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 東京の市街を、土曜日の午後あたり、明日は日曜だといふ安心で、と見かうみ、ぶらぶら歩るくほど楽しみなものはない。たとへば神田の五軒町あたりは、広い道の両側に柳の並木、日にきらめける鉄条の上をけたたましい電車の嵐、と思つて一寸道傍の店先を覗くと赤く汚れた温い硝子戸を越してお七、吉三の古い錦絵、その隣を乳房をあらはに髪を梳る女、銘は何れも歌麿筆としてある。  全体が青い調子の横に長い方形の景色絵がある。広重といふ落款で鳴海の景とある。代赭の色の、はた白に浅葱の縞模様、特産の鳴海綾は並び立つ太物屋の軒に吊り下つてゐる。その前の街道をば荷を付けた馬が通る。旅人めく一群の人が通る。  古い錦絵の包蔵した情調は音楽の如く散歩する人の心を襲ふ。一...
底本:「日本の名随筆 別巻95 明治」作品社    1999(平成11)年1月25日第1刷発行 底本の親本:「木下杢太郎全集 第七巻」岩波書店    1981(昭和56)年6月 入力:浦山敦子 校正:noriko saito 2007年8月10日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046889", "作品名": "市街を散歩する人の心持", "作品名読み": "しがいをさんぽするひとのこころもち", "ソート用読み": "しかいをさんほするひとのこころもち", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-09-12T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card468...
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 八月の曇つた日である。一方に海があつて、それに鉤手に一連の山があり、そしてその間が平地として、汽車に依つて遠國の蒼渺たる平原と聯絡するやうな、或るやや大きな町の空をば、この日例になく鈍い緑色の空氣が被つてゐる。  大きな河が海に入る處では盛んな怒號が起つた。末廣がりになつた河口までは大河は全く平滑で、殆ど動とか力とかいふ感じを與へない、鼠一色の靜止の死物であるやうに見えて居ながら、一旦海の境界線と接觸を持つと忽ち一帶の白浪が逆卷き上り、そして(遠くから見て居ると)それが崩れかけた頃になつて(近くで聽いたならば、さぞ恐しい音響であらうと思はれるほどの)音響が、遠くの雷鳴のやうに響いた。  然しながらこの自然現象は、毎日毎日同樣に繰り...
底本:「現代日本文學全集 17 小山内薫 木下杢太郎 吉井勇集」筑摩書房    1968(昭和43)年4月5日初版発行 入力:伊藤時也 校正:小林繁雄 2001年1月19日公開 2005年12月5日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "001392", "作品名": "少年の死", "作品名読み": "しょうねんのし", "ソート用読み": "しようねんのし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-01-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card1392.html", "人物ID": "000120", ...
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 字引で見ると、すかんぽの和名は須之であると云ふ。東京ではすかんぽといふ。われわれの郷里ではととぐさと呼んだ。漢名は酸模または※(くさかんむり/(歹+食))蕪である。日本植物圖鑑ではすいばと云ふのが普通の名稱として認められてゐる。今はさう云ふ事が億劫であるから、此植物に關する本草學的の詮索は御免を蒙る。  震災前、即ち改築前の大學の庭には此草が毎年繁茂して、五月なかばには紅緑の粒を雜へた可憐な花の穗が夕映のくさむらに目立つた。學生として僕ははやく此草の存在に注意した。其花の莖とたんぽぽの冠毛の白い硝子玉とを配して作つたスケッチは齋藤茂吉君の舊い歌集の揷繪として用ゐられた。  此植物は僕には舊いなじみである。まだ小學校に上つて間もな...
底本:「現代日本文學全集 17 小山内薫 木下杢太郎 吉井勇集」筑摩書房    1968(昭和43)年4月5日初版発行 入力:伊藤時也 校正:小林繁雄 2001年1月24日公開 2005年12月5日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "001393", "作品名": "すかんぽ", "作品名読み": "すかんぽ", "ソート用読み": "すかんほ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-01-24T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card1393.html", "人物ID": "000120", "姓": "...
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 登場人物 童子、順礼等        舞妓白萩 千代            伊留満喜三郎 常丸            学頭 菊枝            所化長順 老いたる男及び行人二三   所化乗円、其他学僧 うかれ男          老いたる侍 永禄末年のこと。但風俗は必しも史実に拠らず、却つて今人の眼に親うするものとす。秋の日、暮がた。後景は京都四条坊なる南蛮寺の高き石垣。そが中ほどよりやや上手に寄りて門。その扉開かれてあり。門内の広場に木立、そを透きて仄かに堂見ゆ。門前の街道に童子等集る。 童子等。(唄。) 夕やけ小やけ。 摩訶陀の池の さんしよの魚は きらきら光る。 玻璃のふらすこ ちんたの酒は きらきら光る。...
底本:「現代日本文學大系 25 与謝野寛・与謝野晶子・上田敏・木下杢太郎・吉井勇・小山内薫・長田秀雄・平出修 集」筑摩書房    1970(昭和45)年4月5日初版第1刷発行    1985(昭和60)年11月10日初版第13刷発行 ※底本に見る送り仮名の不統一は、ママとした。 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:福岡茂雄 校正:松永正敏 1998年6月28日公開 2006年3月20日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランテ...
{"作品ID": "000626", "作品名": "南蛮寺門前", "作品名読み": "なんばんじもんぜん", "ソート用読み": "なんはんしもんせん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911 912", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "1998-06-28T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card626.html", "人物ID": "0...
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 北原君。折角の御頼みだが、僕は十数年来の日記帳手帳の大半を東京の震災で失つたからパンの会の詳しいことはいま確実に思ひ出すことが出来なくなつた。それでも丁度明治四十二年と、四十三年との日記が残つてゐたから、そのうちに記されてゐる分だけを拾ひ出して見よう、尤も日記もあまりていねいには附けてないから脱けてゐるところが多い。  四五年前まではあの時代を懐しいことに思ひ、時々回想したが、今はもうあまり時が隔つてしまひ、大して興味を感じない。  何でも明治四十二年頃、石井、山本、倉田などの「方寸」を経営してゐる連中と往き来し、日本にはカフエエといふものがなく、随つてカフエエ情調などといふものがないが、さういふものを一つ興して見ようぢやないかと...
底本:「日本の名随筆 別巻3 珈琲」作品社    1991(平成3)年5月25日発行 底本の親本:「木下杢太郎全集 第一三巻」岩波書店    1982(昭和57)年7月 入力:加藤恭子 校正:菅野朋子 2000年11月22日公開 2005年12月5日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "001394", "作品名": "パンの会の回想", "作品名読み": "パンのかいのかいそう", "ソート用読み": "はんのかいのかいそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 910 916", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2000-11-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card1394.html", "人物ID...
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 新村博士の随筆集「ちぎれ雲」が出版書肆から届けられた。其表紙の絵をば著者と書房とから頼まれて作つたのであるから、其包を開くときにまた異やうの楽みがあつた。新村博士の頼となれば何を措いても諾はなければなるまいと思ひ、五月の雨雲に暗い日曜日の朝の事であつた、紙を捜して図案を考へた。小さい庭には小手鞠の花がしをらしく咲き乱れてゐた。隣の庭には枇杷の実がやうやく明るみかけてゐた。  小手鞠、雪柳は、わたくしは夏の花よりも秋の枯葉を好む。お納戸、利久、御幸鼠、鶯茶、それにはなほ青柳の色も雑つて、或は虫ばみ、或はねぢれたのもあり、斑らに濃い地面の色の上に垂れ流れるのは自らなる絵模様である。東北では気候が遅れるから、夏初め其少しく蕾を現はしたこ...
底本:「日本の名随筆 別巻87・装丁」作品社    1998(平成10)年5月25日発行 底本の親本:「木下杢太郎全集 第一八巻」岩波書店    1983(昭和58)年2月発行 入力:加藤恭子 校正:菅野朋子 2000年10月30日公開 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "001395", "作品名": "本の装釘", "作品名読み": "ほんのそうてい", "ソート用読み": "ほんのそうてい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2000-10-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000120/card1395.html", "人物ID": "000120", ...
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台所の片隅から吹いてくる あの風ももう秋だ 白い皿の 新豆腐のようにおどろきやすいこころよ 裏の林にきて しばらく夕焼をながめている 川瀬の音 秋風の音 子どものために わくら葉ひろつてふところにする わくら葉にも美しい夕焼がある もう走り穂がかぞえられ みちばたにこぼれ生えの刀豆も 青い莢を垂れている 一列にうす紅い実がならんでいる
底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社    1970(昭和45)年4月15日初版発行    1979(昭和54)年11月20日新訂版発行 入力:hitsuji 校正:きりんの手紙 2022年8月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "060957", "作品名": "新秋の記", "作品名読み": "しんしゅうのき", "ソート用読み": "しんしゆうのき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2022-09-03T00:00:00", "最終更新日": "2022-08-27T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/002088/card60957.html", "人物ID": "002088", "姓": "...
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停車場のプラットホームに 南瓜の蔓が匍いのぼる 閉された花の扉のすきまから てんとう虫が外を見ている 軽便車が来た 誰も乗らない 誰も下りない 柵のそばの黍の葉つぱに 若い切符きりがちよつと鋏を入れる
底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社    1970(昭和45)年4月15日初版発行    1979(昭和54)年11月20日新訂版発行 入力:hitsuji 校正:きりんの手紙 2022年7月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "060958", "作品名": "晩夏", "作品名読み": "ばんか", "ソート用読み": "はんか", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2022-08-04T00:00:00", "最終更新日": "2022-07-27T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/002088/card60958.html", "人物ID": "002088", "姓": "木下", "名": ...
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とある家の垣根から 蔓草がどんなにやさしい手をのばしても あの雲をつかまえることはできない 遠いのだ あんなに手近にうかびながら とある木の梢の 終りの蝉がどんなに小さく鳴いていても すぐそれがわきかえるような激しさに変る 鳴きやめたものがいつせいに目をさますのだ 町の曲り角で 田舎みちの踏切で 私は立ち止つて自分の影を踏む 太陽がどんなに遠くへ去つても あの日石畳に刻みつけられた影が消えてしまつても 私はなお強く 濃く 熱く 今在るものの影を踏みしめる
底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社    1970(昭和45)年4月15日初版発行    1979(昭和54)年11月20日新訂版発行 入力:hitsuji 校正:きりんの手紙 2022年7月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "060959", "作品名": "火の記憶", "作品名読み": "ひのきおく", "ソート用読み": "ひのきおく", "副題": "広島原爆忌にあたり", "副題読み": "ひろしまげんばくきにあたり", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2022-08-06T00:00:00", "最終更新日": "2022-07-27T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/002088/card60959.html", "人物ID"...
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鞭の影が 地図の上に のびたりちぢんだりする 先生の声がとぎれると 虫の音が部屋にみちてくる 学問のたのしさ そしてまた何というさびしさ 本の上に来て 髭をふる しべりあの地図より青いすいつちよよ
底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社    1970(昭和45)年4月15日初版発行    1979(昭和54)年11月20日新訂版発行 入力:hitsuji 校正:きりんの手紙 2022年9月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "060960", "作品名": "夜学生", "作品名読み": "やがくせい", "ソート用読み": "やかくせい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2022-10-27T00:00:00", "最終更新日": "2022-09-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/002088/card60960.html", "人物ID": "002088", "姓": "木下", ...
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 山陰と云つても、東は丹後但馬から西は石見に及んでゐて、區域が廣いからさし當りここでは、但馬の城崎附近を書いて見よう。  又歌になる所と云つても、好い眼さへ持つてゐれば、何處にも詩は見出されるのだから、今は私に興味があつた處をあげてゆくに止める。     城崎温泉  城崎の町は、山陰線が北上して、日本海の海岸へ出ようとする一里ばかり手前で、西へ折れてゐる、其曲り角の處に當つてゐる。  私がここへ行つたのは、大正五年六月の梅雨季だつた。京都から、午後の汽車で立つたが、丹波の國の山間を通過して、だんだん北の方へと走るのは、非常に淋しい氣持だつた。  螢の飛びちがつてゐる峠路や、寂しい停車場前の小さい旅館の灯、大江山へ何里などと書いて...
底本:「現代日本紀行文学全集 西日本編」ほるぷ出版    1976(昭和51)年8月1日初版発行 底本の親本:「木下利玄全集 散文篇」弘文堂書房    1940(昭和15)年初版発行 入力:林 幸雄 校正:門田裕志、小林繁雄 2005年9月9日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004703", "作品名": "山陰の風景", "作品名読み": "さんいんのふうけい", "ソート用読み": "さんいんのふうけい", "副題": "――歌になるところ――", "副題読み": "――うたになるところ――", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 915", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-09-21T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000526/card47...
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 足守川にかゝつて居る葵橋を渡る頃は秋晴の太陽が豐年の田圃に暗く照つて居た。八幡樣の山では松の木立の下に雜木がほのかに黄ばんで櫨の木の紅葉の深紅なのが一本美しく日に透いて居るのが長閑に見えた。河原には、未だ枯れぬ秋の草が野菊交り、色の褪せた死人花交りに未だ青く殘つて居て、親馬についた子馬が其の草を食つて居た。澄んだ細い流れは、日を受けてその間に光つて居た。  隱亡の住んで居る部落を過ぎて山路にかゝる頃から日が曇つた。振りかへると、茂つた宮路山の後の、處々禿げた大きな山の上一帶が何時の間にか暗い灰色になつて、自分たちを威嚇して居る。宮路山から足守の町にかけてはうすい霧とも云へぬ程の水蒸氣がぼうつと下つて居る。 「天氣は大丈夫かしら」と...
底本:「定本 木下利玄全集 散文篇」臨川書店    1977(昭和52)年9月10日第1刷発行 初出:「白樺」    1911(明治44)年11月 入力:土屋隆 校正:伊藤時也 2010年7月24日作成 2011年5月12日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046671", "作品名": "山遊び", "作品名読み": "やまあそび", "ソート用読み": "やまあそひ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「白樺」1911(明治44)年11月", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-08-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000526/card46671.html", "人物I...
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       一 悪夢よ、私の安息を乱さないでくれ。 闇の力よ、私を悩まさないでくれ。  印度という国が英国よりも優越している二、三の点のうちで、非常に顔が広くなるということも、その一つである。いやしくも男子である以上、印度のある地方に五年間公務に就いていれば、直接または間接に二、三百人の印度人の文官と、十一、二の中隊や連隊全部の人たちと、いろいろの在野人士の千五百人ぐらいには知られるし、さらに十年間のうちには彼の顔は二倍以上の人たちに知られ、二十年ごろになると印度帝国内の英国人のほとんど全部を知るか、あるいは少なくとも彼らについてなんらかを知るようになり、そうして、どこへ行ってもホテル代を払わずに旅行が出来るようになるであろ...
底本:「世界怪談名作集 下」河出文庫、河出書房新社    1987(昭和62)年9月4日初版発行    2002(平成14)年6月20日新装版初版発行 入力:門田裕志、小林繁雄 校正:大久保ゆう 2004年9月26日作成 2008年8月4日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043469", "作品名": "世界怪談名作集", "作品名読み": "せかいかいだんめいさくしゅう", "ソート用読み": "せかいかいたんめいさくしゆう", "副題": "12 幻の人力車", "副題読み": "12 まぼろしのじんりきしゃ", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 933 908", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-10-31T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/card...
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 X市在住土工達の親方コブセの噂はかねがね耳にはさんでいたが、私がじかに彼と会ったのは、金鵄がまだ九銭から十銭になる直前だから、ついこの間のことである。それは同市の会社に勤めているO君から、「来る日曜はこの港市八千余の虫やイスラム教徒達の運動会である。万障繰合せ一度御来参の程を……」云々と誘って来たので、「ではこの虫も是非参加させて頂き度く」云々と返事を出して、勇躍出向いて行った時のことだった。虫やイスラム教徒達というのは、私が以前に芝浦飯場界隈の或る奇妙な老人を小説に書いた際、そういうたとえ方をしたのを思い出し、O君が面白半分そう書いて来たまでのことで、云うまでもなくわが朝鮮移住民達のことを指している。  さてその日X市に着いたの...
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社    1999(平成11)年4月10日第1刷発行    2005(平成17)年8月10日第2刷発行 底本の親本:「金史良全集 ※[#ローマ数字2、1-13-22]」河出書房新社    1973(昭和48)年1月30日初版発行 初出:「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社    1942(昭和17)年1月1日発行 ※()内の任展慧氏による割り注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:富田晶子 2020年2月21日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作に...
{"作品ID": "052313", "作品名": "親方コブセ", "作品名読み": "おやかたコブセ", "ソート用読み": "おやかたこふせ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「新潮\u3000通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2020-03-03T00:00:00", "最終更新日": "2020-02-25T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora...
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 荒潮の渦巻く玄海灘を中心にして、南朝鮮、済州、対馬、北九州等の間には、昔から伝説にもあるように住民の漂流がしばしばあったと云われている。或は最初の文化的な交流というものは、概してこういう漂流民を通じてなされたのであろう。――だが面白いことには文明の今日においてさえ、漂流という形を借りたものが又想像以上にあるのである。それが密航である。  けれど密航と云っても、そうロマンチックなものではなく、それを思いたつまでには余程の勇気と度胸が要ることだろうと思う。玄海灘を挟んでの密航と云えば、旅行券のない朝鮮の百姓達が絶望的になって、お伽話のように景気のいいところと信じている内地へ渡ろうと、危かしい木船や蒸気船にも構わず乗り込むことを云うのだ...
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社    1999(平成11)年4月10日第1刷発行 底本の親本:「金史良全集 4[#「4」はローマ数字、1-13-24]」河出書房新社    1973(昭和48)年4月30日 ※初出:「文芸首都」    1940(昭和15)年8月号 ※底本にあった割り注および注は、編者もしくは編集者が付けたものと判断し、削除した。 ※本文中の「内地」とは、当時日本の統治下にあった朝鮮などの地域との対比の上での日本を指す。 入力:大野晋 校正:大野裕 2001年1月1日公開 2005年12月14日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www....
{"作品ID": "001399", "作品名": "玄海灘密航", "作品名読み": "げんかいなだみっこう", "ソート用読み": "けんかいなたみつこう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文芸首都」1940(昭和15)年8月号", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/card139...
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 内地へ来て以来かれこれ十年近くなるけれど、殆んど毎年二三度は帰っている。高校から大学へと続く学生生活の時分は、休暇の始まる最初の日の中に大抵蒼惶として帰って行った。われながらおかしいと思う程、試験を終えると飛んで宿に帰り、急いで荷物を整えてはあたふたと駅へ向った。それも間に合う一番早い時間の汽車で帰ろうとするのである。  故郷はそれ程までにいいものだろうかと、時々不思議になることがある。成程郷里の平壌には愛する老母が殆んど独りきりで侘住居している。母はむろん、方々へ嫁いだ心美しい姉達や妹達、それから親族の人々も私の帰りを非常に悦んでくれる。庭は広くないが百坪程の前庭と裏庭がある。それが又老母の心遣いから、帰る度に新しい粧をして私を...
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社    1999(平成11)年4月10日第1刷発行 底本の親本:「金史良全集 4[#「4」はローマ数字、1-13-24]」河出書房新社    1973(昭和48)年4月30日 ※初出:「知性」    1941(昭和16)年5月号 ※底本にあった割り注および注は、編者もしくは編集者が付けたものと判断し、削除した。 ※本文中の「内地」とは、当時日本の統治下にあった朝鮮などの地域との対比の上での日本を指す。 入力:大野晋 校正:大野裕 2001年1月1日公開 2005年12月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.ao...
{"作品ID": "001400", "作品名": "故郷を想う", "作品名読み": "こきょうをおもう", "ソート用読み": "こきようをおもう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「知性」1941(昭和16)年5月号", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/card1400.html...
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          一  ある重苦しい雲の垂れこめた日の朝、京城での有名な廓、新町裏小路のとある娼家から、みすぼらしい風采の小説家玄竜がごみごみした路地へ、投げ出されるように出て来た。如何にも彼は弱ったというふうに暫く門前に佇んで、一体どこから本町通りへ抜け出たものかと思案していたが、いきなりつかつかと前の方の小路へはいって行った。けれど界隈が界隈だけに、地に這うような軒並のいがみ合っている入りくんだ小路の、どこをどう通れば抜け出られるか皆目見当がつかない。右に折れるかと思えば又左の方へはいって行く。やっと左から出て行くと又路地は二つに岐れて立ん坊になるといった工合である。何か深い物思いに沈んで彼はてくてく歩き続けたが、袋小路など...
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社    1999(平成11)年4月10日第1刷発行 底本の親本:「金史良全集 1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」河出書房新社    1973(昭和48)年2月 初出:「文芸春秋」    1940(昭和15)年6月号 入力:kompass 校正:土屋隆 2010年1月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "002929", "作品名": "天馬", "作品名読み": "てんま", "ソート用読み": "てんま", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文芸春秋」1940(昭和15)年6月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-03-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/card2929.html", "人物ID": ...
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一  牛車や荷馬車、貨物自動車等のごったがえしている場末の鉄道踏切を渡ると、左の方へ小さな田圃路が折れている。その辺りからは路もぬかるみ、左右の水溜りでは雨蛙が威勢よく騒いでいた。小雨は音もなく夕暮の沼地をしっとりと濡らしている。  二人が、お互い黙々と歩いている中に、もう辺りは暗くなった。いくらか屠殺場の附近がぼうっと薄明るいだけだった。淡い電灯の光芒は水田の稲の穂がしらを白っぽく照らし、跫音に驚いた雨蛙は田の中へ音を立てて飛び込んだ。家畜小屋からは時たま豚がけたたましく金切声を上げていた。  二人は屠殺場の前を通りしなに幾人かの男達に出遇った。 「今帰るだかね」誰かが口ごもりながら呟いた。  元三爺は何やら話したげに心持ち立ち...
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社    1999(平成11)年4月10日第1刷発行    2005(平成17)年8月10日第2刷発行 底本の親本:「金史良全集 ※[#ローマ数字1、1-13-21]」河出書房新社    1973(昭和48)年2月28日初版発行 初出:「文芸首都」    1940(昭和15)年2月号 ※表題は底本では、「土城廊《トソンラン》」となっています。 ※()内の任展慧氏による割り注は省略しました。 ※底本の任展慧氏による注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:富田晶子 2020年2月21日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://ww...
{"作品ID": "052358", "作品名": "土城廊", "作品名読み": "トソンラン", "ソート用読み": "とそんらん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文芸首都」1940(昭和15)年2月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2020-03-03T00:00:00", "最終更新日": "2020-02-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/card52358.html", "人...
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 棒の両端に叺を吊して、ぶらんぶらん担ぎ廻る例の「皆喰爺」が、寮の裏で見える度に、私は尹書房を思い出すのだ。  尹さんは少しはましのチゲ(担具)労働者である。然し土壇場にまで突き込まれて、喜劇ならぬかわった意慾の生活を弄する点では、全く同じいだろう。  早朝起き上ると、尹さんは先ず自分の版図を検分し出すのだ。崩れかかった彼の小屋が、しょんぼり立つ低湿地の一帯は、書房の心の中では、彼の所領と定められている。地面に境界の線を引き廻ったりして、夢中になる。  終日街を出歩いて、三十銭も稼げぬことだろう。今日はどうでした? と夕頃つい出会って、問いかけでもしたら、彼は直様癖の手を頭にやって、 「なあ学生さん」と嘯くのだ。「偉え不景気でがして...
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社    1999(平成11)年4月10日第1刷発行 底本の親本:「金史良全集 1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」河出書房新社    1973(昭和48)年2月28日 ※初出:「佐賀高等学校文科乙類卒業記念誌」    1936(昭和11)年2月 入力:大野晋 校正:大野裕 2001年1月1日公開 2005年12月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "001397", "作品名": "荷", "作品名読み": "に", "ソート用読み": "に", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「佐賀高等学校文科乙類卒業記念誌」1936(昭和11)年2月", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/card1397.html", "人物...
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一  私の語ろうとする山田春雄は実に不思議な子供であった。彼は他の子供たちの仲間にはいろうとはしないで、いつもその傍を臆病そうにうろつき廻っていた。始終いじめられているが、自分でも陰では女の子や小さな子供たちを邪魔してみる。又誰かが転んだりすれば待ち構えたようにやんやと騒ぎ立てた。彼は愛しようともしないし又愛されることもなかった。見るから薄髪の方で耳が大きく、目が心持ち白味がかって少々気味が悪い。そして彼はこの界隈のどの子供よりも、身装がよごれていて、もう秋も深いというのにまだ灰色のぼろぼろになった霜降りをつけていた。そのためかも知れないが、彼のまなざしは一層陰鬱で懐疑的に見える。だが妙なことに彼は自分の居所を決して教えようとはし...
底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社    1999(平成11)年4月10日第1刷発行 底本の親本:「金史良全集 ※[#ローマ数字1、1-13-21]」河出書房新社    1973(昭和48)年2月28日 初出:「文芸首都」    1939(昭和14)年10月号 ※底本の注によれば、9文字欠落した「×××××××××血を流しては、」は、初出では「半兵衛に打たれて血を流しては、」となっています。 入力:大野晋 校正:大野裕 2001年1月1日公開 2012年12月7日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、...
{"作品ID": "001398", "作品名": "光の中に", "作品名読み": "ひかりのなかに", "ソート用読み": "ひかりのなかに", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「文芸首都」1939(昭和14)年10月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/card1398.html...
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 町の北、丘を越えたところにじめじめした荒蕪地がある。その眞中に崩れかかった一坪小屋がしょんぼり坐っていた。潜戸の傍にかけた大きな板には墨字で尹主事と書かれている。  尹主事は朝起きると先ず自分の版圖を檢分した。彼はこの荒蕪地一帶を自分の所領と定めている。汗をはたはた流しながら棒切れで境線を引き廻る。  そこで一先ず小屋に歸り、地下足袋をはきよれよれのゲートルを卷き付ける。擔具を背負うと、再び出て來て、例の名札を十分程もじっと見つめ、それから踵をかえしてすたこらとさも急がしげに町へ出掛けた。――だが未だかつて人は彼の働いているのを見たことがない。 「今日はどうしたね」と夕方つい出會いがしら問いかけでもしたら、彼はにたにたしながら胡麻...
底本:「金史良作品集」理論社    1972(昭和47)年3月新装版第1刷 初出:「故郷」甲鳥書林    1941(昭和16)年刊 入力:ゼファー生 校正:土屋隆 2007年1月3日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004705", "作品名": "尹主事", "作品名読み": "ゆんしゅじ", "ソート用読み": "ゆんしゆし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「故郷」甲鳥書林、1941(昭和16)年", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "旧字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2007-02-09T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/card4705.html", "人物...
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きみは 半島から来たんぢやないですか だうりで すこし変つた顔をしてゐると思つた でも そんな心細い思ひをすることはないですよ ほら 松花江の上流からも はろばろ 南京の街はづれからも 来てゐるではないか スマトラからも ボルネオからも いまには 重慶の防空壕からも やつてくるでせう では みんな並んで下さい おお 砲口のやうだ 整列されてゐる口の横隊 それは 待つてゐる 待ちあぐんでゐる タクトの指さす方向へ 未来へ やがて 声の洪水が発砲されるでせう くりひろげられた 煙幕のやうに 余韻は渦巻いて 渦巻いて流れるでせう このステエジの名を きみは知つている このステエジの名を ぼくも知つている ほら タクトが上つたではないか...
底本:「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房    1996(平成8)年3月31日第1刷発行 底本の親本:「たらちねのうた」人文社    1943(昭和18)年7月 初出:「国民文学」    1942(昭和17)年4月号 ※本文末の編者による語注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:hitsuji 2020年1月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053797", "作品名": "合唱について", "作品名読み": "がっしょうについて", "ソート用読み": "かつしようについて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「国民文学」1942(昭和17)年4月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2020-02-28T00:00:00", "最終更新日": "2020-01-24T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001602/card5379...
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むらは よるのなかにしづみ よるは かへるのなきごゑのなかにしづみ ひがともる ふたつ ひとつ かへるのなきごゑのなかに さて よつぱらひのつきがでてきて しろがねのむらを はきだすのです
底本:「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房    1996(平成8)年3月31日第1刷発行 底本の親本:「たらちねのうた」人文社    1943(昭和18)年7月 入力:坂本真一 校正:hitsuji 2019年4月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053798", "作品名": "空山明月", "作品名読み": "くうざんめいげつ", "ソート用読み": "くうさんめいけつ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-05-10T00:00:00", "最終更新日": "2019-04-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001602/card53798.html", "人物ID": "001602...
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下関でうつた電報から ひねもす 朝鮮漬のにほひがしてならない そして 貴公はやつてきた ムカヘニコナイトマヒゴニナルゾ そして 貴公はやつてきた 天下大将軍のやうな顔をして そして 貴公はやつてきた ぶあつい手を にゆつとつき出した そして 私は案内した 天神の鳩に豆をやつた ふたりの背に 陽ざしがあたたかく 幼年の日が そこにあつた そして 私は案内した とんかつやの ふるぼけた暖簾をくぐると ふるさとの淳朴な風俗が 郷愁のやうに 湯気をたてて流れた そして 貴公は帰つていつた
底本:「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房    1996(平成8)年3月31日第1刷発行 底本の親本:「たらちねのうた」人文社    1943(昭和18)年7月 ※本文末の編者による語注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:hitsuji 2019年4月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053803", "作品名": "善夫孤独", "作品名読み": "ぜんふこどく", "ソート用読み": "せんふことく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-05-10T00:00:00", "最終更新日": "2019-04-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001602/card53803.html", "人物ID": "001602", "...
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雪がちらついてゐる しんみりしづかに 雪がちらついてゐる そのなかを ききとして きみたちは いもうとよ またいとこよ おとうとよ まなびやへと急いでゐる ながいながい 昌慶苑の石垣づたひ 雪がちらついてゐる しんみりしづかに 雪がちらついてゐる ちらついてゐる おとうとよ またいとこよ いもうとよ それはふりかかる きみたちのかたに たわわな髪の毛に ひひとして やぶれ帽子のうへに 十ねんわかくなつて わたくしも きみたちと 足なみをそろへてゐる 雪がちらついてゐる たしか きよねんの十二月八日にも 雪がちらついてゐた あれから一ねん たたかひはパノラマのやうに みんなみの海へひろげられていつた そしてきみたちは ごはんのおい...
底本:「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房    1996(平成8)年3月31日第1刷発行 底本の親本:「たらちねのうた」人文社    1943(昭和18)年7月 初出:「国民文学」    1942(昭和17)年12月号 ※本文末の編者による語注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:hitsuji 2020年1月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053802", "作品名": "待機", "作品名読み": "たいき", "ソート用読み": "たいき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「国民文学」1942(昭和17)年12月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2020-02-28T00:00:00", "最終更新日": "2020-01-24T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001602/card53802.html", "人物ID"...
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年おいた山梨の木に 年おいた園丁は 林檎の嫩枝を接木した 研ぎすまされたナイフををいて うそさむい 瑠璃色の空に紫煙を流した そんなことが 出来るのでせうか やをら 園丁の妻は首をかしげた やがて 躑躅が売笑した やがて 柳が淫蕩した 年おいた山梨の木にも 申訳のやうに 二輪半の林檎が咲いた そんなことも 出来るのですね 園丁の妻も はじめて笑つた そして 柳は失恋した そして 躑躅は老いぼれた 私が死んでしまつた頃には 年おいた 園丁は考へた この枝にも 林檎が実るだらう そして 私が忘られる頃には なるほど 園丁は死んでしまつた なるほど 園丁は忘られてしまつた 年おいた山梨の木には 思出のやうに 林檎のほつぺたが たわわ...
底本:「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房    1996(平成8)年3月31日第1刷発行 底本の親本:「たらちねのうた」人文社    1943(昭和18)年7月 初出:「国民文学」    1942(昭和17)年1月号 ※初出時の表題は「園丁」です。 ※本文末の編者による語注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:hitsuji 2019年8月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053800", "作品名": "一枝について", "作品名読み": "ひとえだについて", "ソート用読み": "ひとえたについて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「国民文学」1942(昭和17)年1月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-09-27T00:00:00", "最終更新日": "2019-08-30T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001602/card53800....
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しだれ柳はおいぼれてゐて 井戸のそこには くつきりと 碧空のかけらが落ちてゐて 閏四月 おねえさま ことしも 郭公が鳴いてゐますね つつましいあなたは 答へないで 夕顔のやうにほほゑみながら つるべをあふれる 碧空をくみあげる つるべをあふれる 伝説をくみあげる 径は麦畑のなかを折れて 庭さきに 杏も咲いてゐる あれはぼくらの家 まどろみながら 牛が雲を反芻してゐる ほら 水甕にも おねえさま 碧空があふれてゐる
底本:「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房    1996(平成8)年3月31日第1刷発行 底本の親本:「たらちねのうた」人文社    1943(昭和18)年7月 初出:「芸術科」    1938(昭和13)年6月号 ※本文末の編者による語注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:hitsuji 2019年8月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053799", "作品名": "古井戸のある風景", "作品名読み": "ふるいどのあるふうけい", "ソート用読み": "ふるいとのあるふうけい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「芸術科」1938(昭和13)年6月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-09-27T00:00:00", "最終更新日": "2019-08-30T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001602/car...
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ひるさがり とある大門のそとで ひとりの坊やが グライダアを飛ばしてゐた それが 五月の八日であり この半島に 徴兵のきまつた日であることを 知らないらしかつた ひたすら エルロンの糸をまいてゐた やがて 十ねんが流れるだらう すると かれは戦闘機に乗組むにちがひない 空のきざはしを 坊やは ゆんべの夢のなかで 昇つていつた 絵本で見たよりも美しかつたので あんまり高く飛びすぎたので 青空のなかで お寝小便した ひるさがり とある大門のそとで ひとりの詩人が 坊やのグライダアを眺めてゐた それが 五月の八日であり この半島に 徴兵のきまつた日だつたので かれは笑ふことができなかつた グライダアは かれの眼鏡をあざけつて 光にぬれ...
底本:「〈外地〉の日本語文学選3 朝鮮」新宿書房    1996(平成8)年3月31日第1刷発行 底本の親本:「たらちねのうた」人文社    1943(昭和18)年7月 初出:「国民文学」    1942(昭和17)年7月号 ※本文末の編者による語注は省略しました。 入力:坂本真一 校正:hitsuji 2019年8月30日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "053801", "作品名": "幼年", "作品名読み": "ようねん", "ソート用読み": "ようねん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「国民文学」1942(昭和17)年7月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-09-27T00:00:00", "最終更新日": "2019-08-30T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001602/card53801.html", "人物ID...
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 左の一篇は木村芥舟翁の稿に係り、時事新報に掲載したるものなり。その文中、瘠我慢の説に関係するものあるを以て、ここに附記す。      福沢先生を憶う 木村芥舟  明治三十四年一月廿五日、予、先生を三田の邸に訪いしは、午後一時頃なり。例の通り奥の一間にて先生及び夫人と鼎坐し、寒暄の挨拶了りて先生先ず口を開き、この間、十六歳の時咸臨丸にて御供したる人来りて夕方まで咄しましたと、夫人に向われ、その名は何とか言いしと。予、夫れは留蔵ならんといえば、先生、それそれその森田留蔵……それより談、新旧の事に及ぶうち、予今朝の時事新報に出たる瘠我慢の説に対する評論についてと題する一篇に、旧幕政府の内情を詳記したるは、いずれ先生の御話に拠りたる...
底本:「明治十年丁丑公論・瘠我慢の説」講談社学術文庫、講談社    1985(昭和60)年3月10日第1刷発行    1998(平成10)年2月20日第10刷発行 底本の親本:「明治十年丁丑公論・瘠我慢の説」時事新報社    1901(明治34)年5月2日発行 ※緒言は石河幹明によるものです。 ※誤り箇所は底本の親本にて確認しました。 ※旧字の「竊」は、底本のママとしました。 入力:kazuishi 校正:田中哲郎 2006年11月7日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんで...
{"作品ID": "046829", "作品名": "瘠我慢の説", "作品名読み": "やせがまんのせつ", "ソート用読み": "やせかまんのせつ", "副題": "05 福沢先生を憶う", "副題読み": "05 ふくざわせんせいをおもう", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 121 312", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-12-14T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001207/ca...
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新世界建設同盟会=恐怖時代=死世界は活世界となる=エーテルの利用=地球を運搬す=最後の通告=地球の末期     上 太陽滅亡の悲惨  太陽及びその他の惑星は、近き将来に於て滅亡せんとす! との一声は、あたかも響きの物に応ずるがごとく、全世界に向って、電光の速かなるように走り報じたのである、太陽の滅亡! と同時に、全地球上の人類は、我住所の絶滅、我あらゆる者の滅尽を連想して、如何に彼らは、多大の恐怖と、悲嘆とに陥ったであろうか、神経の過敏なる者どもは、この一声の警電を耳にしただけで、すでに生気を絶たれたほどであった。  宇宙は不可解なり、されど不可解だけに、また如何なる世界があろうやら知れない、宗教上に説く所の、天堂極楽のごときも...
底本:「懐かしい未来――甦る明治・大正・昭和の未来小説」中央公論新社    2001(平成13)年6月10日第1刷発行 初出:「冒険世界」博文館    1907(明治40)年5月 入力:川山隆 校正:伊藤時也 2006年10月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "046458", "作品名": "太陽系統の滅亡", "作品名読み": "たいようけいとうのめつぼう", "ソート用読み": "たいようけいとうのめつほう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「冒険世界」1907(明治40)5月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-11-30T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001243/c...
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 私事に傾くとすれば恐縮するが、今となつては強ち「私事」でもなく、これも「東京世相」の一つの波の色と化つてゐることだらう。 いろは牛鳥肉店  図は牛肉店「いろは」第八支店の、そこで僕の生育した家の正面を写すものであるが、図の向つて左、家の片影に遠見に走るところが、元柳町の、芸妓じんみちになるところで、家の前面に数本の梧桐が立つてゐる。この梧桐については別の文中に云つた。図の右端のガス燈のあるところが、元、「フラフ」のあつたところである。こゝから右へ居流れて、いつも客待ちの人力車夫が屯ろしてゐた。  家の大屋根から母屋への境界に、恰も軍艦の胴腹のやうにゑぐれたしきりが出来てゐるのは、家を西洋館まがひに見すべく、木のくり型とトタンで...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月14日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047594", "作品名": "「いろは」の五色ガラスについて", "作品名読み": "「いろは」のごしきガラスについて", "ソート用読み": "いろはのこしきからすについて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-17T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card475...
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        一  ぼくは鏑木さんに面と向ふと「先生」と呼ぶ。かげで人との噂や取沙汰に呼ぶ時は、「鏑木さん」または「矢来町」である。かういふ相手方のひとのいつとなく互ひの中で出来る呼び名は、その音や言葉にいひ知れぬ実感のこもつた面白いものであるが、鏑木さんはぼくを「木村サン」といつて下さる。またぼくには鏑木さんを目の前では鏑木さんとは決して呼べないのである。  それは一々どういふわけでといふ、わけは一向感じない。たゞぼくにとつて鏑木さんは常に余人ならぬ「鏑木さん」で、そして「先生」だといふことを述べる。  この鏑木さんは又ぼくにとつて古いお方である。親しく御知り合ひになつてからは二十年経つてゐないにしても、ぼくは今年五十歳である...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047595", "作品名": "鏑木さん雑感", "作品名読み": "かぶらぎさんざっかん", "ソート用読み": "かふらきさんさつかん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382 721", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47595.html", "人物ID...
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 これが森田恒友さんについての書きものならば、日本画とはいはずに水墨とするところであるが、岸田は「水墨」が似合ひでない。のみならず、岸田当人も絹紙に墨の仕事を特別の名で呼んだことがなく、たゞ日本画々々々といふ。森田さん風にこれを水墨といへば、これはまた言外に文人画の意味をこめてゐるやうである。その文人画の意味も岸田の場合には特別の匂ひにならない。  八大山人風のモティフや石濤の仕事あたりを志して――仕事あたりを志して、といふのが、岸田は常に古人の何かしらの仕事を目ざし、その風を志して、仕事を進めたものだつた。それが岸田の作風の一つであつた。これについては後に述べるだらう――墨画の山水などを岸田も描いたことがあつた。その場合には筆を行...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047596", "作品名": "岸田劉生の日本画", "作品名読み": "きしだりゅうせいのにほんが", "ソート用読み": "きしたりゆうせいのにほんか", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382 721", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47596.html...
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 昔の面影を偲ぶやうな今の東京の材料をとの意向だが、存外はづれの「淀橋」といつたやうなところにその「昔の面影」があるやうである。しかし「昔」もこれはまた「大昔」であつて、戦災であたりが広漠となつたために、むかし武蔵野の野川であつた頃にはこの辺かくもあつたらうかと思はせる、早くいへば、地形的回顧を人に与へるものがある。  ――それでは余り「昔」すぎるだらう。  七月一日(昭和廿一年頃)、とりあへず銀座へ出て見た。しかし銀座あたりの「昔」は、よしんば、その形骸が備はつてゐようとも、大正震災この方三変四変してゐるから、遠い回顧の跡は無い。まして今度の変で銀座はまた全然新規のものになつてしまふ様子だ。  昔は「銀座の夜店」といつたが、近頃...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047597", "作品名": "銀座の柳", "作品名読み": "ぎんざのやなぎ", "ソート用読み": "きんさのやなき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47597.html", "人物ID": "001312",...
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 これはしかつめらしい小杉論でもなければ、小杉伝でもない。筆を執ると渋滞することなく手繰れたぼくの「小杉感想」である。ぼくは小杉さんについて矢張り余人よりは知ることが多いやうである。第一平素の交渉なり関心が深い。しかし小杉さんと最も古い頃からの知り合ひかといふと? ぼくが小杉さんに辱知得たのは、所詮春陽会以来、ギリギリ四半世紀の昨今に止どまるから――これはかういつた書き方からいへば短かい月日であるが、しかし四半世紀、二十五年といへば、実は長い年月であつた。――ぼくは小杉さんの「往時」に関しては身親しくは識つてゐない。第一、年が違ふ。  ――実はこの書きものは「小杉さん」などと却つて平素はぼくのその人を呼び馴れない名で書かうよりも、ぢ...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047644", "作品名": "小杉放庵", "作品名読み": "こすぎほうあん", "ソート用読み": "こすきほうあん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 723", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47644.html", "人物ID": "001312",...
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 私は初めて絵を見たのは何が最初か、一寸おぼえていません。多分好んで見たのはポンチ絵だったろうと思います。窓から乞食が麦わらで室内の人の飲みものを飲む絵だとか、団十郎が尻に帆をかけて大阪へ行く? 絵などおぼえています。先是、私の家の二階の広間には大きな墨絵の龍を描いた額(三間幅位のもの)がありましたが、好きではありませんでした。私の室には何にも額はありませんでしたが、兄キの室へ行くと、そこのはいってふり向いた上の壁のところには――あれはどう云う性質のものだったろう? 何しろ石版画には相違ない。或いは、当時の市会議員の像かも知れぬ? そう云う、沢山に人のいる、それが各々小判形の中に、ベタ一面人のいる額がかかっていました。紙が黄ろくくす...
底本:「日本の名随筆 別巻85 少年」作品社    1998(平成10)年3月25日第1刷発行 底本の親本:「木村荘八全集 第七巻」講談社    1982(昭和57)年11月 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年12月12日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049299", "作品名": "少年の食物", "作品名読み": "しょうねんのしょくもつ", "ソート用読み": "しようねんのしよくもつ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 723", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card49299.html", "人物ID": ...
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 僕の描いたこの絵は果して非常に「東京」の感じがするのかどうか、ぼくにはわからない。ぼくには「東京の」といふよりもこの暗い夜景は「銀座近くの」感じがせずに山谷堀でも描いてゐるやうな心持だつたのが実感だ。尤も空の重く垂れた、花ぐもりといふにはまだ寒すぎる晩だつた。この絵を数寄屋橋の上から描いた晩は。  注文は「なるべく東京の感じのするところ」といふのである。ぼくはそれで突差に思ひ出したのは、いつか大阪の友人の斎藤清二郎に聞いた談片で、ぼくが彼に大阪から来てどこが一番東京らしいかと尋ねた時、斎藤は答へて、高架線が新橋から有楽町へかけて乗りこむところが一番「東京」らしい感じがする、水に沿うて都心を走りぬけるところである。一体高架線といふ...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047708", "作品名": "数寄屋橋夜景", "作品名読み": "すきやばしやけい", "ソート用読み": "すきやはしやけい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47708.html", "人物ID": "0013...
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 東京の中は何処も大抵知つてゐるつもりでゐたけれども、燈台もと暗し、洲崎をろくに知らずにゐたことを最近になつて気が付いた。その洲崎へ行つて見て初めて、こんな特殊なところを、今まで殆んど知らずにゐたかと、迂遠に心付いたわけだ。  ――尤も洲崎の概念なり地形等々は子供の頃から聞きおぼえてよく知つてゐる。洲崎と云へば津浪、大八幡楼、広重の絵の十万坪(名所江戸百景の内)と、よく知つてゐる。写生画では小林清親や井上安治の木版画でその昔の有様をとうからなじみだし……却つてその為めに、今日まで実体は知らずにゐても気に留めずにゐたものだらう。地域のせゐでアヴァンテュールには縁無く過ぎた土地だ。  二三日前八丁堀まで写生の用があつて行つた序でに、そろ...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月17日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047709", "作品名": "洲崎の印象", "作品名読み": "すざきのいんしょう", "ソート用読み": "すさきのいんしよう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-17T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47709.html", "人物ID": "001...
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立見の金網  図は「木下杢太郎」こと太田正雄氏の写生画を借りるものであるが(小生模写)、遺憾のことには画中に日附もなければ、場所のかき入れもない。写生の日附は恐らく明治四十年見当であらうし、場所は市村座か新富座か、多分新富座であらう。いふまでもなく立見場の即写であるが、今僕にとつてこの絵の一番の重要性は、この絵に写してある、金網の目の大きさである。これもいふまでもなく、当時の芝居の立見場、一幕見には、大入場――そこからが芝居小屋の場内となる――との境界に、一面に金網が張つてあつたもので、それがいつか立見の人々に押されて帆のやうに大きく半弧を描いて遠く舞台を目がけて脹らんでゐたのは、奇観だつた。この絵の金網は脹らみを持つてゐないやう...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047710", "作品名": "立見の金網について", "作品名読み": "たちみのかなあみについて", "ソート用読み": "たちみのかなあみについて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-17T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47710.html", "人...
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     一、東京「パースペクチヴ」  亡友岸田劉生が昔、そのころ東京日日だつた今の毎日新聞へ、東京繁昌記の画文を寄せて、「新古細句銀座通」=しんこざいくれんがのすぢみち=と題する戯文をものしたことがある。(昭和二年)戯文といつても筋の通つたものだし、殊に絵は出色のものだつたが、仕事の範囲の相当手ひろかつた故人にしては珍らしく、印刷ものにこと寄せて「さしゑ」の仕事を遺したものとしては、これらがあと先きに例のない逸作であつた。  編輯部から嘱されて「東京の風俗」といふものを、その岸田の轍に学び、自分の絵と文とで書くけれども、掲題の「東京の風俗」を僕は「パースペクチヴ」で書くつもりである。「バーズ・アイ・ビュウ」には扱はない。  ――...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2008年12月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047728", "作品名": "東京の風俗", "作品名読み": "とうきょうのふうぞく", "ソート用読み": "とうきようのふうそく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-07T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47728.html", "人物ID": "0...
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「東京の風俗」といふ題名のもとに初めから一冊の本を書いたとすれば、又現在の本とは違つたものになつてゐたかと思はれますが、今全編の校正を終つて「東京の風俗」一本としてこの本を見ますと、題名に不釣合ひのものにはなつてゐなかつたことを感じます。  この本の中の特に「東京の風俗」と大見出しにした節から成る書きものは、元「東京遠近」と題して週刊ものにつづけた文章です。  東京遠近といふ言葉は生硬で意味の通りにくいことを恐れて、東京の風俗とし、それをそのままこの本全体の命題としました。 「東京遠近」とは、東京を広く一般にバーズ・アイ・ビューで見るとは反対に、狭からうとも竪になるべく深くパースペクティーヴに依つて見るといふ程の意味で、この生硬な題...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2008年12月11日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047729", "作品名": "東京の風俗\u3000序", "作品名読み": "とうきょうのふうぞく\u3000じょ", "ソート用読み": "とうきようのふうそくしよ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47729....
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「ハイカラ」という言葉があるが、今の若い人達には既にこの言葉はピンと来ないようで、今の人達にはこれよりも「モダン」であるとか「シック」という言葉がよく通じるようだ。 「モダン」なり「シック」についてはここには触れず、それは又別にいずれ考えて見たいと思っているが、「モダン」「シック」「ハイカラ」。元をただせば、これはいずれも同意語で、僕の考えでは、遡れば幕政の頃の「イキ」というに連なる、年代譲りの言葉――言葉であると同時にその世相風俗――と思っている。速断の誤解さえ警戒すれば「同じもの」と云っておいてもよいだろう。ただその「年代譲り」というところに、変化もあれば、それぞれの特質もあって、四者到底「同じもの」ではない。  ここには、そ...
底本:「日本の名随筆 別巻95 明治」作品社    1999(平成11)年1月25日第1刷発行 底本の親本:「木村荘八全集 第五巻」講談社    1982(昭和57)年9月 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年12月12日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049301", "作品名": "ハイカラ考", "作品名読み": "ハイカラこう", "ソート用読み": "はいからこう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 723", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card49301.html", "人物ID": "001312", ...
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 花火で忘られない記憶は、私の家の屋根へ風船の付いた旗の落ちたことだ。「落ちてゐた」といつた方がいゝかもしれない。旗はガンピの日章旗で、畳三畳敷位ゐの大きさであつたらう。これに相当大きな風船と、細長く紙を幾重にもたゝんで出来た旗竿が付いてゐた。旗竿の部分には鉛がところどころに綴込んであつた。――これが私の見てゐる前で、私の家の屋根瓦へすれすれについて、くにやりと曲がつた時には、私はその一端をしつかとつかまへて、有頂天になつた。あれ程純粋に嬉しかつた「嬉しさ」は、ジンセイに余り類の無いものかもしれない。  私は両国の花火は子供の頃ずつとそのすぐそばにゐたので、却つて船で見たことはない。よく「ズドン、バリバリ」といふことをいふが、すぐそ...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 吉原のおはぐろ溝とこれに架かつた刎橋――(一葉がこの字を使つている)――「たけくらべ」にいふ「……垢ぬけのせし三十あまりの年増、小ざつぱりとせし唐棧ぞろひに紺足袋はきて、雪駄ちやらちやら忙がしげに横抱きの小包はとはでもしるし、茶屋が棧橋とんと沙汰して、廻り遠やこゝからあげまする、誂へ物の仕事やさんとこのあたりに言ふぞかし……」、この棧橋。  この構造については、――前に調べたことがあつたが、その時よく分らなかつたのは、廓内の向うから落ちて架かつて来る刎橋を溝のこつちがしで受け留める、その「受け台」についてゞある。  ところが、それがやつと分つたので、何かの文献にもと、書いておくことにした。  元々このハネバシについてぼくが書いたの...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047731", "作品名": "刎橋の受け台について", "作品名読み": "はねばしのうけだいについて", "ソート用読み": "はねはしのうけたいについて", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-17T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47731.html",...
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 羽左衛門を失ったことを転機として――戦争を転機としてと云えば早いが、それではニベも無い――俳優の「顔」も変ったと思います。「俳優」もここには主として歌舞伎(旧劇)畑を云いますが、「顔」を材料にとって述べれば、自然歌舞伎俳優が主となるのは定法でもありましょう。  羽左衛門は、思えば寂しい中で亡くなりました。羽左衛門の死については、文壇で云えば藤村がそうだったように、当時、戦雲の濃い中だったに拘らず、新聞の報道などに、さすがに大見出しで取扱われたものでした。――しかしこの名優の死は(日本の歌舞伎の歴史から云って)何と云っても慌だしかった戦雲の中で考えられるには過ぎた問題でした。例えばその「顔」だけの問題についても、われわれは再考三考す...
底本:「日本の名随筆40 顔」作品社    1986(昭和61)年2月25日第1刷発行    1997(平成9)年5月20日第12刷発行 底本の親本:「木村荘八全集 第六巻」講談社    1982(昭和57)年7月 入力:門田裕志 校正:noriko saito 2008年12月12日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "049300", "作品名": "役者の顔", "作品名読み": "やくしゃのかお", "ソート用読み": "やくしやのかお", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 723 774", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-02T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card49300.html", "人物ID": "0013...
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 角力の頃になると両国界隈がトピックになるやうである。両国界隈の風致景物の中でも柳橋などは特に角力の頃でなくとも話題になつたものだつた。今では反対に角力の国技館は周知されてゐても、柳橋なんぞの存在は年中殆ど忘れられてゐることの方が多いかも知れない。  柳橋は今も昔の通り神田川筋の「……東の大川口にかゝるを柳橋と号く。柳原堤の末にある故に名とすとぞ」、かう「江戸名所図会」に説明してある、その儘の昔の位置にかゝつてゐるけれども、今見る橋はきやしやな柳橋の名にそぐはない重たい頑丈一方のものになつてゐる。これは震災後、一列一体に東京市内の橋が構造本位のがつしりしたものになつた、その時矢張り同じ方式で、改装されたものである。  現在の橋に変る...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047732", "作品名": "柳橋考", "作品名読み": "やなぎばしこう", "ソート用読み": "やなきはしこう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-12T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47732.html", "人物ID": "001312", ...
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 源之助の演る芝居に女団七と言ふのがある。大きな茶のべんけいの浴衣を着て、黒繻子の帯を平つたく四角に締め、すそを片方だけ高くからげるから白の蹴出しが出て、それが素足にかゝる。頭は崩れたつぶしかおばこか何かで、顔は白く塗り、眉は無いにちがひない。――手に抜身の脇差を持つて、黒塀の前で義理あるおとら婆アを殺す狂言だ。  ――序でに之れも書いておくが、あとで、その黒塀の向うの青空を遠見で五彩の花車が通る。黒塀の一端にはくつきりと白い井げたがあつて、つるべの青竹が出てゐる。そばに柳もある。舞台のこつちには泥だめがあつて、果し合ひが段々と苦しく、泥だらけになる仕組みだ。――何しろその黒塀の前に団七縞のお梶の浮上る姿は、一種末期的の味ながら、誠...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047733", "作品名": "浴衣", "作品名読み": "ゆかた", "ソート用読み": "ゆかた", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382 383", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47733.html", "人物ID": "001312", "姓": ...
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        一  浴衣がけは便利だといふ、無論便利だ。久しく外国へ行つてゐると夏は故郷の浴衣がけが恋しくなつてかなはないといふが、さもあらうと思ふ。便利で涼しい点では外国のどの夏衣裳にも勝るものだらう。  然したゞ便利で涼しいが故に起つたものかと云ふと、それは一つにはさうに相違ない。夏不便で涼しくないものは行はれるわけがない。しかしより以上に、それが衣裳としての一つの風俗を保つて今に行はれるわけは、美しいがゆゑに、それで猶発達したものと思ふ  ――一体この浴衣又は浴衣がけといふ字は、いつ頃使ひ始めたものだらうか。この特殊な夏衣裳の沿革を一通り調べて見たらかなり面白からうといつも思つてゐながら、つい取り果さないのは、怠慢ながら、...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047734", "作品名": "浴衣小感", "作品名読み": "ゆかたしょうかん", "ソート用読み": "ゆかたしようかん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382 383", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-22T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47734.html", "人物ID": "00...
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 山川秀峰 大兄  この便遅延失礼。矢来町より御指図につき早速ハネ橋について誌します。実はぼくの見おぼえだけでは昔のことでもあるし危険と考へ、今日実地見聞をなし、土地の人にも聞いて、大体自信がつきました。  さて、ハネ橋といつぱ―― 垢ぬけのせし三十あまりの年増、小ざつぱりとせし唐棧ぞろひに紺足袋はきて、雪駄ちやらちやら忙しげに横抱きの小包は問はでもしるし、茶屋の棧橋とんと沙汰して、廻り遠やこゝからあげまする、誂へものの仕事やさんとこのあたりに言ふぞかし……  これは一葉のたけくらべの本文で、文中の「茶屋の棧橋とんと沙汰して」とあるのが問題のものです。御承知の(といつてはシツレイかどうか)大門を入つて左右の太い斜線が引手茶屋な...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047735", "作品名": "吉原ハネ橋考", "作品名読み": "よしわらハネばしこう", "ソート用読み": "よしわらはねはしこう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382 915", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-17T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47735.html", "人物ID...
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 永井さん(荷風子)が「日和下駄」の中の一節に路地について記された件りがある。 「……両国の広小路に沿うて石を敷いた小路には小間物屋、袋物屋、煎餅屋など種々なる小売店の賑はふ有様、正しく屋根のない勧工場の廊下と見られる。横山町辺のとある路地の中には矢張り立派に石を敷詰めた両側ともに長門筒袋物また筆なぞ製してゐる問屋ばかりが続いてゐるので、路地一帯が倉庫のやうに思はれる処があつた。」 「……路地はいかに精密なる東京市の地図にも、決して明らかには描き出されてゐない。どこから這入つて何処へ抜けられるか、あるひは何処へも抜けられず行止りになつてゐるものか否か、それはけだしその路地に住んで始めて判然するので、一度や二度通り抜けた位では容易に判...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047736", "作品名": "両国界隈", "作品名読み": "りょうごくかいわい", "ソート用読み": "りようこくかいわい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-12T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47736.html", "人物ID": "0013...
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 櫓太鼓にフト目をさまし、あすは……といふけれども、昔ぼくが成人した家は、風の加減で東から大川を渡つてとうとうと回向院の櫓太鼓が聞えたものだつた。ぼくの名は生れ落ちてからこれが本名であるが、この荘の字をよく人に庄屋の庄の字と間違へて書かれることがある。昔は川向うの行司木村庄某あてのハガキや手紙が番地が不完全だとぼくの家へ舞込むと同時に、ぼくへの通信がまた一応両国橋を向うへ渡つて附箋をつけて戻されたことなどあつた。両国はぼくの故郷である。  しかし近来の両国はぼくにとつては全く勝手のわからない、甚だ縁の遠いものになつてゐる。第一、自分があの地域のどの辺で生れたのか――ぼくは日本橋区吉川町一番地といふところで生れたのだが――現にあの辺へ...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 柳橋の明治二十年以前木橋であつた頃は、その欄干は上図のやうな木組であつたが、これは一曜斎国輝の錦絵「両ごくやなぎばし」の図や、明治二十二年発行の「日本名所図会東京の部」(大阪府平民上田維暁編)などに写されてゐるので(第一図)わかる。明治初年彰義隊の時に油を灌いで焼かれたといふのもこの構造の柳橋であつたらう。欄干の木組が十文字のぶつちがひになつた構造は、古くは日本橋も黒塗りの木組で絵図にさう写されてゐるし、大川筋の永代橋、大橋、両国橋など皆、同じ形式で出来てゐる。目貫きの大通り筋には新橋や京橋などこの形式でないものもあつたやうだが、大体木の橋といへば、欄干の定石はこのぶつちがひだつた。――そして此の構造が幕末以前には無く、構造の基く...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 ※図版は、底本の親本からとりました。 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 2012年5月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "047737", "作品名": "両国橋の欄干", "作品名読み": "りょうごくばしのらんかん", "ソート用読み": "りようこくはしのらんかん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 382", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-01-12T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001312/card47737.html", "人物ID...
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 ………生ひ立ちについて記せといふことですが、生ひ立ち万端すべていつか記しつくしたやうに思ひます。先づ昔の土地についてのことから書くことにしようと思ひます。これも今では移り代りの早さに、文献ものになりました。  ――ぼくは十九の歳、すつかり火事にあひましたので、それまでの記念品のやうなものは写真から、絵から、衣類大小、それこそ根こそぎみんな焼いて了つて、大正二年に北山清太郎の撮影した写真からがその後のはじまりです。北山清太郎といへば、画壇に御存知の方も少くないことでせう。その大正二年の秋、ぼくは二十一歳。ぼくはその冬には麻布一連隊へ入営してゐました。岸田劉生が二十三歳。岸田はその頃に結婚してゐたと思ひます。岸田はその頃、仕事としては...
底本:「東京の風俗」冨山房百科文庫、冨山房    1978(昭和53)年3月29日第1刷発行    1989(平成元)年8月12日第2刷発行 底本の親本:「東京の風俗」毎日新聞社    1949(昭和24)年2月20日発行 入力:門田裕志 校正:伊藤時也 2009年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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孫伍長  一九四〇年……曽つて雲烟万里の秘境として何者の侵攻も許さなかった雲南府も、不安と焦燥の裡にその年を越そうとしていた。  五華山を中心に、雅致のある黄色い塀や、緑の梁や、朱色の窓を持つ古風な家々を、永い間護って来た堅固な城壁も――海抜七千尺に近いこの高原を囲む重畳たる山岳も――空爆の前には何の頼みにもならなかったのである。  その宵も南門外の雲南火車站に着いた小さな貧弱な列車からは、溢れるように避難民が吐き出されて火車站のフランス風の玄関から、新市街へ流れ出していた。  ここの人々は、今ではその後に十万から二十万以上にも殖えていたが、人が殖えるごとに、 「仏印国境から日本軍が攻めて来る」  という噂が、だんだん確からしさを...
底本:「消えた受賞作 直木賞編」メディアファクトリー    2004(平成16)年7月6日初版第1刷発行 底本の親本:「大衆文学大系30 短篇集・下」講談社    1973(昭和48)年10月20日第1刷 初出:「新青年」    1941(昭和16)年4月号 ※「西蔵」に対するルビの「チベット」と「チブッチ」の混在は、底本通りです。 ※表題は底本では、「雲南守備兵――うんなんしゅびへい――」となっています。 ※「官署《コアリシュウ》」、「長掛子《チャンクリツー》」は中国語の発音を考慮すると「官署《コワンシュウ》」、「長掛子《チャンクワツー》」の誤植が疑われますがママ注記にとどめました。 ※「水中に野菜の車を曳《ひ》かせ行く」は「水牛...
{"作品ID": "058055", "作品名": "雲南守備兵", "作品名読み": "うんなんしゅびへい", "ソート用読み": "うんなんしゆひへい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「新青年」1941(昭和16)年4月号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2018-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2018-01-01T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001894/card58055....
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落葉よ、落葉よ、 秋風に吹かれて、 お前がカラカラと鳴り乍ら 井戸端に水すすぐ私の手元へ、黄色く、 舞いこんでくると、 おお、私は胸ふたがれる! 何一つもたらすことなく、 過ぎ去った日の一日一日を ただ、えいえいと つづれつくろい、米かしぎ 凡ての希みも、よろこびも、 かなしみさえもおき去りにして 生涯をただ貧しく終えゆく無数の私らの生命のように、 ああ、お前は散ってゆく、 秋風になぶられて、舞い乍ら…… 空は、 こんなに青く、深く、 豊かにみのっている穂波もあろうに。 落葉よ、 お前のそのカラカラと鳴る音は どんなに、私の胸をたたき、 あわれを――、 はきよせられ、すて去られるものの上にはせさせるか! ああ、ひょうひょうと舞...
底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社    1987(昭和62)年6月30日初版 底本の親本:「一九三五年詩集」前奏社    1936(昭和11)年1月 初出:「詩精神」    1935(昭和10)年11・12月合併号 入力:坂本真一 校正:雪森 2015年5月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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すそを吹き上げる 北風は凍り おおいのない、野天の井戸 洗い物をしぼる手はまっ赤 お前は温順 お前は過去の女 ぱっと冷いしぶきがとびかかる 私は空を仰いだ くらくらと瞼をおおう おもい冬空 生活はつづく 新しいものと 古いものが ごっちゃになってどんでんがえり 新しいモラルの前では 或る女たちが特権を以て針を折り ひしゃくを投げすて 昨日のくびきをふりほどく そこには 栓をひねればお湯がとび出す 手をよごさずとも 夫に清潔なカラーをつけさせることが出来る 御馳走も思いのままに…… ゆたかな温床が用意されている 特権をもたない女たちは悲惨だ 自我を失い 個性を失い 文化に背を向けて パチパチ炭火を煽って飯をたき あかがね色の庖丁...
底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社    1987(昭和62)年6月30日初版 底本の親本:「詩人」    1936(昭和11)年2月号 初出:「詩人」    1936(昭和11)年2月号 入力:坂本真一 校正:雪森 2015年9月1日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "054101", "作品名": "極めて家庭的に", "作品名読み": "きわめてかていてきに", "ソート用読み": "きわめてかていてきに", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「詩人」1936(昭和11)年2月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2015-10-24T00:00:00", "最終更新日": "2015-09-24T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001643/card541...
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ぷんとにおって来る力強い体臭! おお この汚れ物のにおいこそ 獄内の闘いのはげしさを語る あの人達の生々しいいぶき―― さあ みんな 元気で初めよう あたしはポンプ押し 千代ちゃんはすすぎ役 みんなそろって ごし ごし ざあざあ うらみをこめて洗い流す 奴等のテロルに汚された垢を油汗を 空は秋晴れ あつらえ向きの洗濯日和 なかでがんばる同志達に せめて小ざっぱりした物を着せるため 妾達の胸はあつく腕に力はこもる! (『プロレタリア詩』一九三一年十一月号に発表)
底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社    1987(昭和62)年6月30日初版 底本の親本:「プロレタリア詩」    1931(昭和6)年11月号 初出:「プロレタリア詩」    1931(昭和6)年11月号 入力:坂本真一 校正:雪森 2015年9月1日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "054102", "作品名": "洗濯デー", "作品名読み": "せんたくデー", "ソート用読み": "せんたくてえ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「プロレタリア詩」1931(昭和6)年11月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2015-10-24T00:00:00", "最終更新日": "2015-09-01T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001643/card54102.htm...
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吹きっさらしの田圃には もう、村の誰も出ていない だのに、私の家では麦蒔きがすまない 取り入れ半ばに兄ちゃんが召集されて あとに残った女手二つ 私とおっ母とであくせくと麦蒔き 毎日、朝早くから晩おそくまで かたい刈株をうちかえし、うねをつくり せっせと蒔きつけを急ぐ私達―― かよわい女手で、夕方、ぐったり疲れて家に帰れば 地主の奴が、がみがみ年貢を取りたてにやってくる おお兄ちゃんが満州へ引ったてられて行ってから 急に、めっきりやつれたおっ母 老いさらぼけたそのやせ腕に ふり上げる一鍬一鍬! 私の胸は戦争への憎しみを深める 勝っても、負けても、戦争が私達に楽な生活をよこしはすまいに 働き盛りの貧農の息子を奪って み国の為にと殺し...
底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社    1987(昭和62)年6月30日初版 底本の親本:「プロレタリア詩」    1931(昭和6)年12月号 初出:「プロレタリア詩」    1931(昭和6)年12月号 ※×印を付してある文字は、底本編集部による伏字の復元です。 入力:坂本真一 校正:雪森 2015年7月7日作成 2015年8月29日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "054103", "作品名": "兄ちゃん", "作品名読み": "にいちゃん", "ソート用読み": "にいちやん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「プロレタリア詩」1931(昭和6)年12月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2015-08-08T00:00:00", "最終更新日": "2015-08-29T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001643/card54103.html"...
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うす暗い長屋のすみで、毎日、 私と坊やは糊まみれ、 糊にまみれてせっせと渋団扇を張るけれど 戦争にあなたを奪われた私の生活 張っても張っても追っつかない 苦しい暮しの真ただ中で――おお早や五月 闘いのメーデーが来る! おお戦争と白テロの渦巻く中 今年のメーデーはどんなにすごかろう それにつけても忘れられぬあなた! 去年、あのだらしない葬式行列に 組合の人達と一緒に割り込みの先陣をうけもったあなた、 あなたは今は何処に? 引ったてられて行ってからもう三月 どこにいるやら便りもない おお何の便りもよこさないあなた! 戦争はしつこくながびき 侵略の陰謀に折づめされた あなたの便りは聞かれぬけれども ――忙しい仕事の合間合間に 訪ねてく...
底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社    1987(昭和62)年6月30日初版 底本の親本:「働く婦人」    1932(昭和7)年5月号 初出:「働く婦人」    1932(昭和7)年5月号 入力:坂本真一 校正:雪森 2015年9月1日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "054104", "作品名": "メーデーを待つ", "作品名読み": "メーデーをまつ", "ソート用読み": "めえてえをまつ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「働く婦人」1932(昭和7)年5月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2015-10-24T00:00:00", "最終更新日": "2015-09-01T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001643/card54104.ht...
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夫れ海は地表百分の七十三を占め、以て吾人の棲息する陸土を包圍す。故に人類とし又國民として世界に雄飛せんとする者は、必す先つ此包圍を破りて激浪怒濤の間に縱横奔馳するの元氣無かる可らす。英國何者そ、獨逸何者そ、佛國何者そ、露國米國何者そ、苟も雄を宇内に爭ふ者は、一として此元氣の勃興發動底止する所を知らさるに非すや。清國何者そ、韓國何者そ、土國何者そ、西國葡國何者そ、徒に廣大なる土地衆多なる人民を有するも、元氣銷沈して常に人後に瞠若たるに非すや。均く是一國なり、而して盛衰の顯著なる彼の如し。是豈故なしとせむや。語に曰ふ、天に順ふ者は盛り、天に逆ふ者は衰ふと。前者の以て盛なる所の者は、天に順へはなり。後者の以て衰ふる所の者は、天に逆へはなり...
底本:「海島冐險奇譚 海底軍艦」名著復刻日本児童文学館、ほるぷ出版    1975(昭和50)年10月発行 底本の親本:「海島冐險奇譚 海底軍艦」文武堂    1900(明治33)年11月15日 ※「諛のつくり」は「デザイン差」と見て「臾」で入力します。 ※「艦の16かく目の「一」が「丶」」は「デザイン差」と見て「艦」で入力します。 ※「纜の16かく目の「一」が「丶」」は「デザイン差」と見て「纜」で入力します。 ※「「褒」の「保」に代えて「丑」」は「デザイン差」と見て「衰」で入力します。 入力:川山隆 校正:土屋隆 2009年8月31日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://ww...
{"作品ID": "048216", "作品名": "海島冒険奇譚\u3000海底軍艦", "作品名読み": "かいとうぼうけんきたん\u3000かいていぐんかん", "ソート用読み": "かいとうほうけんきたんかいていくんかん", "副題": "03 序", "副題読み": "03 じょ", "原題": "", "初出": "「海島冐險奇譚\u3000海底軍艦」1900(明治33)年11月15日", "分類番号": "NDC K913 K914", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2009-10-16T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:0...
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はしがき 此書は有名なレウィス、キァロルと云ふ人の筆に成つた『アリス、アドヴェンチュアス、イン、ワンダーランド』を譯したものです。邪氣なき一少女の夢物語、滑稽の中自ら教訓あり。むかし、支那の莊周といふ人は、夢に胡蝶と化つたと云ふ話しがありますが、夢なればこそ、漫々たる大海原を徒渉りすることも出來ます、空飛ぶ鳥の眞似も出來ます。世に夢ほど面白いものはありません。今少時、姊さんの膝を枕の假寐に結んだ愛ちやんの夢、解いてほどけば美しい花の數々、色鮮かにうるはしきを摘みなして、この一篇のお伽噺は出來あがつたのです。 明治四十二年十二月譯者 第一章  兎の穴へ  愛ちやんは、姊さんと堤の上にも坐り勞れ、その上、爲ることはなし、...
底本:「愛ちやんの夢物語」内外出版協會    1910(明治43)年2月1日発行    1910(明治43)年2月12日発行 ※国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。 ※「※[#「女+(「第-竹」の「コ」に代えて「丿」)、「姉」の正字」、U+59CA]」と「姉」、「あァ」と「あア」、「さァ」と「さア」と「サァ」と「サア」、「まァ」と「まア」と「先《ま》ァ」、「もツと」と「もッと」、「嘗」と「甞」、「双方」と「雙方」、「糸」と「絲」、「熱」と「※[#「執/れんが」、U+24360]」、「頤」と「※[#「ぼう+臣+頁」、第4水準2-92-28]...
{"作品ID": "049853", "作品名": "愛ちやんの夢物語", "作品名読み": "あいちゃんのゆめものがたり", "ソート用読み": "あいちやんのゆめものかたり", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "ALICE"S ADVENTURES IN WONDERLAND", "初出": "", "分類番号": "NDC K933", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2018-07-04T00:00:00", "最終更新日": "2018-06-29T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.j...
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昭和十七年   (十二月九日――十二月二十八日迄) 昭和十七年十二月九日(水)  近ごろのことを書き残したい気持ちから、また日記を書く。  昨日は大東亞戰爭記念日であった。ラジオは朝の賀屋(興宣)大藏大臣の放送に始って、終始、感情的叫喚であった。夕方は僕は聞かなかったが、米国は鬼畜、英国は惡魔だといった放送で、家人でさえもスウィッチを切った。かくも感情に訴えなければ、戰爭は完遂できぬのか。  東京でお菓子の格付けをするというので、お役人が集って有名菓子を食ったりしている。役人はいかに暇であることか。  昨日、陸軍に感謝する会が、木挽町の歌舞伎座であって、超満員だった。 十二月十二日(土)  右翼やゴロツキの世界だ。東京...
底本:「暗黒日記 普及版」東洋経済新報社    1954(昭和29)年6月15日第1刷発行    1955(昭和30)年7月30日普及版第2刷発行 ※( )内の小さな文字の補足・注記は、編者による加筆です。 ※「ワンワン」と「ワン/\」の混在は、底本通りです。 ※「「中野君を馬にたとえるのは失礼だが、・・・」で始まる文が閉じ括弧で閉じられていないのは、底本通りです。 入力:富田晶子 校正:雪森 2021年4月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "060326", "作品名": "暗黒日記", "作品名読み": "あんこくにっき", "ソート用読み": "あんこくにつき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 210", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2021-05-21T00:00:00", "最終更新日": "2021-04-27T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000910/card60326.html", "人物ID": "000910",...
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 私は常々信念とか如來とか云ふことを、口にして居ますが、其私の信念とは如何なるものであるか、私の信ずる如來とは如何なるものであるか、今少しく之を開陳しようと思ひます。  私の信念とは、申す迄もなく、私が如來を信ずる心の有樣を申すのであるが、其に就いて、信ずると云ふことゝ、如來と云ふことゝ、二つの事柄があります。此の二つの事柄は、丸で、別々のことの樣にもありますが、私にありては、さうではなくして、二つの事柄が全く一つのことであります。私の信念とは、どんなことであるか、如來を信ずることである。私の云ふ所の如來とは、どんなものであるか、私の信ずる所の本體である。分けて云へば、能信と所信との別があるとでも申しませうか、即ち、私の能信は信念で...
底本:「わが信念」弘文堂    1952(昭和27)年2月25日初版発行 初出:「精神界」    1903(明治36)年6月10日発行 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:田中敬三 校正:土屋隆 2006年7月23日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "045629", "作品名": "我信念", "作品名読み": "わがしんねん", "ソート用読み": "わかしんねん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「精神界」1903(明治36)年6月10日", "分類番号": "NDC 188", "文字遣い種別": "旧字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-09-16T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001211/card45629.html",...
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 人動もすれば、私を以て、言いたいことを言うから、結局、幸福だとする。だが、私は、この場合、言いたい事と、言わねばならない事とを区別しなければならないと思う。  私は言いたいことを言っているのではない。徒に言いたいことを言って、快を貪っているのではない。言わねばならないことを、国民として、特に、この非常時に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国者の一人として、同時に人類として言わねばならないことを言っているのだ。  言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは、愉快ではなくて、苦痛である。何ぜなら、言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、...
底本:「日本の名随筆 別巻76 常識」作品社    1997(平成9)年6月25日第1刷発行 底本の親本:「畜生道の地球」中公文庫、中央公論社    1989(平成元)年10月 入力:渡邉 つよし 校正:門田 裕志 2001年9月27日公開 2005年12月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "003612", "作品名": "言いたい事と言わねばならない事と", "作品名読み": "いいたいことといわねばならないことと", "ソート用読み": "いいたいことといわねはならないことと", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-09-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000535/...
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 人はこの語の意味する明瞭なる理念を知るものは稀であるが、屡宇宙という語を口にする。だが、宇宙に関する近代的理念は思ったよりも空漠である。この空漠性は最近の世紀に於ける包括的思索が欠けているからである。その原因は、統一された中世紀の文明崩壊に次いで、極度の個人主義が跋扈したからである。紀元後千三百年頃には、人は明に、また大に信じて、彼の宇宙に関する理念を語り得た。その後、知識は駸々乎として長大足の進歩を示し、宇宙に関する中世紀の理念は不完全となり、当時の包括的思索も終に信ぜられざるに至った。人は細密なる特殊事項を研究することに一変し、ヴェサリウス、ガリレオ及びギルバート等が、初めて近代的なる科学的方法を以て、特性的なる論文を発表しつ...
底本:「畜生道の地球」中公文庫、中央公論社    1989(平成元)年10月10日発行 底本の親本:「畜生道の地球」三啓社    1952(昭和27)年7月 入力:門田裕志 校正:Juki 2005年6月10日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043778", "作品名": "科学的新聞記者", "作品名読み": "かがくてきしんぶんきしゃ", "ソート用読み": "かかくてきしんふんきしや", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 070", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-08-16T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000535/card43778.html", "人物I...
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 防空演習は、曾て大阪に於ても、行われたことがあるけれども、一昨九日から行われつつある関東防空大演習は、その名の如く、東京付近一帯に亘る関東の空に於て行われ、これに参加した航空機の数も、非常に多く、実に大規模のものであった。そしてこの演習は、AKを通して、全国に放送されたから、東京市民は固よりのこと、国民は挙げて、若しもこれが実戦であったならば、その損害の甚大にして、しかもその惨状の言語に絶したことを、予想し、痛感したであろう。というよりも、こうした実戦が、将来決してあってはならないこと、またあらしめてはならないことを痛感したであろう。と同時に、私たちは、将来かかる実戦のあり得ないこと、従ってかかる架空的なる演習を行っても、実際には...
底本:「畜生道の地球」中公文庫、中央公論社    1989(平成元)年10月10日発行 底本の親本:「畜生道の地球」三啓社    1952(昭和27)年7月 初出:「信濃毎日新聞」    1933(昭和8)年8月11日 入力:久保格 校正:門田裕志 2004年5月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004621", "作品名": "関東防空大演習を嗤う", "作品名読み": "かんとうぼうくうだいえんしゅうをわらう", "ソート用読み": "かんとうほうくうたいえんしゆうをわらう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「信濃毎日新聞」1933(昭和8)年8月11日", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-08-09T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora....
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 ゴオリキの「どん底」に現われた不思議な老人ルカの話によると、シベリアに「非常に貧乏で、惨な暮らし」をしていた或男が、「正義の国」を求めていた。この正義の国には「特別な人間」が住んでいて、しかも「立派な人間ばかりで、互に尊敬し合い、どんな些細なことにも助け合う」国であった。そしてこの男は、絶えずこの正義の国を探しに行く用意をしていたが、さなきだに貧乏だった彼は、これがためにますます貧乏となり、結局「寝たまま死を待つより外のない、どん底な生活に陥ってしまった」。でも、彼は落胆しないで何処かに「正義の国」があることを信じて、そこへ行こうとしていた。  或時、このシベリアに一人の学者が流れ込んで来た。この男は早速この学者を探ねて「正義の国...
底本:「畜生道の地球」中公文庫、中央公論社    1989(平成元)年10月10日発行 底本の親本:「畜生道の地球」三啓社    1952(昭和27)年7月 初出:「他山の石」(第6年17号)名古屋読書会報告    1939(昭和14)年9月 入力:久保格 校正:門田裕志 2004年5月18日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004622", "作品名": "正義の国と人生", "作品名読み": "せいぎのくにとじんせい", "ソート用読み": "せいきのくにとしんせい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「他山の石\u3000第6年17号\u3000名古屋読書会報告」1939(昭和14)年9月", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-08-15T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozo...
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 煎じ詰めれば、理想と現実との衝突である。我は理想を見つめて、しかも漸次にこれを進まんとしているにも拘らず、彼等は現実に執着して、唯その直面する難局を打開し得れば、それで以て足れりとしているのだ。  だから、煎じ詰めれば、未来と現在との衝突でもある。我はワンズマンの修正により、進化論の適者を以て未来の状況に適応する者としているに反して、彼等はダーウィンの正統進化論により、唯現在の状況に適応するものを以て適者としている。従って、我は未来の向上を重しとし、現在の利益を未来の幸福のため、犠牲に供することを辞さないにも拘らず、彼等は唯現在に於て、一時的なる利益を得れば、未来の幸福を捨てて顧ない。  だから、煎じ詰めれば、新体制と旧体制との衝...
底本:「畜生道の地球」中公文庫、中央公論社    1989(平成元)年10月10日発行 底本の親本:「畜生道の地球」三啓社    1952(昭和27)年7月 入力:門田裕志 校正:Juki 2005年5月12日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043779", "作品名": "煎じ詰めれば", "作品名読み": "せんじつめれば", "ソート用読み": "せんしつめれは", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-08-14T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000535/card43779.html", "人物ID": "000535...
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 元の末には天下大いに乱れて、一時は群雄割拠の時代を現出したが、そのうちで方谷孫というのは浙東の地方を占領していた。彼は毎年正月十五日から五日のあいだは、明州府の城内に元霄(陰暦正月十五日の夜)燈をかけつらねて、諸人に見物を許すことにしていたので、その宵よいの賑わいはひと通りでなかった。  元の至正二十年の正月である。鎮明嶺の下に住んでいる喬生という男は、年がまだ若いのにさきごろその妻を喪って、男やもめの心さびしく、この元霄の夜にも燈籠見物に出る気もなく、わが家の門にたたずんで、むなしく往来の人びとを見送っているばかりであった。十五日の夜も三更(真夜中の十二時から二時間)を過ぎて、人影もようやく稀になったころ、髪を両輪に結んだ召使ふ...
底本:「世界怪談名作集 下」河出文庫、河出書房新社    1987(昭和62)年9月4日初版発行    2002(平成14)年6月20日新装版初版発行 入力:門田裕志 校正:小林繁雄 2003年9月5日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004999", "作品名": "世界怪談名作集", "作品名読み": "せかいかいだんめいさくしゅう", "ソート用読み": "せかいかいたんめいさくしゆう", "副題": "18 牡丹灯記", "副題読み": "18 ぼたんとうき", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 923 908", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-10-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/0010...
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    序  モンテスキューいわく、「予の校を去るや数巻の法書を手にせり、しかしてただその精神を尋繹せり」と。ボルドー議会の会長たるとき、いわく、「予は議場において身に適するの地位なきを知る、議題は予これを詳悉するを難んぜず、しかも議事規則に至りては毫も会得するところあらず、予は会長としてこれに注意せざるにあらざれども、いわゆる伎倆なるもののきわめて陋愚なるを悟り、しかしてなお揚々として座を占むるに堪えざるなり」と。すなわち職を辞してもっぱら政理の究察に従事せり。ああ、これ先生の一世の知識を開拓して余りありし所以なるか。ヴォルテル称揚して言えらく、「人類の偉業を失うや久し、モ君出でてこれを回復しこれを恢張せり」と。陸羯南の人となり...
底本:「日本の名著 37 陸羯南 三宅雪嶺」中公バックス、中央公論社    1984(昭和59)年8月20日初版発行 底本の親本:「近時政論考」日本新聞社    1891(明治24)年6月4日発行 入力:tsuru 校正:小林繁雄 2006年9月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "001401", "作品名": "近時政論考", "作品名読み": "きんじせいろんこう", "ソート用読み": "きんしせいろんこう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 312", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-10-09T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000253/card1401.html", "人物ID": "0002...
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La pensée doit remplir toute l'existence. MAINE DE BIRAN, Journal intime.      序  この書は雑誌『思想』第九十二号および第九十三号(昭和五年一月号および二月号)所載の論文に修補を加えたものである。  生きた哲学は現実を理解し得るものでなくてはならぬ。我々は「いき」という現象のあることを知っている。しからばこの現象はいかなる構造をもっているか。「いき」とは畢竟わが民族に独自な「生き」かたの一つではあるまいか。現実をありのままに把握することが、また、味得さるべき体験を論理的に言表することが、この書の追う課題である。   昭和五年十月 著者   ...
底本:『「いき」の構造』岩波文庫、岩波書店    1979(昭和54)年9月17日第1刷発行    1998(平成10)年12月4日第37刷発行 底本の親本:『「いき」の構造』岩波書店    1930(昭和5)年11月20日第1刷発行 入力:鈴木厚司 校正:鈴木厚司、かとうかおり 2000年5月29日公開 2001年6月27日アクセント分解対応版公開 2003年8月31日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "000393", "作品名": "「いき」の構造", "作品名読み": "「いき」のこうぞう", "ソート用読み": "いきのこうそう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 701", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2000-05-29T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card393.html", "人物ID": "00006...
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 ついこの間のことである。私はあるところで「こよみ」を見せてほしいといった。すると「こよみ」とはあなたらしくもない。運勢でも調べるのですかと問われた。来月の某日が何曜日になるかを見たいのだと答えると、それならば「カレンダー」で間に合うでしょうというのである。私はなるほど「カレンダー」かなと思ったが、いくぶんか呆気にとられた。もっとも私自身も郵便を投函する必要のあるとき自動車の運転手に「郵便函があったら留めてくれ」といおうか「ポストがあったらストップしてくれ」といおうか、どっちがよくわかるだろうかと咄嗟に迷うことがある。 「パパ、ママ」排撃を事新しく持ち出すわけではないが、外来語の横行もこんなになってくると深く考えさせられる。もう七年...
底本:「九鬼周造随筆集」菅野昭正編、岩波文庫、岩波書店    1991(平成3)年9月17日第1刷発行    1992(平成4)年9月20日第3刷発行 底本の親本:「九鬼周造全集 第五巻」岩波書店    1991(平成3)年2月第2刷 入力:鈴木厚司 校正:松永正敏 2003年8月22日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004399", "作品名": "外来語所感", "作品名読み": "がいらいごしょかん", "ソート用読み": "かいらいこしよかん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 814 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-09-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card4399.html", "人物ID": "...
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 十二月も半ば過ぎた頃であった。村上は友人の山崎を自宅の昼飯に招いた。独身者同様の村上は時にこうして十五ばかり年下の山崎と会食をしながら寛いだ気もちで談笑するのが好きであった。年齢の相違もあるので二人の間には師弟といったような感覚も交っていた。村上が二階の書斎で手紙を書いていると女中が山崎の来たことを告げながら 「これを頂戴いたしました」 といって干鰈の沢山入った籠を見せた。約束の時間よりも少し早かったので、遠慮のない間柄であるから主人は「ちょっとお待ち下さい」といわせて急ぎの手紙を書き終えてから下へ降りた。 「お待たせした。どうも今は結構なものをありがとう」 「実は国許へ帰っている妻から今朝送ってきましたのでちょうどいいから先生に...
底本:「九鬼周造随筆集」菅野昭正編、岩波文庫、岩波書店    1991(平成3)年9月17日第1刷発行    1992(平成4)年9月20日第3刷発行 底本の親本:「九鬼周造全集 第五巻」岩波書店    1991(平成3)年2月第2刷 ※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。 入力:鈴木厚司 校正:松永正敏 2003年8月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004400", "作品名": "かれいの贈物", "作品名読み": "かれいのおくりもの", "ソート用読み": "かれいのおくりもの", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 121 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-09-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card4400.html", "人物ID": ...
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 私は樹木が好きであるから旅に出たときはその土地土地の名木は見落さないようにしている。日本ではもとより、西洋にいた頃もそうであった。しかしいまだかつて京都祇園の名桜「枝垂桜」にも増して美しいものを見た覚えはない。数年来は春になれば必ず見ているが、見れば見るほど限りもなく美しい。  位置や背景も深くあずかっている。蒼く霞んだ春の空と緑のしたたるような東山とを背負って名桜は小高いところに静かに落ちついて壮麗な姿を見せている。夜には更に美しい。空は紺碧に深まり、山は紫緑に黒ずんでいる。枝垂桜は夢のように浮かびでて現代的の照明を妖艶な全身に浴びている。美の神をまのあたり見るとでもいいたい。私は桜の周囲を歩いては佇む。あっちから見たりこっちか...
底本:「九鬼周造随筆集」菅野昭正編、岩波文庫、岩波書店    1991(平成3)年9月17日第1刷発行    1992(平成4)年9月20日第3刷発行 底本の親本:「九鬼周造全集 第五巻」岩波書店    1991(平成3)年2月第2刷 入力:鈴木厚司 校正:松永正敏 2003年8月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004401", "作品名": "祇園の枝垂桜", "作品名読み": "ぎおんのしだれざくら", "ソート用読み": "きおんのしたれさくら", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-09-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card4401.html", "人物ID": "0...
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 駄洒落を聞いてしらぬ顔をしたり眉をひそめたりする人間の内面生活は案外に空虚なものである。軽い笑は真面目な陰鬱な日常生活に朗かな影を投げる。ある日、私がパリで散髪をしていると理髪師が私に向ってデ・ジャポネー(日本人)は騎兵は要らぬそうですねといった。何のことかと聞くとデジャ(既に)ポネー(小馬)だからといった。人を馬鹿にしているこの駄洒落は異郷の旅愁をかえって慰めてくれた。旅愁は人生の旅にもおそいかかってくる。軽い駄洒落も時には悪くない。ポール・ヴァレリイは同韻の二つの言葉を双児の交わす微笑に譬えている。偶然の戯れが産んだ三つ児を二組紹介しても別に誰も咎める者はないだろう。  その一つは既に新聞に載ったこともあるからある人々には旧聞...
底本:「九鬼周造随筆集」菅野昭正編、岩波文庫、岩波書店    1991(平成3)年9月17日第1刷発行    1992(平成4)年9月20日第3刷発行 底本の親本:「九鬼周造全集 第五巻」岩波書店    1991(平成3)年2月第2刷 入力:鈴木厚司 校正:松永正敏 2003年8月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004402", "作品名": "偶然の産んだ駄洒落", "作品名読み": "ぐうぜんのうんだだじゃれ", "ソート用読み": "くうせんのうんたたしやれ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 121 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-09-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card4402.html",...
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 林芙美子女史が北京の旅の帰りに京都へ寄った。秋の夜だった。成瀬無極氏と一緒に私の家へ見えた。日本の対支外交や排日問題などについて意見を述べたり、英米の対支文化事業や支那女性の現代的覚醒を驚嘆していた。支那の陶器の話も出た。何かの拍子に女史が小唄が好きだといったので、小唄のレコードをかけて三人で聴いた。 「小唄を聴いているとなんにもどうでもかまわないという気になってしまう」 と女史がいった。私はその言葉に心の底から共鳴して、 「私もほんとうにそのとおりに思う。こういうものを聴くとなにもどうでもよくなる」 といった。すると無極氏は喜びを満面にあらわして、 「今まであなたはそういうことをいわなかったではないか」 と私に詰るようにいった。...
底本:「九鬼周造随筆集」菅野昭正編、岩波文庫、岩波書店    1991(平成3)年9月17日第1刷発行    1992(平成4)年9月20日第3刷発行 底本の親本:「九鬼周造全集 第五巻」岩波書店    1991(平成3)年2月第2刷 入力:鈴木厚司 校正:松永正敏 2003年8月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004403", "作品名": "小唄のレコード", "作品名読み": "こうたのレコード", "ソート用読み": "こうたのれこおと", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 768 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-09-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card4403.html", "人物ID": "...
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 ひたすらに伝統の匂いをかいで足れりとする者であるかのような非難を私は近頃うけた。これは馬鹿げた非難だと一口でいってしまえばそれまでのことであるが、また考えようによってはいい機会でもあるから、果してこの非難が当っているかどうかを、私は出来るだけ客観的に自分について調べてみたいと思う。  この非難は二つの事項を含んでいる。ひたすら伝統の匂いをかぐというのが一つであり、それだけで足れりとするというのがもう一つである。まず第二の点から考察していこう。私が伝統の固守をもって足れりとする者でないことは私自身にはあまりにも明白なことである。私は西洋文化からも大いに学ぶべきところのあることを堅く信じている者で、私の生活の一半は西洋文化の学習に捧げ...
底本:「九鬼周造随筆集」菅野昭正編、岩波文庫、岩波書店    1991(平成3)年9月17日第1刷発行    1992(平成4)年9月20日第3刷発行 底本の親本:「九鬼周造全集 第五巻」岩波書店    1991(平成3)年2月第2刷 入力:鈴木厚司 校正:松永正敏 2003年8月20日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004404", "作品名": "伝統と進取", "作品名読み": "でんとうとしんしゅ", "ソート用読み": "てんとうとしんしゆ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 914", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-09-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000065/card4404.html", "人物ID": "0000...
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 熊野の小母さんへ。  あなたには、四五年も昔から、よくお便りしてます。けれど、こんな殺風景な紙に、宿命的な味気ない字を書くことは、はじめてです。いつも、信州の紙とか、色のついたアート紙に、或いはかすれた筆文字で、或いは、もっと、面白くきれいな字――いやこれは、おこがましいかな。でも、あなたは、私の字を好んでくれました。――で、お便りしたものです。何故、この紙を選んだか、おわかりですか。実は、あなたにたよりしている気持で、私は、おそらく今度こそ本当の最後の仕事を、真剣になって綴ろうというのです。これは富士正晴氏の手に渡るでしょう。そして、彼の意志かあわれみで同人雑誌のVILLONか、VIKINGに印刷されるでしょう。その活字が、あな...
底本:「幾度目かの最期」講談社文芸文庫、講談社    2005(平成17)年12月10日第1刷発行 底本の親本:「久坂葉子作品集 女」六興出版    1978(昭和53)年12月31日初版発行    「VIKING47・VILLON4 共同刊行号」    1952(昭和27)年3月 初出:「VIKING47・VILLON4 共同刊行号」    1952(昭和27)年3月 ※「落つ」と「落ちつ」、「コーヒー」と「コーヒ」の混在は、底本通りです。 入力:kompass 校正:The Creative CAT 2019年11月24日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.ao...
{"作品ID": "059900", "作品名": "幾度目かの最期", "作品名読み": "いくどめかのさいご", "ソート用読み": "いくとめかのさいこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「VIKING47・VILLON4\u3000共同刊行号」1953(昭和28)年3月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2019-12-31T00:00:00", "最終更新日": "2020-01-01T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.j...
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 熊野の小母さんへ。  あなたには四、五年も昔から、よくお便りしてます。けれど、こんな殺風景な紙に、宿命的な味気ない字を書くことは、はじめてです。いつも、信州の紙とか、色のついたアート紙に、或いはかすれた筆文字で、或いは、もっと、面白くきれいな字――いやこれは、おこがましいかな。でも、あなたは、私の字を好んでくれました。――で、お便りしたものです。何故、この紙を選んだか、おわかりですか。実は、あなたにたよりしている気持で、私は、おそらく今度こそ本当の最後の仕事を、真剣になって綴ろうというのです。これは富士正晴氏の手に渡るでしょう。そして、彼の意志かあわれみで同人雑誌のVILLONか、VIKINGに印刷されるでしょう。その活字が、あな...
底本:「久坂葉子作品集 女」六興出版    1978(昭和53)年12月31日初版発行    1981(昭和56)年6月30日六刷発行 入力:kompass 校正:松永正敏 2005年5月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004970", "作品名": "幾度目かの最期", "作品名読み": "いくどめかのさいご", "ソート用読み": "いくとめかのさいこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-07-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001052/card4970.html", "人物ID": "00...
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 ある日――  足音をしのばせて私は玄関から自分の居間にはいり、いそいで洋服をきかえると父の寐ている部屋の襖をあけました。うすぐらいスタンドのあかりを枕許によせつけて、父はそこに喘いでおります。持病の喘息が、今日のような、じめじめした日には必ずおこるのです。秋になったというのに、今年はからりと晴れた日はまだ一日もなく、なんだか、あついような、そして肌寒い毎日でありました。 「唯今かえりました。おそくなりまして。いかがでございますか……」  父は黙って私の顔をみつめております。私は父のその目付を幾度もうけて馴れておりますものの、やはりそのたびに一応は、恐れ入る、という気持になって、丁寧に頭をさげます。そして、ぎごちなく後ずさりをして部...
底本:「久坂葉子作品集 女」六興出版    1978(昭和53)年12月31日初版発行    1981(昭和56)年6月30日6刷発行 入力:kompass 校正:松永正敏 2005年5月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004967", "作品名": "落ちてゆく世界", "作品名読み": "おちてゆくせかい", "ソート用読み": "おちてゆくせかい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-07-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001052/card4967.html", "人物ID": "0010...
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 女は五通の手紙を書き、それ〴〵白い角封筒に丁寧におさめた。内容は悉く同じものであった。封をしてから、女は裏に自分の名前を書いた。それから五つの表書をしばらく思案していたが、やがて、ペンの音をさせて性急に五種類の名前を書きはじめた。  夕闇が女の部屋にある水仙の白さを浮きたたせた。女は黒革のハンドバッグに五通の手紙をしまいこんだ。  春の朝は、かんばしいかおりと明るい色彩をたずさえて女の寝床近くへ訪れた。  午前十時に女は家を出た。女は着物をきていた。黒地に寿ちらしのお召しであり、西陣の帯を結んでいた。  川のほとりの住宅街の垣根にばらが咲いていた。人通りはなかった。女は真紅の花びらを一枚盗んで白い指先でもみくしゃにした。女の指先...
底本:「幾度目かの最期」講談社文芸文庫、講談社    2005(平成17)年12月10日第1刷発行 底本の親本:「新編 久坂葉子作品集」構想社    1980(昭和55)年4月 入力:kompass 校正:The Creative CAT 2020年11月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "059901", "作品名": "女", "作品名読み": "おんな", "ソート用読み": "おんな", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2020-12-31T00:00:00", "最終更新日": "2020-11-27T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001052/card59901.html", "人物ID": "001052", "姓": "久坂",...
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 今からざっと三年半前、一九四九年の夏前に、久坂葉子は、この世に存在しはじめた。人間の誕生は、偶然に無意識のうちに、それでいておごそかに行われるものだと思う。しかし、この名前は、自分の意識的な行為によって名附けられ、誕生を強いたのであった。この名を、原稿用紙の片隅に記した時は、私一人しか認めることの出来ない名前であったのだから、確かに、この世に存在し得たものではなかった。誰かが認めなければ、その物体の存在価値など、零であるのだ。  その時、雨が降っていたように思う。私は女学校の時の友人につれられて、島尾敏雄氏の六甲の家を訪問した。それ以前から、私は小説を書いたり詩をノートのはしくれに鉛筆書きしたりしていて、ほんの少し、文学らしいもの...
底本:「久坂葉子作品集 女」六興出版    1978(昭和53)年12月31日初版発行    1981(昭和56)年6月30日6刷発行 入力:kompass 校正:松永正敏 2005年5月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "013203", "作品名": "久坂葉子の誕生と死亡", "作品名読み": "くさかようこのたんじょうとしぼう", "ソート用読み": "くさかようこのたんしようとしほう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-07-03T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001052/card13203....
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 わたしは庭に降りて毛虫を探し、竹棒でそれをつきころしていた。それは丁度、若葉が風にゆらいでいきいきとしており、モスの着物が少しあつすぎる入梅前のこと、素足にエナメル草履の古いのをつっかけて庭掃除に余念がなかった。毛虫は、ほんの二坪位の庭より十匹余りも出て来た。石のくつぬぎに行儀よく並べた死骸を又丁寧に一匹ずつ火の中に放りこもうとして紙屑を燃やした。紙屑は、図案のかきつぶしである。めらめらと燃えるたくさんの和紙の中に、毛虫共は完全に命を終えた。その時、私は夫のことを思い出した。戦争に征って四年、とうとうそのシベリヤにたおれてかえらぬ身となってしまったのである。急性肺炎で病死したという報をきいたのは去年の秋であった。  夫は田舎の大地...
底本:「久坂葉子作品集 女」六興出版    1978(昭和53)年12月31日初版発行    1981(昭和56)年6月30日6刷発行 入力:kompass 校正:松永正敏 2005年5月27日作成 2005年10月19日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004964", "作品名": "入梅", "作品名読み": "にゅうばい", "ソート用読み": "にゆうはい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-07-03T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001052/card4964.html", "人物ID": "001052", "姓": "...
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プロローグ  私は、いろんなものを持っている。  そのいろんなものは、私を苦しめるために活躍した。私の眼は、世間や自然をみて、私をかなしませた。私の手足も徒労にすぎないことばかりを行って、私をがっかりさせた。考えるという働きも、私を恐怖の淵につれてゆき、さかんに燃えたり、或いは、静寂になったりする感情も、私をつかれさせただけである。  しかし、その中でたった一つ、私は忘却というものが、私を苦しめないでいたことに気がついた。忘却が私を生かしてくれていたのだ。そして私は、まがりくねった道を、ある時は、向う見ずにつっ走り、ある時は、うつむきながらとぼとぼあるいて来た。それなのに、突然今日、私はふりむくことをした。何故だろうか。もやもやし...
底本:「久坂葉子作品集 女」六興出版    1978(昭和53)年12月31日初版発行    1981(昭和56)年6月30日6刷発行 入力:kompass 校正:松永正敏 2005年5月27日作成 2011年10月9日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004968", "作品名": "灰色の記憶", "作品名読み": "はいいろのきおく", "ソート用読み": "はいいろのきおく", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-07-05T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001052/card4968.html", "人物ID": "001052...
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マネキン人形 谷川諏訪子 机、テーブル、椅子、など散在、中央より、上手に、ボディー、着尺、散在、奥まったところに、マネキン人形、布をまとって、ポーズしている。(註、マネキンは、メーキャップ及び、動作を非人間的に。言葉はそのまま)中央に、大きな姿見一つ。 奇怪なる音楽。 幕 奇怪なる音楽つづく。マネキン、動きはじめる。奇怪なる音楽、静止と共に、マネキンも静止。左手より、諏訪子の声。 声 まあ、ボタンがかからないのですって、それは、あなたがおふとりになったからですわ。私の裁断に限って誤りはございませんもの、失礼いたしました。でも本当なんですもの、私の腕はたしかですわ。狂っちゃいません。決して、ええ、何事にでもですわ。誤算なん...
底本:「幾度目かの最期」講談社文芸文庫、講談社    2005(平成17)年12月10日第1刷発行 底本の親本:「久坂葉子作品集 女」人文書院    1953(昭和28)年6月 ※表題は底本では、「鋏と布と型《かたち》」となっています。 入力:kompass 校正:The Creative CAT 2020年2月21日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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 南原杉子。うまれは火星日である。地球に最も近い軍神マルスの影響をうけ、最も強烈に、そのエネルギーを放射。戦闘的性質を有し、目的に対して積極的なれど、多難な運命である。その上、人生の終局に於いて、複雑な交叉点に、信号を無視して立脚し、自ら禍をまねく。      一  南原杉子は、突然小さな社会、つまり二組の夫婦の上に出現した。彼女の年齢も歴史もわからない。  大阪近郊、南田辺のとある露地の奥、石の門柱と木の扉。そして踏石が三つ。格子戸の玄関。急な段梯子。きいろくなった襖。庭に面した六畳。壁にぶらさがった洋服類。隅の方にミカン箱。中に食器と台所用具。窓ガラスにぺったりと四角い麻のハンカチーフ。  南原杉子は、二枚のトーストを食べ...
底本:「久坂葉子作品集 女」六興出版    1978(昭和53)年12月31日初版発行    1981(昭和56)年6月30日6刷発行 入力:kompass 校正:松永正敏 2005年5月27日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "004969", "作品名": "華々しき瞬間", "作品名読み": "はなばなしきしゅんかん", "ソート用読み": "はなはなしきしゆんかん", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-07-06T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001052/card4969.html", "人物ID": ...
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 うすねずみいろの毛地のワンピースを着て、私は花束を持っている。今さっき、知合の家へあそびに行き、その庭に一ぱいあふれるように咲いていたスイートピーをすきなだけきらせてもらい、その帰りである。花はむっとした少し鼻につきすぎる位の香りで、それはこいむらさきやうすいピンクや白や各々の色より発散したものが、また一つになって新しく別なものをこしらえ私に投げかけるようだ。この香りに、何か、不思議な作用があるのだろうか。  大きな木立のある邸の横手の細いみちを、時々明るくなったり暗くなったりする青葉から洩れてくる五月の太陽。このひかりに何か魔術がかかっているのだろうか。  私はこれからまっすぐ家へかえるべきであるのに、邸裏をぬけて駅へ出ると、...
底本:「幾度目かの最期」講談社文芸文庫、講談社    2005(平成17)年12月10日第1刷発行 底本の親本:「新編 久坂葉子作品集」構想社    1980(昭和55)年4月 初出:「VIKING 11号」    1949(昭和24)年10月 入力:kompass 校正:The Creative CAT 2021年2月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "059903", "作品名": "四年のあいだのこと", "作品名読み": "よねんのあいだのこと", "ソート用読み": "よねんのあいたのこと", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「VIKING\u300011号」1949(昭和24)年10月", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2021-03-27T00:00:00", "最終更新日": "2021-02-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards...
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 詩のやうなものをただ書きさへすれば、それでもう詩人だといふやうなことは絶対に云へない。志を持つ人、といふと少し固く道徳的な感じがするが、少くともその感じに非常に近い、或る充実して爽やかな気持を得るために歩く人、又は歩き得た人、これこそ間違のない真の詩人だといふ気がする。  詩といふのは、この綺麗な道中の無言の姿であるか、或ひは真の一声であるべきで、それは寸分の隙間もないその物のやうな本当さでなければならない。恐らく純粋といふものはかうした道のその都度その都度の極つた気息といつたもので、只これしか無いといつた感じのものではないかと思ふ。然しこの極つた気息、つまり本当といふことは容易なことではない。心の一番底まで届き、そして出るといふ...
底本:「定本 草野天平全詩集」彌生書房    1969(昭和44)年4月25日初版発行    1974(昭和49)年9月20日二版発行 初出:「新潮」新潮社    1952(昭和27)年8月号 入力:大久保ゆう 校正:Juki 2010年9月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "051493", "作品名": "詩人といふ者", "作品名読み": "しじんというもの", "ソート用読み": "ししんというもの", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「新潮」1952(昭和27)年8月号", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-10-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001516/card51493.ht...
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自序 自分は自分の道を一歩一歩行つたつもりでありました しかし或る時は立ち止り或る時は振り返つて逆に二三歩あるいて仕舞つたことがあります 二つのうち一つを断ち切つて喋らずに進むことの出来なかつた者であります しかしこれで精一杯でもありました 赦してもらひたく思ひますが、誰に向つて言ふのか 結局自分自身そして為すことに言ふより仕方ありません 岡の上で 悪魔悪魔とののしる声が表にする レオナルド ダ ヴインチは薄暗い奥の仕事場で ぢつとこの声をきいてゐた そしてさつきノートに書きつけたばかりの文字を ただぼんやり見下してゐた 根本動力よ 恐るべき汝の公平さよ―― 待つて下さい そこで読むのを待つて下さい 日は沈み 岡の上...
底本:「定本 草野天平全詩集」彌生書房    1969(昭和44)年4月25日初版発行    1974(昭和49)年9月20日二版発行 底本の親本:「ひとつの道」十字屋書店    1947(昭和22)年10月 入力:大久保ゆう 校正:Juki 2010年9月13日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "051451", "作品名": "ひとつの道", "作品名読み": "ひとつのみち", "ソート用読み": "ひとつのみち", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC 911", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2010-10-27T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-21T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/001516/card51451.html", "人物ID": "001516", ...
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 薄紫の可憐な松虫草は、大空の星が落した花のような塵にもまみれず、爽やかな夏の朝を、高原のそこここに咲いていた。美しい糸を包んだ薄は日に〳〵伸びてゆき、山上の荘は秋もまだ訪ずれぬのに、昼さえ澄んだ虫の声をきくのであった。  海抜三千尺という山の上から望む茅渟の海は、遠く視野のはて、紀淡海峡を去来する汽船の煙が長く尾を引いて、行方も知れず空に消えてゆく。――山の上といっても、道がよく開けて散歩に楽なのと、日中でも七十三度ぐらいであるところからともすれば日傘も忘れて外に出る。けれど太陽はさすがに容赦なく射つづけるのに、それにも恐れずみんなは傘を忘れて散歩に出るほど涼しい六甲山上の夏――私は夏を迎えるたびに山上の夏をおもう。  ゴルフリン...
底本:「ふるさと文学館 第三四巻 【兵庫】」ぎょうせい    1994(平成6)年4月15日初版発行 底本の親本:「九条武子歌集と無憂華」野ばら社    1977(昭和52)年 初出:「無憂華」実業之日本社    1927(昭和2)年 入力:かな とよみ 校正:noriko saito 2022年9月26日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "061120", "作品名": "六甲山上の夏", "作品名読み": "ろっこうさんじょうのなつ", "ソート用読み": "ろつこうさんしようのなつ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「無憂華」実業之日本社、1927(昭和2)年", "分類番号": "", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2022-10-20T00:00:00", "最終更新日": "2022-09-26T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000254/card611...
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(一)厳寒殺人事件 「もしもし、そうです。田名網です……まだ警視庁にごやっかいになっています。……おお、久保田検事さんですか? へえ、こっちに……ええ、ええ、そうです。爺になりましてね。娘が嫁いでいるものですから……久保田さんは、ご元気で……ええ、何、休暇を頂きましてね、孫を見にきたってわけなんですよ。ほう殺人事件が?……この私まで引っぱり出さなくたって……まあまあ……とんでもない。では、顔だけ出さして頂きましょうか? いやはや」  そう言って田名網警部は電話室を出た。 「何ですの? お爺さん?」 「おいおい、お前まで、急にお爺さんかい。よせよ、なんぼ孫が出来たって、急にお爺さんもないだろう?」 「だって、お父さん、今、お電話で、...
底本:「探偵小説アンソロジー 甦る名探偵」光文社文庫、光文社    2014(平成26)年10月20日初版1刷発行 底本の親本:「探偵新聞」    1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号 初出:「探偵新聞」    1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号 ※「丑満《うしみつ》頃」と「丑満つ頃」の混在は、底本通りです。 入力:sogo 校正:雪森 2017年1月1日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボ...
{"作品ID": "057499", "作品名": "雪", "作品名読み": "ゆき", "ソート用読み": "ゆき", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号", "分類番号": "NDC 913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2017-01-01T00:00:00", "最終更新日": "2017-01-01T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/00186...
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 表の人物 Aemilius Florus 主人 Mummus 老いたる奴隷 Lukas 無言の童 Gorgo 田舎娘 Calpurnia 主人の友の妻 老いたる乳母 差配人 医師 獄吏 跣足の老人 従者等  裏の人物 Malchus 賊 Titus 商人 赤毛の女 兵卒等      一  エミリウス・フロルスは同じ赤光のする向側の石垣まで行くと、きつと踵を旋らして、蒼くなつてゐる顔を劇しくこちらへ振り向ける。そしていつもの軽らかな足取と違つた地響のする歩き振をして返つて来る。年の寄つた奴隷と物を言はぬ童とが土の上にすわつてゐて主人の足音のする度に身を竦める。そして主人の劇しく身を翻して引き返す時、その着てゐる青い着物の裾で...
底本:「鴎外選集 第十五巻」岩波書店    1980(昭和55)年1月22日第1刷発行 初出:「三田文学 四ノ七」    1913(大正2)年7月1日 入力:tatsuki 校正:山根生也 2001年11月13日公開 2005年12月16日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "002074", "作品名": "フロルスと賊と", "作品名読み": "フロルスとぞくと", "ソート用読み": "ふろるすとそくと", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "Florus und der Rauber(独訳)", "初出": "「三田文学」四ノ七、1913(大正2)年7月1日", "分類番号": "NDC 983", "文字遣い種別": "新字旧仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-11-13T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora...
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     一  これも大国主命が、八千矛をつえについて、国々をめぐって歩いておいでになる時のことでした。ある時摂津国の難波の津までおいでになりますと、見慣れない神さまが、海を渡って向こうからやって来ました。命が、 「あなたはだれです。」  とお聞きになりますと、その神さまは、 「わたしは新羅の国からはるばる渡って来た天日矛命というものです。どうぞこの国の中で、わたしの住む土地を貸して頂きたい。」  と頼みました。命はしばらく考えておいでになりましたが、 「この国はわたしの治めている土地で、あなたに貸して上げる場所といって、ほかにありません。では海の中を貸しましょう。」  とおっしゃいました。  こういわれて、天日矛命は、困って帰っ...
底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社    1983(昭和58)年4月10日第1刷発行 入力:鈴木厚司 校正:佳代子 2004年12月14日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "033207", "作品名": "赤い玉", "作品名読み": "あかいたま", "ソート用読み": "あかいたま", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2005-01-12T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card33207.html", "人物ID": "000329", "姓"...
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     一  むかし、京都から諸国修行に出た坊さんが、白河の関を越えて奥州に入りました。磐城国の福島に近い安達が原という原にかかりますと、短い秋の日がとっぷり暮れました。  坊さんは一日寂しい道を歩きつづけに歩いて、おなかはすくし、のどは渇くし、何よりも足がくたびれきって、この先歩きたくも歩かれなくなりました。どこぞに百姓家でも見つけ次第、頼んで一晩泊めてもらおうと思いましたが、折あしく原の中にかかって、見渡す限りぼうぼうと草ばかり生い茂った秋の野末のけしきで、それらしい煙の上がる家も見えません。もうどうしようか、いっそ野宿ときめようか、それにしてもこうおなかがすいてはやりきれない、せめて水でも飲ましてくれる家はないかしらと、心...
底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社    1983(昭和58)年4月10日第1刷発行 入力:鈴木厚司 校正:大久保ゆう 2003年9月29日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "033208", "作品名": "安達が原", "作品名読み": "あだちがはら", "ソート用読み": "あたちかはら", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-10-29T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card33208.html", "人物ID": "000329", ...
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     一  むかし、摂津国の難波という所に、夫婦の者が住んでおりました。子供が一人も無いものですから、住吉の明神さまに、おまいりをしては、 「どうぞ子供を一人おさずけ下さいまし。それは指ほどの小さな子でもよろしゅうございますから。」  と一生懸命にお願い申しました。  すると間もなく、お上さんは身持ちになりました。 「わたしどものお願いがかなったのだ。」  と夫婦はよろこんで、子供の生まれる日を、今日か明日かと待ちかまえていました。  やがてお上さんは小さな男の赤ちゃんを生みました。ところがそれがまた小さいといって、ほんとうに指ほどの大きさしかありませんでした。 「指ほどの大きさの子供でも、と申し上げたら、ほんとうに指だけの子...
底本:「日本の古典童話」講談社学術文庫、講談社    1983(昭和58)年6月10日第1刷発行 入力:鈴木厚司 校正:林 幸雄 2006年7月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043457", "作品名": "一寸法師", "作品名読み": "いっすんぼうし", "ソート用読み": "いつすんほうし", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-09-24T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card43457.html", "人物ID": "000329"...
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     一  むかし、大和国に貧乏な若者がありました。一人ぼっちで、ふた親も妻も子供もない上に、使ってくれる主人もまだありませんでした。若者はだんだん心細くなったものですから、これは観音さまにお願いをする外はないと思って、長谷寺という大きなお寺のお堂におこもりをしました。 「こうしておりましては、このままあなたのお前でかつえ死にに死んでしまうかも知れません。あなたのお力でどうにかなるものでしたら、どうぞ夢ででもお教え下さいまし。その夢を見ないうちは、死ぬまでここにこうしておこもりをしておりますから。」  こういって、その男は観音さまの前につっ伏しました。それなり幾日たっても動こうとはしませんでした。  するとお寺の坊さんがそれを...
底本:「日本の古典童話」講談社学術文庫、講談社    1983(昭和58)年6月10日第1刷発行 入力:鈴木厚司 校正:林 幸雄 2006年7月28日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043458", "作品名": "一本のわら", "作品名読み": "いっぽんのわら", "ソート用読み": "いつほんのわら", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-09-24T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card43458.html", "人物ID": "000329...
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     一  むかし源氏と平家が戦争をして、お互いに勝ったり負けたりしていた時のことでした。源氏の大将義朝には、悪源太義平や頼朝のほかに今若、乙若、牛若、という三人の子供がありました。ちょうどいちばん小さい牛若が生まれたばかりのとき、源氏の旗色が悪くなりました。義朝は負けて、方々逃げかくれているうちに、家来の長田忠致というものに殺されました。  平家の大将清盛は、源氏にかたきを取られることをこわがって、義朝の子供を見つけしだい殺そうとかかりました。  義朝の奥方の常盤御前は、三人の子供を連れて、大和の国の片田舎にかくれていました。  清盛はいくら常磐を探しても見つからないものですから困って、常磐のおかあさんの関屋というおばあさん...
底本:「日本の英雄伝説」講談社学術文庫、講談社    1983(昭和58)年6月10日第1刷発行 ※「僧正ガ谷」の「ガ」は底本では小書きになっています。 入力:鈴木厚司 校正:今井忠夫 2004年1月6日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "018384", "作品名": "牛若と弁慶", "作品名読み": "うしわかとべんけい", "ソート用読み": "うしわかとへんけい", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2004-02-09T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card18384.html", "人物ID": "00...
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     一  むかし、むかし、丹後の国水の江の浦に、浦島太郎というりょうしがありました。  浦島太郎は、毎日つりざおをかついでは海へ出かけて、たいや、かつおなどのおさかなをつって、おとうさんおかあさんをやしなっていました。  ある日、浦島はいつものとおり海へ出て、一日おさかなをつって、帰ってきました。途中、子どもが五、六人往来にあつまって、がやがやいっていました。何かとおもって浦島がのぞいてみると、小さいかめの子を一ぴきつかまえて、棒でつついたり、石でたたいたり、さんざんにいじめているのです。浦島は見かねて、 「まあ、そんなかわいそうなことをするものではない。いい子だから」 と、とめましたが、子どもたちはきき入れようともしないで...
底本:「むかし むかし あるところに」童話屋    1996(平成8)年6月24日初版発行    1996(平成8)年7月10日第2刷発行 底本の親本:「日本童話宝玉集(上中下版)」童話春秋社    1948(昭和23)~1949(昭和24)年発行 入力:鈴木厚司 校正:林 幸雄 2001年12月19日公開 2008年10月10日修正 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "003390", "作品名": "浦島太郎", "作品名読み": "うらしまたろう", "ソート用読み": "うらしまたろう", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2001-12-19T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-17T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card3390.html", "人物ID": "000329",...
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     一  むかし、むかし、おじいさんとおばあさんがありました。ある日おじいさんは山へしば刈りに行きました。おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが川でぼちゃぼちゃ洗濯をしていますと、向こうから大きな瓜が一つ、ぽっかり、ぽっかり、流れて来ました。おばあさんはそれを見て、 「おやおや、まあ。めずらしい大きな瓜だこと、さぞおいしいでしょう。うちへ持って帰って、おじいさんと二人で食べましょう。」  といいいい、つえの先で瓜をかき寄せて、拾い上げて、うちへ持って帰りました。  夕方になると、おじいさんはいつものとおり、しばをしょって山から帰って来ました。おばあさんはにこにこしながら出迎えて、 「おやおや、おじいさん、お帰りかえ。...
底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社    1983(昭和58)年4月10日第1刷発行 入力:鈴木厚司 校正:土屋隆 2006年9月21日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "043459", "作品名": "瓜子姫子", "作品名読み": "うりこひめこ", "ソート用読み": "うりこひめこ", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2006-11-14T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card43459.html", "人物ID": "000329", ...
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     一  むかし源頼光という大将がありました。その家来に渡辺綱、卜部季武、碓井貞光、坂田公時という四人の強い武士がいました。これが名高い、「頼光の四天王」でございます。  そのころ丹波の大江山に、酒呑童子と呼ばれた恐ろしい鬼が住んでいて、毎日のように都の町へ出て来ては、方々の家の子供をさらって行きました。そしてさんざん自分のそばにおいて使って、用がなくなると食べてしまいました。  するとある時、池田中納言という人の一人きりのお姫さまが急に見えなくなりました。中納言も奥方もびっくりして、死ぬほど悲しがって、上手な占い者にたのんでみてもらいますと、やはり大江山の鬼に取られたということがわかりました。  中納言はさっそく天子さまの...
底本:「日本の英雄伝説」講談社学術文庫、講談社    1983(昭和58)年6月10日第1刷発行 ※「千丈《せんじょう》ガ岳《たけ》」の「ガ」は底本では小書き。 入力:鈴木厚司 校正:大久保ゆう 2003年9月29日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
{"作品ID": "018339", "作品名": "大江山", "作品名読み": "おおえやま", "ソート用読み": "おおえやま", "副題": "", "副題読み": "", "原題": "", "初出": "", "分類番号": "NDC K913", "文字遣い種別": "新字新仮名", "作品著作権フラグ": "なし", "公開日": "2003-10-29T00:00:00", "最終更新日": "2014-09-18T00:00:00", "図書カードURL": "https://www.aozora.gr.jp/cards/000329/card18339.html", "人物ID": "000329", "姓"...
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