治25)年4月23日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2008年1月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 われかつて徒然草を読みける時、撰みて持つべき友の中に病ひある人を数へたり。いかにも奥ゆかしき悟りきつたる言葉と思ひて友にも語りける事ありけり。然るに頃者米国の宣教師某を訪ひたる時、其卓上に日常の誡めを記せるを見る。其中に言へる事あり、病ある人を友として親しむ可からずと。  われ曾つて英人なる宣教師某と相携へて花を艶陽の中ばに観る。わが花を賞するの心はわが時を惜む情より多かりければ、花王樹下に佇立する事稍しばらくせり。某即ち怪んで曰く、何事の面白きぞ。余曰く、この花の面白からずと思はるゝ所ありや、われはこの花に対して魂魄既に花心にありと言ひけるに、驚いて再び曰ふ、さてもさても日本は風趣に富める国かな。われら実際的の国民なる英人に取り...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「函東會報告誌 二三號」小田原・函東會    1892(明治25)年4月19日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年5月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 一夕友と与に歩して銀街を過ぎ、木挽町に入らんとす、第二橋辺に至れば都城の繁熱漸く薄らぎ、家々の燭影水に落ちて、はじめて詩興生ず。われ橋上に立つて友を顧りみ、同に岸上の建家を品す。或は白堊を塗するあり、或は赤瓦を積むもあり、洋風あり、国風あり、或は半洋、或は局部に於て洋、或は全く洋風にして而して局部のみ国風を存するあり。更に路上の人を観るに、或は和服、或は洋服、フロックあり、背広あり、紋付あり、前垂あり。更にその持つものを見るに、ステッキあり、洋傘あり、風呂敷あり、カバンあり。爰に於て、われ憮然として歎ず、今の時代に沈厳高調なる詩歌なきは之を以てにあらずや。  今の時代は物質的の革命によりて、その精神を奪はれつゝあるなり。その革命は...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「文學界 十號」文學界雜誌社    1893(明治26)年10月30日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2007年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046555", "作品名": "漫罵", "作品名読み": "まんば", "ソート用読み": "まんは", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文學界\u3000十號」文學界雜誌社、1893(明治26)年10月30日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-12-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/card465...
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     (上)  人生何すれぞ常に忙促たる、半生の過夢算ふるに遑なし。悲しいかな、我も亦た浮萍を追ひ迷雲を尋ねて、この夕徒らに往事を追懐するの身となれり。  常に惟ふ、志を行はんとするものは必らずしも終生を労役するに及ばず。詩壇の正直男(ゴールドスミス)この情を賦して言へることあり。 I still had hopes, my long vexation past, Hero to return――and die at home at last.  浮世に背き微志を蓄へてより、世路酷だ峭嶢、烈々たる炎暑、凄々たる冬日、いつはつべしとも知らぬ旅路の空をうち眺めて、屡、正直男と共に故郷なつかしく袖を涙にひぢしことあり。  われは...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三二五號、三二七號」女學雜誌社    1892(明治25)年8月13日、9月10日 入力:kamille 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年10月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045475", "作品名": "三日幻境", "作品名読み": "みっかげんきょう", "ソート用読み": "みつかけんきよう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000三二五號、三二七號」女學雜誌社、1892(明治25)年8月13日、9月10日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-11-14T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr...
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     一、快楽と実用  明治文学も既に二十六年の壮年となれり、此歳月の間に如何なる進歩ありしか、如何なる退歩ありしか、如何なる原素と如何なる精神が此文学の中に蟠りて、而して如何なる現象を外面に呈出したるか、是等の事を研究するは緊要なるものなり、而して今日まで未だ此範囲に於て史家の技倆を試みたるものはあらず、唯だ「国民新聞」の愛山生ありて、其の鋭利なる観察を此範囲に向けたるあるのみ。余は彼の評論に就きて満足すること能はざるところあるにも係らず、其気鋭く胆大にして、幾多の先輩を瞠若せしむる技倆に驚ろくものなり。余や短才浅学にして、敢て此般の評論に立入るべきものにあらねども、従来「白表女学雑誌」誌上にて評論の業に従事したる由来を以て...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「評論 一號~四號」女學雜誌社    1893(明治26)年4月8日、4月22日、5月6日、5月20日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年1月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043445", "作品名": "明治文学管見", "作品名読み": "めいじぶんがくかんけん", "ソート用読み": "めいしふんかくかんけん", "副題": "(日本文学史骨)", "副題読み": "(にほんぶんがくしこつ)", "原題": "", "初出": "「評論\u3000一號~四號」女學雜誌社、1893(明治26)年4月8日、4月22日、5月6日、5月20日", "分類番号": "NDC 910", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-03-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図...
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 もし我にいかなる罪あるかを問はゞ、我は答ふる事を得ざるなり、然れども我は牢獄の中にあり。もし我を拘縛する者の誰なるを問はゞ、我は是を知らずと答ふるの外なかるべし。我は天性怯懦にして、強盗殺人の罪を犯すべき猛勇なし、豆大の昆虫を害ふても我心には重き傷痍を受けたらんと思ふなるに、法律の手をして我を縛せしむる如きは、いかでか我が為し得るところならんや。政治上の罪は世人の羨むところと聞けど我は之を喜ばず、一瞬時の利害に拘々して、空しく抗する事は、余の為す能はざるところなればなり。我は識らず、我は悟らず、如何なる罪によりて繋縛の身となりしかを。  然れども事実として、我は牢獄の中にあるなり。今更に歳の数を算ふるもうるさし、兎に角に我は数尺の...
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房    1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行 初出:「女學雜誌 三二〇號」女學雜誌社    1892(明治25)年6月4日 入力:kamille 校正:鈴木厚司 2005年5月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043505", "作品名": "我牢獄", "作品名読み": "わがろうごく", "ソート用読み": "わかろうこく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「女學雜誌\u3000三二〇號」女學雜誌社、1892(明治25)年6月4日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-06-26T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000157/...
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 人として一つの癖はあるものよ、吾れにはゆるせ敷島の道。……これはよく落語家が枕にふる言葉ですが、……無くて七癖、有つて四十八癖、といつて誰にもあるんでせうが、さうなるとわたしには、夜更をするのが癖の一つでした、……わたしの若い時分の時間でいふと十二時頃寝るのは罪悪のやうな気がしたもんです。それで居て朝寝坊は厭ひでしたから……恐らくまづ寝る間は三四時が関の山でしたらう、……最も現在でも一晩や二晩の徹夜なら平気です。でも此のせつでは五六時間は眠ります。が、まあ夜ふかしの方でせう。そのかはり昔から枕につくと殆どすぐ眠れます。  さういつた訳合ひで、昼間随時に居眠ることが多いんです。稽古場の読合せなどの時さへ一寸でも間があると、台詞書を膝...
底本:「日本の名随筆 別巻10 芝居」作品社    1991(平成3)年12月25日第1刷発行    1997(平成9)年5月20日第4刷発行 底本の親本:「わが芸談」和敬書店    1952(昭和27)年11月 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2011年11月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "052207", "作品名": "癖", "作品名読み": "くせ", "ソート用読み": "くせ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 775", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2012-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001537/card52207.html", "人物ID": "001537", "姓": "喜多村", ...
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大阪にて 喜多村緑郎 『明治のおもかげ』という随筆を書いたから、序文を書け、という手紙を留守宅から回送して来たのだが、日も迫っているし、旅にいる身の、内容を知るすべもない。しかしいずれの方面に筆をとられたものとしても、これこそ作者独得の擅場、充分蘊蓄を披瀝されることを望ましく思う。単に『明治のおもかげ』という題名を聞いただけでも、わたしに取っては頗るなつかしい極みである。  そもそも、金升君との雅交の始めは、わたしが二十一の年だったから、顧みると既に六十年を越している。……勿論いまだ役者などになっていない時なのだった。その頃、松永町の鶯亭庵へ集った……というより押かけていた八人組という、われわれの群れがあって毎日毎夜といっていいほ...
底本:「明治のおもかげ」岩波文庫、岩波書店    2000(平成12)年6月16日第1刷発行    2009(平成21)年11月11日第2刷発行 底本の親本:「明治のおもかげ」山王書房    1953(昭和28)年11月30日発行 初出:「明治のおもかげ」山王書房    1953(昭和28)年11月30日発行 ※底本における表題「序にかえて」に、底本名を補い、作品名を「「明治のおもかげ」序にかえて」としました。 入力:川山隆 校正:Juki 2013年6月25日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったの...
{"作品ID": "052465", "作品名": "「明治のおもかげ」序にかえて", "作品名読み": "「めいじのおもかげ」じょにかえて", "ソート用読み": "めいしのおもかけしよにかえて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「明治のおもかげ」山王書房、1953(昭和28)年11月30日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2013-08-04T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-16T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aoz...
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男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。それの年(承平四年)のしはすの二十日あまり一日の、戌の時に門出す。そのよしいさゝかものにかきつく。ある人縣の四年五年はてゝ例のことゞも皆しをへて、解由など取りて住むたちより出でゝ船に乘るべき所へわたる。かれこれ知る知らぬおくりす。年ごろよく具しつる人々(共イ)なむわかれ難く思ひてその日頻にとかくしつゝのゝしるうちに夜更けぬ。 廿二日(にイ有)、和泉の國までとたひらかにねがひたつ。藤原の言實船路なれど馬の餞す。上中下ながら醉ひ過ぎていと怪しくしほ海のほとりにてあざれあへり。 廿三日、八木の康教といふ人あり。この人國に必ずしもいひつかふ者にもあらざる(二字ずイ)なり。これぞ正しきやう...
底本:「國文大觀 日記草子部」明文社    1906(明治39)年1月30日初版発行    1909(明治42)年10月12日再版発行 ※このファイルは、日本文学等テキストファイル(http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/bungaku.htm)で公開されたものを、青空文庫形式にあらためて作成しました。 ※校正には、「國文大觀 日記草子部」板倉屋書房、1903(明治36)年10月27日発行を使用しました。 ※割り注を()に入れました。 ※「現在通行字体の〈し〉」「志に由来する変体仮名」ともに、「し」で入力しました。 ※「楫」と「※[#「楫+戈」、第3水準1-86-21]」の混在については底本通りに...
{"作品ID": "000832", "作品名": "土佐日記", "作品名読み": "とさにっき", "ソート用読み": "とさにつき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 915", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1997-10-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000155/card832.html", "人物ID": "000155", "姓": ...
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      一  君よ。明治三十四年、僕が始めて社会党の創立に関係した時、安部磯雄、片山潜の二君は、年齢においても学識においても、長者として尊敬して居たが、親密な友情を有つて居たのは、幸徳秋水であつた。彼は僕より二つ年下であつた。幸徳を友人にしてくれたのは石川半山だ。  僕がまだ二十代で、故郷で弁護士をして居た時、石川は土地の新聞主筆として招かれて来た。彼が好んで自分の師友の評判をする時、「幸徳秋水」の名前を頻りと吹聴した。  石川が始めて故郷岡山を出て東京へ遊学の折、当時東洋のルソーと謳はれて居た中江兆民を、大阪に訪問した。その兆民先生のムサくるしい玄関で、彼は始めて幸徳を見た。幸徳はなた豆煙管をたゝいて、時勢を論じたさうだ。明...
底本:「近代日本思想大系10 木下尚江集」筑摩書房    1975(昭和50)年7月20日初版第1刷発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:林 幸雄 校正:松永正敏 ファイル作成: 2006年9月18日公開 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043238", "作品名": "幸徳秋水と僕", "作品名読み": "こうとくしゅうすいとぼく", "ソート用読み": "こうとくしゆうすいとほく", "副題": "――反逆児の悩みを語る――", "副題読み": "――はんぎゃくじのなやみをかたる――", "原題": "", "初出": "「朝日新聞」1933(昭和8)4月15~20日", "分類番号": "NDC 312 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "ht...
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   兇徒嘯聚の疑獄起る 二月十三日、利根の河畔に於ける足尾鉱毒被害民と憲兵警官との衝突を報道せんことは、余が此の旅行の主たる目的には非ざりしなり。図らざりき余が重きを置かざりし此の出来事は、今や却て案外なる大疑獄を惹起せんとは。 直接に中央政府に向て請願せんと企てたる彼等二千五百の鉱毒被害民は、憲兵警官の為めに解散せられたり。而して之と同時に彼等人民は「兇徒嘯聚罪」の告発を受けたり。 十五日、栃木県足利郡久野村の村長稲村與一、室田忠七、設楽常八、群馬県邑楽郡渡良瀬村の村長谷富三郎、多々良村の亀井明次、西谷田村の荒井嘉衛等は各〻自宅より拘引されたり。 十六日、前橋地方裁判所の嘱託を受けたる各地管轄の区裁判所判事は目星き村民の家宅に...
底本:「現代日本文學大系 9 徳冨蘆花・木下尚江集」筑摩書房    1971(昭和46)年10月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第13刷発行 初出:「毎日新聞」    1900(明治33)年2月19日 入力:林 幸雄 校正:小林繁雄 2006年5月7日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "042765", "作品名": "鉱毒飛沫", "作品名読み": "こうどくひまつ", "ソート用読み": "こうとくひまつ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「毎日新聞」1900(明治33)年2月19日", "分類番号": "NDC 312 368 071 561", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-06-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000525/...
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(二月十五日夜發) 昨夕俄かに「足尾鑛毒問題」解釋の重任を負ひぬ、工業國たるべき日本に於て斯かる疑問の何時までも氷解せざるを見て、余はかねてより我が國運の障碍と思ひければ、敢へて之を承諾したりしなり、 兎に角先づ今回の被害地人民出京紛擾の情况を一瞥せばやと思ひければ、吹上停車場より腕車を舘林に驅ることゝはなしぬ、タマに出る子は風に逢ふとかや、我が指して行く日光、足尾の雪山颪は土沙を捲きて壯丁二個も挽きぞワズろふばかりなり、顧れば淺間の山は雪の白衣を被りて蒼黒なる上州群峯の上に半腹以上を現はしつ、飛びかふ雲に見へつ隱れつするイト面白ろし、 利根の舟橋打ち渡ればコヽなん被害地人民と憲兵巡査との間に開かれたる最近の古戰場なり、抑も彼等被...
底本:「木下尚江著作集第1巻」明治文献    1972(昭和47)年2月10日第1刷発行 初出:「毎日新聞 第八八二一號」    1900(明治33)年2月17日 入力:林 幸雄 校正:小林繁雄 2006年7月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043025", "作品名": "佐野だより", "作品名読み": "さのだより", "ソート用読み": "さのたより", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「毎日新聞」1900(明治33)年2月17日", "分類番号": "NDC 312 368 071 561", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000525/car...
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   幸福なる思ひ出  若き友よ。  僕が島田三郎先生を語るとなれば、直ぐに一つの場面が目に浮ぶ。  大正十二年、この年は正月早々から先生は身心の疲労で、議会へも出なされず一切来客を謝絶して、番町の自邸で静養して居られた。かゝる時、僕のやうな世務に全く無交渉の者は幸福で、時々お邪魔して、自由にお話することが出来た。  或日、先生は、この社会多事の時に、病体で引き籠つて居るのが如何にも恥づかしいと言はれるので、僕は強く頭を振つて反対した。 『僕は然うは思ひません。先生が過去幾十年、言論文章で奮闘なされたよりも、今日病んで黙つて居なさる方が、何程大事業か知れないと、僕は信じて居ます』 『それは、どう云ふわけですか』 と先生は不思議さう...
底本:「近代日本思想大系10 木下尚江集」筑摩書房    1975(昭和50)年7月20日初版第1刷発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:林 幸雄 校正:松永正敏 ファイル作成: 2006年9月18日公開 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043239", "作品名": "自由の使徒・島田三郎", "作品名読み": "じゆうのしと・しまださぶろう", "ソート用読み": "しゆうのしとしまたさふろう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「中央公論」1933(昭和8)年9月号", "分類番号": "NDC 289", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000...
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   若き人々に語る 若き友よ。 「田中正造」――今日突然にこんな名を呼んでも、君には何事かわからない。すこし古い人ならばわかる筈だ。彼等は「鉱毒の田中」「直訴の田中」かうした記憶を朧ろげながら尚ほ何処かに持つて居るだらう。この人の演説、真に獅子吼の雄弁を必ず思ひ出すであらう。然し、僕が今この人の名を呼ぶのはこれ等古い人達の苔蒸した記憶を掻き起す為めでは無い。君のやうな、全く名をさへ知らぬ若い人達に、新たにこの人の生涯を聞いて欲しいためだ。    足尾銅山鉱毒の惨害 矢張り「鉱毒の田中」から始める。 明治二十四年から三十四年に至るこの十年の間、この人は、衆議院の壇上で「足尾鉱毒事件」と云ふものを叫んだ。而かも、遂に議会の理解を...
底本:「現代日本文學大系 9 徳冨蘆花・木下尚江集」筑摩書房    1971(昭和46)年10月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版13刷発行 初出:「中央公論 昭和八年四月号」    1933(昭和8)年4月 入力:林 幸雄 校正:小林繁雄 2006年5月7日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "042766", "作品名": "政治の破産者・田中正造", "作品名読み": "せいじのはさんしゃ・たなかしょうぞう", "ソート用読み": "せいしのはさんしやたなかしようそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「中央公論\u3000昭和八年四月号」1933(昭和8)年4月", "分類番号": "NDC 289 561", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-06-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://w...
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十八日發   樹蔭生 十六日夜は渡良瀬河畔に父老と語り明かしつ、明けの日も爲めにいたく時をうつしぬ、堤上の茂竹枯れて春は來ぬれど鶯も鳴かずなど訴ふるを聽て  鶯も鳴かずなりぬる里人は       なにをしるしに春は知るらん 佐野の停車場に滊車を待ちぬるに山風に雪の降り來ぬれば  袖さへに拂はでむかし忍ぶかな       佐野のわたりの雪の夕暮  覺束な、明日入る路や絶へぬらん       足尾の山はみ雪降るなり 十七日、日光に泊りぬ、奧羽地方より雪ふみ分けて來ぬる參詣の旅客にて賑はし、 今朝起き出でぬれば雪積もること三尺、美觀言はん方なし  まれに來し人の爲めとや山姫は       雪の白綾かつぎしぬらん 去れど心さす方のある身に...
底本:「木下尚江著作集第1巻」明治文献    1972(昭和47)年2月10日第1刷発行 初出:「毎日新聞 第八八二六號」    1900(明治33)年2月22日 入力:林 幸雄 校正:小林繁雄 2006年7月19日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043026", "作品名": "雪中の日光より", "作品名読み": "せっちゅうのにっこうより", "ソート用読み": "せつちゆうのにつこうより", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「毎日新聞」1900(明治33)年2月22日", "分類番号": "NDC 312 368 071 561", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/...
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昨年の秋『日蓮論』の附録にする積りで書きながら、遂に載せずに今日に及べるもの        一  日蓮を書いて居ると、長髪白髯の田中正造翁が何処からともなく目の前に現はれる。予は折々、日蓮を書いて居るのか、翁を書いて居るのかを忘れて仕舞つた。予が始めて翁を知つたのは最早十年以前。其時は丁度六十であつた。田中正造と云へば足尾鉱毒問題の絶叫者として、議会の名物男と歌はれて居た。予は其の議会の演説と云ふものを、一度も聴かなかつたが、速記録で読むと、銅山主や政府当局に対する罵詈悪口が砲弾の如く紙上に鳴動して、関東の野人が、満面朱を注いで怒号する様子がアリ〳〵と見えた。然れども其の罵詈悪言の余りに猛烈な為めに、予は却て鉱毒問題其物に対し...
底本:「近代日本思想大系10 木下尚江集」筑摩書房    1975(昭和50)年7月20日初版第1刷発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:林 幸雄 校正:松永正敏 ファイル作成: 2006年9月18日公開 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043240", "作品名": "大野人", "作品名読み": "だいやじん", "ソート用読み": "たいやしん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 312 368 561", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000525/card43240.html", "人物ID": "00052...
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 君よ。  これは人に見せる品物では無いが、先年始めて、普通選挙法が議会を通過した時、君は信州に居て、普通選挙運動の発端を、調査した縁故があるので、御一笑に供する。  明治三十年、僕が中村太八郎君に伴うて、始めて普通選挙請願運動を発起し、事務所を設け趣意書を頒布し、愈々活動に入らうとした時、不図した事件の勃発の為め、八月十日、二人共に松本監獄へ入監の身となつた。一年半、翌年十二月、東京控訴院の判決を受けて出獄するや、僕は故山を棄てゝそのまゝ東京在住の身となり、空想にのみ走る身は普通選挙と云ふだけでは物足らず、遂に三十四年社会民主党の創立に関係することになつてしまつたが、実行の気根と智慧とに富む中村君は、飽くまでも普通選挙一点張りで進...
底本:「近代日本思想大系10 木下尚江集」筑摩書房    1975(昭和50)年7月20日初版第1刷発行 入力:林 幸雄 校正:松永正敏 ファイル作成: 2006年9月18日公開 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043241", "作品名": "鉄窓の歌", "作品名読み": "てっそうのうた", "ソート用読み": "てつそうのうた", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 312 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000525/card43241.html", "人物ID": "0005...
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序に代ふ  是れより先き、平民社の諸友切りに「火の柱」の出版を慫慂せらる、而して余は之に従ふこと能はざりし也、  三月の下旬、余が記名して毎日新聞に掲げたる「軍国時代の言論」の一篇、端なくも検事の起訴する所となり、同じき三十日を以て東京地方裁判所に公判開廷せらるべきの通知到来するや、廿八日の夜、余は平民社の編輯室に幸徳、堺の両兄と卓を囲んで時事を談ぜり、両兄曰く君が裁判の予想如何、余曰く時非なり、無罪の判決元より望むべからず、両兄曰く然らば則ち禁錮乎、罰金乎、余曰く余は既に禁錮を必期し居る也、然れ共幸に安んぜよ、法律は遂に余を束縛すること六月以上なる能はざるなり、且つや牢獄の裡幽寂にして尤も読書と黙想とに適す、開戦以来草忙として...
底本:「筑摩現代文学大系 5 徳冨蘆花・木下尚江・岩野泡鳴集」筑摩書房    1977(昭和52)年8月15日初版第1刷発行    1981(昭和56)年11月15日初版第2刷発行 初出:「毎日新聞」    1904(明治37)年1月1日~3月20日 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※「六《むづ》ヶ|敷《しい》」と「六《むつ》ヶ|敷《し》い」と「六《むつ》ヶ|敷《しい》」の混在は、底本通りです。 ※「何人」に対するルビの「なんぴと」と「なんびと」の混在は、底本通りです。 入力:kompass 校正:松永正敏 2004年8月9日作成 2016年2月22日修正 青空文庫作成...
{"作品ID": "003507", "作品名": "火の柱", "作品名読み": "ひのはしら", "ソート用読み": "ひのはしら", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「毎日新聞」1904(明治37)年1月1日~3月20日", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-09-09T00:00:00", "最終更新日": "2016-02-22T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000525/card3507.htm...
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   直訴の日  君よ。  僕が聴いて欲しいのは、直訴後の田中正造翁だ。直訴後の翁を語らうとすれば、直訴当日の記憶が、さながらに目に浮ぶ。  明治三十四年十二月十日。この日、僕が毎日新聞の編輯室に居ると、一人の若い記者が顔色を変へて飛び込んで来た。 『今、田中正造が日比谷で直訴をした』  居合はせた人々から、異口同音に質問が突発した。 『田中はドウした』 『田中は無事だ。多勢の警官に囲まれて、直ぐ警察署へ連れて行かれた』  翁の直訴と聞いて、僕は覚えず言語に尽くせぬ不快を感じた。寧ろ侮辱を感じた。  やがて石川半山君が議会から帰つて来た。開院式に参列したので、燕尾服に絹帽だ。僕は石川と応接室のヴエランダへ出て、直訴に対する感想を語...
底本:「近代日本思想大系 10 木下尚江集」筑摩書房    1975(昭和50)年7月20日初版第1刷発行 初出:「中央公論」    1933(昭和8)年9月 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:林 幸雄 校正:小林繁雄 2006年7月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043027", "作品名": "臨終の田中正造", "作品名読み": "りんじゅうのたなかしょうぞう", "ソート用読み": "りんしゆうのたなかしようそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「中央公論」1933(昭和8)年9月", "分類番号": "NDC 312 368 289 561", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-08-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-11-29T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/...
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 伊豆の東海岸は伊太利亜のソレントオやアマルフイイの一帯と景色が好く似てゐます。断崖の下に少しばかりの渚があり、それにさざなみが打ち寄せ打ち返すさまなどは、アトラアニなどがさうでした。そういへばソレントオは熱海、ポジタノは舞鶴、またヹズヸオの煙は大島の御神火に相応します。たゞ西洋は建物ががつしりとしてゐて、殊に伊太利亜では谷の低地よりも山頂、山腹に家を建てならべる習慣があつて、建築を入れた景観は向うの方に軍配が上がりませう。  小生は高等学校時代にはじめて伊東熱海間の山道を歩いて見たのですが(以前は伊東から東京に出るには普通大仁を経過したのです)、こんなに好い景色を今まで知らずにゐたかと驚きました。その後新道が開け、今では自動車が通...
底本:「日本随筆紀行第一〇巻 静岡|山梨 仰ぎ見る富士は永遠」作品社    1988(昭和63)年10月10日第1刷発行 底本の親本:「木下杢太郎全集 第十四巻」岩波書店    1982(昭和57)年9月21日発行 初出:「サンデー毎日 第九年第三十五號(日本百景號)」    1930(昭和5)年8月3日発行 ※初出時の表題は「伊東温泉」です。 入力:浦山敦子 校正:円野 2022年9月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "057376", "作品名": "伊豆伊東", "作品名読み": "いずいとう", "ソート用読み": "いすいとう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「サンデー毎日\u3000第九年第三十五號(日本百景號)」1930(昭和5)年8月3日", "分類番号": "", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2022-10-15T00:00:00", "最終更新日": "2022-09-29T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/ca...
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 夕暮れがた汽船が小さな港に着く。  點燈後程經た頃であるからして、船も人も周圍の自然も極めて蕭かである。その間に通ふ靜かな物音を聞いてゐると、かの少年時の薄玻璃の如くあえかなる情操の再び歸り來るのではないかと疑ふ。  艀舟から本船に荷物を積み入るる人々の掛聲は殊に興が深い。 「やつとこ、さいやの、どつこいさあ。」 「やれこら、さよな――。」  と、その「さよな」といふ所から、揃つた聲の調子が急に下つて行くのを聞くのは、眞に悲哀の極みである。諸ろの日本俗謠の暗潮をなす所の一種の哀調が、亦此裡に聞き出されるからである。  強ひて形容すれば、銅青石の溶けてなせるが如き冷き冬の夜の空氣の内に――その空氣は漁村の點々たる燈火をもにじませ、將...
底本:「現代日本紀行文学全集 東日本編」ほるぷ出版    1976(昭和51)年8月1日初版発行 初出:「三田文学」    1911(明治44)年6~7月号 入力:林 幸雄 校正:松永正敏 2004年5月1日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004663", "作品名": "海郷風物記", "作品名読み": "かいきょうふうぶつき", "ソート用読み": "かいきようふうふつき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「三田文学」1911(明治44)年6~7月号", "分類番号": "NDC 914 915", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-05-31T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/c...
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   ……願ふは極秘、かの奇しき紅の夢……(「邪宗門」) 性慾の如くまつ青な太陽が金色の髪を散して、 異教の寺の晩鐘の呻吟のやうに高らかに、然しさびしく、 河の底へ……底へ……底へ……と沈む時に、 幻想の黒い帆前は 滑つて行く……音もなく…… 明るい灰色の硝子の外で、 氏は倚れる窗の後で――。 されば其光の顫音は悲しく、 氏の銅色の額に反射した。――恰ら 青の鶯が落日の檣の森で鳴くやうに…… 雲の彼方の蘆薈花咲く故郷へ、故郷へ、ねえ、故郷へ……。 氏は卓の一角から罪色紅の Curaçao を取つて 薄玻璃の高脚杯に垂した……重く……緩かに……。 その懐しい錯心のやさしい呼吸づかひの中に、 赤、紺青、土耳古珠色、「黄なつぽい」Se...
底本:「書物の王国13 芸術家」国書刊行会    1998(平成10)年10月25日初版第1刷発行 底本の親本:「木下杢太郎全集1」岩波書店    1981(昭和56)年5月 入力:土屋隆 校正:川山隆 2006年12月30日作成 2007年1月28日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "001396", "作品名": "北原白秋氏の肖像", "作品名読み": "きたはらはくしゅうしのしょうぞう", "ソート用読み": "きたはらはくしゆうしのしようそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-01-28T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card1396.htm...
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 予も亦明晩立たうと思ふ。今は名古屋に往く人を見送る爲めに新橋に來てゐるのだ。待合室は發車を待つ人の不安な情調と煙草の烟とに滿たされて居る。  商標公報といふ雜誌の綴を取り上げて見る。此に予は一種の實用的な平民藝術を味ふ事が出來て大に面白かつた。殺鼠劑の商標に猫が手帕で涙を拭つて居る圖は見覺えのあるものであるが、PARK 公園などと云ふ石鹸は餘程名に困つた物と見える。それでも二つの概念を心理學的に乃至藝術的に聯絡させてゆくと、俳句などとは違つたまた一種の興味あるのを知るに至る。其他化粧品に菖蒲と翡翠との組合せがある。怪しい洋人の移寫したやうな字で「サムライ印」とかいふ騎馬武者の木綿織物の商標は、予をして漫ろに横濱のサムライ商會の店頭...
底本:「現代日本紀行文学全集 西日本編」ほるぷ出版    1976(昭和51)年8月1日初版発行 底本の親本:「地下一尺集」叢文閣    1921(大正10)年刊行 初出:「三田文学」    1910(明治43年)5月号 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※「チヤン」と「チャン」の混在は底本の通りにしました。 ※誤植を疑った箇所については、「現代紀行文學全集 第四巻 西日本篇」修道社、1958(昭和33)年4月15日発行を参照しました。 入力:林 幸雄 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年9月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文...
{"作品ID": "004702", "作品名": "京阪聞見録", "作品名読み": "けいはんぶんけんろく", "ソート用読み": "けいはんふんけんろく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「三田文学」1910(明治43年)5月号", "分類番号": "NDC 915", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-09-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card470...
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